💓 心房細動の病態
正常洞調律 vs 心房細動
正常洞調律:洞結節 → 心房整収縮 → 房室結節 → 心室収縮
↑きちんと順序良く伝わる
心房細動:心房内に無秩序な電気活動(350〜600回/分)
→ 房室結節がランダムに通過を許可
→ 心室収縮が不規則・速くなる(頻脈性不整脈)
心房細動の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 心電図所見 | P波消失+不規則なRR間隔 |
| 主な症状 | 動悸・息切れ・倦怠感 |
| 最大リスク | 心房内血液うっ滞 → 血栓形成 → 脳塞栓症 |
| 1回拍出量 | 低下(心房の規則的収縮がなくなり心室への充満が不十分) |
✅ 「心房細動の心電図 → P波消失 + 不規則なRR間隔」
💊 心房細動の治療戦略
① レートコントロール(心拍数調節)
房室結節への伝導を抑え、心拍数を60〜100回/分に保つ
| 薬剤 | 分類 | 作用 |
|---|---|---|
| ビソプロロール・メトプロロール | βブロッカー | 房室伝導抑制 → 心拍数↓ |
| ジルチアゼム・ベラパミル | Ca²⁺拮抗薬(非DHP系) | 房室伝導抑制 → 心拍数↓ |
| ジゴキシン | 強心配糖体 | 迷走神経緊張↑ → 房室伝導抑制 |
⚠️ WPW症候群合併AFにジゴキシン・ベラパミルは禁忌 正規伝導路(房室結節)を抑制 → 副伝導路(ケント束)経由で心室に速く伝わり → 心室細動リスク
② リズムコントロール(洞調律維持)
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 薬物除細動 | フレカイニド・プロパフェノン・アミオダロン |
| 電気的除細動(DC) | 直流通電による除細動 |
| カテーテルアブレーション | 肺静脈起源の異常興奮を焼灼 → 再発予防 |
⚠️ リドカインは心室性不整脈(VT/VF)に使用。心房細動への効果は乏しい
③ 脳塞栓症の予防(抗凝固療法)
CHA₂DS₂-VAScスコアで抗凝固療法の適応を評価
| 薬剤 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|
| DOAC(ダビガトラン・リバーロキサバン・アピキサバン) | 直接経口抗凝固薬 | 主流(定期的血液検査不要) |
| ワルファリン | ビタミンK拮抗薬 | PT-INRモニタリング必要 |
⚠️ アスピリン(抗血小板薬)は心房細動の脳塞栓予防には不十分 → 抗凝固療法(DOAC/ワルファリン)が第一選択
⚡ WPW症候群と房室ブロック
WPW症候群合併AFでの禁忌薬
副伝導路(ケント束)がある特殊な不整脈
| 薬剤 | WPW+AF での扱い | 理由 |
|---|---|---|
| ジゴキシン | 禁忌 | 副伝導路経由で心室細動誘発 |
| ベラパミル | 禁忌 | 副伝導路経由で心室細動誘発 |
| プロカインアミド | 使用可 | 副伝導路の伝導を遅らせる |
房室ブロックの分類と治療
| 度 | 特徴 | 治療 |
|---|---|---|
| 第1度 | PR延長(>0.2秒)、全て伝導 | 経過観察 |
| 第2度Ⅰ型 | PR漸延→QRS脱落(Wenckebach) | 症状に応じて |
| 第2度Ⅱ型 | PR一定→突然QRS脱落 | ペースメーカー考慮 |
| 第3度(完全) | P波とQRS波が全く無関係 | ペースメーカー・緊急時アトロピン・イソプレナリン |
✅ 「完全房室ブロック → P波とQRS波が無関係、PP間隔・RR間隔がそれぞれ一定」 緊急薬物治療 → アトロピン(抗コリン薬)+ イソプレナリン(β1・β2刺激薬)
📋 国試頻出まとめ
| # | テーマ | 重要ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 心房細動の心電図 | P波消失+不規則なRR間隔。1回拍出量が低下 |
| 2 | レートコントロールの薬剤 | βブロッカー・非DHP系Ca拮抗薬(ジルチアゼム・ベラパミル)・ジゴキシン |
| 3 | WPW+AFの禁忌 | ジゴキシン・ベラパミル禁忌(副伝導路経由で心室細動リスク) |
| 4 | 脳塞栓予防 | DOAC/ワルファリン(抗凝固療法)。アスピリンでは不十分 |
| 5 | カテーテルアブレーション | 肺静脈起源の異常興奮を焼灼する再発予防の非薬物療法 |
