🧠 統合失調症とドパミン仮説
統合失調症は脳内ドパミン神経系の過活動が中心病態(ドパミン仮説)。
| 脳部位 | ドパミン経路 | 異常の方向 | 関連症状 |
|---|---|---|---|
| 中脳辺縁系 | 辺縁系路 | 過活動↑ | 陽性症状(幻覚・妄想) |
| 中脳皮質系 | 皮質路 | 低活動↓ | 陰性症状(意欲低下・感情鈍麻) |
【ドパミン仮説と抗精神病薬の作用】
中脳辺縁系:ドパミン過活動
↓ 抗精神病薬によるD₂受容体遮断
陽性症状(幻覚・妄想)の改善 ← 治療効果
中脳皮質系:ドパミン低活動
↓ 第一世代薬はここも遮断してしまう
陰性症状(意欲低下・感情鈍麻)が悪化 ← 問題点
黒質線条体系:D₂遮断
↓
錐体外路症状(EPS) ← 副作用
下垂体漏斗系:D₂遮断
↓
高プロラクチン血症 ← 副作用
抗精神病薬の基本戦略:D₂受容体を遮断して中脳辺縁系の過活動を抑える
第一世代抗精神病薬(定型・従来型)
D₂受容体を強力に遮断。脳全体で遮断するため副作用が多い。
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| クロルプロマジン | 最初の抗精神病薬。鎮静強い(H1・α₁遮断)。フェノチアジン系 |
| ハロペリドール | 高力価。EPS(錐体外路症状)が出やすい。ブチロフェノン系 |
| スルピリド | 低用量で抗うつ・高用量で抗精神病 |
第一世代は黒質線条体系・下垂体漏斗系のD₂も強く遮断→EPSと高プロラクチン血症が出やすい
第二世代抗精神病薬(非定型)
D₂受容体遮断+5-HT₂A受容体遮断(SDA)が基本。5-HT₂A遮断→中脳皮質系のドパミン遊離↑→陰性症状改善・EPS軽減。
| 薬剤 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|
| リスペリドン | SDA | D₂+5-HT₂A遮断。最も使われる非定型薬。高プロラクチン血症あり |
| オランザピン | MARTA | 多受容体遮断。体重増加。糖尿病患者には禁忌 |
| クエチアピン | MARTA | 鎮静強い。糖尿病患者には禁忌 |
| アリピプラゾール | DSS | D₂部分作動薬(ドパミン安定薬)。高プロラクチン血症が出にくい |
| ペロスピロン | SDA | D₂遮断+5-HT₁A部分作動+5-HT₂A遮断。EPSが比較的少ない |
| クロザピン | 多受容体 | 治療抵抗性に有効。無顆粒球症(定期的血液検査必須) |
SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬):5-HT₂A遮断により中脳皮質系のドパミン遊離が促進→陰性症状改善+EPS軽減
高プロラクチン血症のしくみ
【通常】
下垂体前葉
↑ ドパミンがD₂受容体を刺激
→ プロラクチン分泌を抑制(tonic inhibition)
【D₂遮断薬投与後】
抗精神病薬がD₂受容体を遮断
↓
ドパミンによるプロラクチン抑制が外れる
↓
プロラクチン分泌↑(高プロラクチン血症)
↓
女性:乳汁分泌・月経異常・無月経
男性:女性化乳房・性機能障害
アリピプラゾール(D₂部分作動薬)はドパミン様の弱い刺激を残すため高プロラクチン血症が出にくい
🔩 錐体外路症状(EPS)の種類
D₂受容体遮断→黒質線条体路のドパミン↓→ACh相対的優位→EPS
黒質線条体系でのD₂遮断
↓
線条体のドパミン↓ / アセチルコリン相対的優位
↓
錐体外路症状(EPS)
急性ジストニア(数日以内):筋肉の不随意収縮(首・眼)
アカシジア(数週):じっとしていられない不安感・焦燥感
パーキンソン症状(数週):振戦・筋強剛・寡動
遅発性ジスキネジア(長期投与後):口・舌・四肢の不随意運動(不可逆的になりやすい)
【治療】抗コリン薬(ビペリデン等)→ ACh活動を抑えてバランス回復
| 症状 | 特徴 | 出現時期 |
|---|---|---|
| 急性ジストニア | 筋肉の不随意収縮(首・眼) | 投与後数日以内 |
