抗ウイルス薬の基本
ウイルスは宿主細胞の中で増殖するため、ウイルスだけを選択的に攻撃するのが難しいのが特徴です。抗ウイルス薬は「ウイルス固有の酵素や構造」を標的にします。
ヘルペスウイルス治療薬
アシクロビルの選択毒性のしくみ
アシクロビルはプロドラッグであり、活性化まで2段階あります:
- 感染細胞内でヘルペスウイルスのチミジンキナーゼによりリン酸化(1回目)
- 宿主細胞のキナーゼによりさらにリン酸化(2回目・3回目)→アシクロビル三リン酸(活性体)
- ウイルスDNAポリメラーゼを阻害 → ウイルス増殖抑制
ポイント:非感染細胞にはヘルペスウイルスのチミジンキナーゼがないため活性化されない→選択毒性の理由!
| 薬物 | 特徴 | 適応 |
|---|---|---|
| アシクロビル | HSV・VZVに有効。経口・外用・点滴 | 単純ヘルペス・帯状疱疹 |
| バラシクロビル | アシクロビルのプロドラッグ(バイオアベイラビリティ↑) | 単純ヘルペス・帯状疱疹 |
| ガンシクロビル | CMV(サイトメガロウイルス)に有効 | CMV網膜炎(HIV合併など) |
| ホスカルネット | ウイルスDNAポリメラーゼを直接阻害(チミジンキナーゼ不要) | アシクロビル耐性HSV・CMV |
インフルエンザ治療薬
| 薬物 | 作用機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| オセルタミビル(タミフル) | ノイラミニダーゼ阻害 | 経口薬。発症48時間以内に投与 |
| ザナミビル(リレンザ) | ノイラミニダーゼ阻害 | 吸入薬 |
| ラニナミビル(イナビル) | ノイラミニダーゼ阻害 | 1回吸入で終了 |
| バロキサビル(ゾフルーザ) | キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害 | 1回経口投与。新機序 |
| アマンタジン | M₂タンパク阻害(脱殻阻害) | A型のみ。耐性多い |
ノイラミニダーゼ:ウイルスが感染細胞から出芽するために必要な酵素。阻害するとウイルスが細胞に留まり拡散できなくなる。
HIV治療薬(抗レトロウイルス薬)
HIV治療は**3剤以上を組み合わせる多剤併用療法(ART)**が基本です。
核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ジドブジン(AZT) | 最初のHIV治療薬。骨髄抑制に注意 |
| テノホビル | B型肝炎にも有効 |
非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| エファビレンツ | 精神神経症状(夢・幻覚)の副作用 |
インテグラーゼ阻害薬
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ラルテグラビル | HIVのDNAが宿主ゲノムに組み込まれるのを阻害 |
| ドルテグラビル | 耐性出現が少ない |
プロテアーゼ阻害薬(PI)
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ダルナビル | 最も使われるPI。リトナビルと併用(CYP阻害で血中濃度↑) |
C型肝炎治療薬
| 薬物 | 作用機序 |
|---|---|
| ソホスブビル | NS5B RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害(プロドラッグ) |
| レジパスビル | NS5A阻害(ウイルス複製・アセンブリ抑制) |
| グレカプレビル | NS3/4Aプロテアーゼ阻害 |
第111回 国試過去問チェック
問39(第111回 必須問題)
感染細胞内でリン酸化されて活性体となりウイルスDNAポリメラーゼを阻害して、ウイルスの増殖を抑制するのはどれか。1つ選べ。
- アシクロビル
- ラルテグラビル
- レジパスビル
- アマンタジン
- ソホスブビル
正答:1
解説:
- アシクロビル:感染細胞内でウイルスのチミジンキナーゼによりリン酸化→活性体がウイルスDNAポリメラーゼを阻害(正解)
- ラルテグラビル → HIVのインテグラーゼ阻害(リン酸化は関係ない)
- レジパスビル → HCV NS5A阻害
- アマンタジン → インフルエンザAのM₂タンパク阻害(脱殻阻害)
- ソホスブビル → HCV NS5B RNAポリメラーゼ阻害(プロドラッグだが対象がDNAポリメラーゼではない)
試験のコツ:「感染細胞内でリン酸化→ウイルスDNAポリメラーゼ阻害」という一文がアシクロビルの教科書的な説明です。この記述が出たら迷わずアシクロビルを選びましょう!