| 6 | リドカイン | **心室性不整脈(VT/VF)**の治療薬。心房細動には不適 |
| 7 | 完全房室ブロックの心電図 | P波とQRS波が全く無関係。PP間隔・RR間隔はそれぞれ一定 |
| 8 | 完全房室ブロックの緊急治療 | アトロピン(迷走神経遮断)+イソプレナリン(β刺激→心拍数↑) |
| 9 | NYHA分類 | 心不全の重症度分類(心房細動の重症度分類ではない) |
| 10 | ランジオロール | 超短時間作用型β遮断薬。完全房室ブロックでは心拍数をさらに低下させるため禁忌 |
📝 国試過去問チェック
第111回 問190(心房細動の治療)
心房細動の治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 除細動及び洞調律維持を目的として、リドカインが用いられる。
- 心拍数調節を目的として、アドレナリンβ受容体遮断薬が用いられる。
- WPW症候群を併発している場合には、ジゴキシンによる心拍数調節が推奨される。
- 非薬物療法として、カテーテルアブレーションが再発予防に用いられる。
- 脳塞栓症の合併予防には、主にアスピリンによる抗血小板療法が用いられる。
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正答:2・4
2✅ βブロッカーは房室伝導を抑制し、心拍数調節(レートコントロール)に使用される。4✅ カテーテルアブレーション(肺静脈隔離術)は再発予防に有効な非薬物療法。1❌ リドカイン → 心室性不整脈(VT/VF)に使用。心房細動への洞調律維持効果は乏しい。3❌ WPW+AFにジゴキシンは禁忌(副伝導路経由で心室細動を誘発)。5❌ 脳塞栓症予防には**抗凝固療法(DOAC/ワルファリン)**が第一選択。アスピリン(抗血小板薬)では不十分。
第108回 問159(心房細動の病態・治療)
65歳女性。5年前から高血圧症を放置。動悸・気分不良で受診、心拍96拍/分(不整)。心房細動と診断、抗凝固薬投与開始。この患者の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 心電図所見では、P波が消失し、不規則なRR間隔が認められる。
- 心房細動の重症度判定に、NYHA分類が用いられる。
- 心拍数の調節には、リドカイン点滴静注を用いる。
- 1回拍出量は、心房細動の発症前と比べて低下している。
- 無治療で洞調律に戻ることはない。
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正答:1・4
1✅ P波消失+不規則なRR間隔は心房細動の典型的心電図所見。4✅ 心房細動では心房の規則的収縮がなくなり心室への充満が不十分となり1回拍出量が低下する。2❌ NYHA分類は心不全の重症度分類。心房細動の症状分類にはEHRAスコア等を用いる。3❌ リドカインは心室性不整脈の治療薬。心房細動の心拍数調節にはジゴキシン・β遮断薬・Ca拮抗薬を用いる。5❌ 発症早期の心房細動は自然に洞調律に戻ることがある(発作性心房細動)。
第107回 問159(完全房室ブロックの初期治療)
60歳男性。1週間前からめまい。今朝強いめまい・ふらつきで救急受診。血圧118/84 mmHg、脈拍32回/分。心電図:P波とQRS波が全く無関係に出現、PP間隔とRR間隔がそれぞれ一定、P波よりQRS波の出現頻度が少ない。この患者の初期治療に適切な薬物はどれか。2つ選べ。
- アミオダロン
- ニトログリセリン
- ランジオロール
- アトロピン
- イソプレナリン
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正答:4・5
心電図所見(P波とQRS波が全く無関係・PP間隔とRR間隔がそれぞれ一定・P波>QRS波の頻度)は完全房室ブロック(第3度)の典型的所見。心室が遅い補充調律(32回/分)で駆動 → 徐脈・めまい。4✅ アトロピン → 抗コリン薬(迷走神経遮断)→ 徐脈の初期薬物治療。5✅ イソプレナリン → β1・β2受容体刺激薬 → 心拍数増加 → 重篤な徐脈の緊急治療。1❌ アミオダロン(Ⅲ群)→ 頻脈性不整脈の治療薬。徐脈には使用しない。2❌ ニトログリセリン → 狭心症・心不全(不整脈ではない)。3❌ ランジオロール → 超短時間作用型β遮断薬 → 心拍数をさらに低下させるため禁忌。