| アカシジア | じっとしていられない不安感 | 投与後数週 |
| パーキンソン症状 | 振戦・筋強剛・寡動 | 投与後数週 |
| 遅発性ジスキネジア | 口・舌・四肢の不随意運動 | 長期投与後(不可逆的になりやすい) |
第一世代 > 第二世代 でEPS頻度が高い(D₂遮断が強いほどEPSが出やすい)
🚨 悪性症候群
最も重篤な副作用。発熱(40℃超)・筋強剛・意識障害・自律神経症状(発汗・頻脈) の4徴。
抗精神病薬の急激な遮断または用量変更
↓
D₂受容体の急激な遮断
↓
体温調節中枢(視床下部)の異常 → 高体温(40℃超)
筋肉代謝異常 → 筋強剛・横紋筋融解 → CPK↑
自律神経不安定 → 発汗・頻脈・血圧変動
意識障害(せん妄〜昏睡)
【処置】
① 抗精神病薬の即時中止
② 体冷却・輸液
③ ダントロレン(筋弛緩→筋強剛・高体温改善)
④ ブロモクリプチン(ドパミン作動薬→D₂受容体機能回復)
悪性症候群の4徴:高体温・筋強剛・意識障害・自律神経症状(発汗・頻脈)。CPK著明上昇が特徴的所見。
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | D₂受容体遮断→中脳辺縁系の過活動↓→陽性症状(幻覚・妄想)改善 |
| 2 | 黒質線条体系のD₂遮断→EPS(錐体外路症状)、下垂体漏斗系のD₂遮断→高プロラクチン血症 |
| 3 | SDA(リスペリドン等):D₂+5-HT₂A遮断→EPS軽減・陰性症状改善 |
| 4 | アリピプラゾール:D₂部分作動薬→高プロラクチン血症が出にくい |
| 5 | オランザピン・クエチアピン:糖尿病患者禁忌(血糖値上昇リスク) |
| 6 | クロザピン:治療抵抗性統合失調症に有効。副作用:無顆粒球症→定期血液検査必須 |
| 7 | EPS治療:抗コリン薬(ビペリデン)を追加 |
| 8 | 遅発性ジスキネジア:長期投与後に出現・不可逆的になりやすい。第一世代で多い |
| 9 | 悪性症候群の4徴:高体温・筋強剛・意識障害・自律神経症状。処置:ダントロレン+ブロモクリプチン |
| 10 | クロルプロマジン:H1遮断(鎮静)+α₁遮断(起立性低血圧)も示す |
📝 国試過去問チェック
第108回 問153(一般)
統合失調症治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. ハロペリドールは、中脳辺縁系におけるドパミンD2受容体を遮断することで、統合失調症の陽性症状を改善する
2. アリピプラゾールは、黒質線条体ドパミン神経系を抑制することで、統合失調症の陰性症状を改善する
3. オランザピンは、セロトニン5-HT2A受容体を刺激することで、体重増加を起こす
4. ペロスピロンは、セロトニン5-HT1A受容体を遮断することで、抗不安作用を示す
5. クロルプロマジンは、ヒスタミンH1受容体およびアドレナリンα1受容体を遮断することで、鎮静作用を示す
解答と解説を見る
正解:1・5
1○ ハロペリドール(定型)は中脳辺縁系のD₂遮断→陽性症状改善。
5○ クロルプロマジンはH1遮断(眠気)+α₁遮断(起立性低血圧)→鎮静作用。
2✗ アリピプラゾールはD₂部分作動薬(遮断ではない)。黒質線条体を抑制するわけでもない。
3✗ オランザピンは5-HT₂A受容体を遮断する(刺激ではない)。
4✗ ペロスピロンは5-HT₁A受容体を部分作動(遮断ではない)。
第109回 問28(必須)
リスペリドンが高プロラクチン血症を引き起こす機序として、正しいのはどれか。
1. 下垂体でのドパミンD₂受容体遮断
2. 視床下部でのGnRH遊離抑制
3. 下垂体でのエストロゲン受容体刺激
4. 上下垂体でのセロトニン受容体遮断
5. 視床下部でのドパミン合成阻害
解答と解説を見る
正解:1
下垂体前葉ではドパミンがD₂受容体を介してプロラクチン分泌を抑制している。リスペリドンがD₂受容体を遮断するとこの抑制が外れ→プロラクチン↑→乳汁分泌・月経異常(女性)、女性化乳房(男性)が生じる。
