凝固カスケードと抗凝固薬の標的
血液凝固は外因系・内因系→共通系の順に進みます。抗凝固薬の標的は:
- ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の産生阻害 → ワルファリン
- 第Ⅹa因子の直接阻害 → リバーロキサバン・アピキサバン・エドキサバン
- トロンビン(Ⅱa因子)の直接阻害 → ダビガトラン・アルガトロバン
- アンチトロンビン(AT)増強 → ヘパリン・低分子ヘパリン
各薬物の詳細
ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)
ビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害 → ビタミンKの再利用↓
→ ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の活性化に必要なγカルボキシル化が阻害
→ 凝固因子の産生が阻害される(効果発現まで数日かかる)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与経路 | 経口 |
| モニタリング | PT-INR(目標:1.6〜2.6) |
| 主な拮抗薬 | ビタミンK・新鮮凍結血漿(FFP) |
| 相互作用 | 非常に多い(CYP2C9で代謝) |
| 禁忌 | 妊婦(催奇形性)・出血リスク高 |
食事の注意:納豆・クロレラ・青汁などビタミンKを多く含む食品で効果減弱
DOAC(直接経口抗凝固薬)
ワルファリンの欠点(頻回なモニタリング・食事制限・相互作用)を改善した新しい抗凝固薬。
直接Xa因子阻害薬
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| リバーロキサバン | 1日1〜2回。腎排泄50%。食後投与で吸収↑ |
| アピキサバン | 1日2回。腎排泄25%(腎機能低下でも使いやすい) |
| エドキサバン | 1日1回。P-糖タンパク基質 |
直接トロンビン阻害薬
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ダビガトランエテキシラート | プロドラッグ→肝で活性体に変換。腎排泄80%。拮抗薬:イダルシズマブ |
| アルガトロバン | 注射薬。HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)に使用 |
ヘパリン系
アンチトロンビン(AT)と結合 → AT-ヘパリン複合体がトロンビン・Xa因子を阻害
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| 未分画ヘパリン | 注射薬。APTTでモニタリング。拮抗薬:プロタミン |
| 低分子ヘパリン(エノキサパリン) | 主にXa因子を阻害。皮下注。モニタリング不要 |
| フォンダパリヌクス | 合成Xa因子阻害薬。ATを介してXa因子を選択的に阻害 |
トロンボモデュリン アルファ
トロンビンに結合 → トロンビン-TM複合体がプロテインCを活性化 → 活性化プロテインCが第Va因子・第VIIIa因子を不活性化 → 凝固抑制
播種性血管内凝固(DIC)の治療薬
抗凝固薬の比較まとめ
| 薬物 | 標的 | 経路 | 拮抗薬 |
|---|---|---|---|
| ワルファリン | VKOR(間接的) | 経口 | ビタミンK・FFP |
| リバーロキサバン | Xa因子(直接) | 経口 | アンデキサネット アルファ |
| アピキサバン | Xa因子(直接) | 経口 | アンデキサネット アルファ |
| ダビガトラン | トロンビン(直接) | 経口 | イダルシズマブ |
| ヘパリン | AT増強→トロンビン+Xa | 注射 | プロタミン |
| アルガトロバン | トロンビン(直接) | 注射 | なし |
第111回 国試過去問チェック
問163(第111回 一般問題)
抗凝固薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ワルファリンは、ビタミンKエポキシド還元酵素を阻害することで、ビタミンK依存性凝固因子の生成を阻害する。
- ヘパリンは、プラスミノーゲンからプラスミンへの変換を促進することにより、線溶系を活性化する。
- ナファモスタットは、アンチトロンビンと結合し、トロンビン活性を選択的に阻害する。
- ダビガトランエテキシラートは、体内で活性代謝物となり、第Xa因子の活性を選択的に阻害する。
- トロンボモデュリン アルファは、トロンビンに結合し、プロテインCを活性化することで、第Va因子及び第VIIIa因子を不活性化する。
正答:1・5
解説:
- 1:○ ワルファリン=VKORを阻害→ビタミンK依存性凝固因子の産生阻害
- 2:× ヘパリンはAT増強→凝固因子阻害(線溶系活性化ではない)
- 3:× ナファモスタットはトロンビン・プラスミン・カリクレインを直接阻害(ATを介さない)
- 4:× ダビガトランは活性化後に**トロンビン(Xa因子ではない)**を阻害
- 5:○ トロンボモデュリン=トロンビン結合→プロテインC活性化→Va/VIIIa不活性化
