🧬 自己免疫疾患の薬物治療
自己免疫疾患は「免疫が自分の組織を攻撃する」疾患群です。国試では各疾患に特徴的な自己抗体と治療薬の組み合わせが頻出です。
🦴 ① 関節リウマチ(RA)
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 病態 | 滑膜の慢性炎症→関節破壊・骨びらん |
| 好発 | 中年女性(男女比 1:4) |
| 特徴的自己抗体 | 抗CCP抗体(特異性高い)・リウマトイド因子(RF) |
| 治療方針 | 早期から**DMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)**を使用 |
治療薬
| 分類 | 代表薬 | 作用・特徴 |
|---|---|---|
| 合成DMARD | メトトレキサート(MTX) | 第一選択。葉酸代謝拮抗 |
| 生物学的製剤 | インフリキシマブ・エタネルセプト | 抗TNF-α抗体(TNF阻害) |
| トシリズマブ | 抗IL-6受容体抗体 | |
| アバタセプト | T細胞共刺激阻害(CD80/86-CD28経路) | |
| リツキシマブ | 抗CD20抗体(B細胞除去) | |
| JAK阻害薬 | バリシチニブ・トファシチニブ | JAK1/2阻害。経口投与可 |
✅ 生物学的製剤使用前に必ず確認:結核・B型肝炎ウイルス感染のスクリーニング(感染再燃リスク)
🔴 ② SLE(全身性エリテマトーデス)
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 好発 | 20〜40歳代の女性(男女比 1:9) |
| 特徴的症状 | 蝶形紅斑(両側性)・光線過敏・漿膜炎・腎障害 |
| アレルギー型 | Ⅲ型アレルギー(免疫複合体沈着→補体活性化→炎症) |
| 活動性の指標 | 抗dsDNA抗体↑・補体(C3・C4)↓ |
特徴的な自己抗体
| 抗体 | 意義 |
|---|---|
| 抗dsDNA抗体 | SLEに特異的・疾患活動性と相関 |
| 抗Sm抗体 | SLEに特異的(特異度高い) |
| 抗核抗体(ANA) | 95%以上陽性(スクリーニング) |
| 抗リン脂質抗体 | 血栓症・流産(抗リン脂質抗体症候群)の原因 |
腎障害(ループス腎炎)
| クラス | 特徴 | 治療 |
|---|---|---|
| III / IV型 | 増殖性腎炎(最も重症) | ステロイド大量+シクロホスファミド |
| V型 | 膜性腎炎→ネフローゼ症候群 | ステロイド+免疫抑制薬 |
SLEの治療
| 重症度 | 治療薬 |
|---|---|
| 軽症 | ヒドロキシクロロキン(HCQ)・NSAIDs |
| 中等症〜重症 | ステロイド(プレドニゾロン) |
| 重症・腎炎 | ステロイド大量+シクロホスファミド |
| 維持療法 | アザチオプリン・ミコフェノール酸モフェチル |
| 難治例 | ベリムマブ(抗BLyS抗体) |
⚠️ SLE患者への注意点
- 光線過敏があるため日光回避・遮光が重要
- 蝶形紅斑は鼻梁から両頬にかけて両側性(一側性でない)
💧 ③ シェーグレン症候群
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 好発 | 中年女性(男女比 1:9〜14) |
| 病態 | 涙腺・唾液腺の慢性炎症・破壊 |
| 分類 | 原発性(単独)/続発性(他の自己免疫疾患に合併) |
特徴的な自己抗体
| 抗体 | 疾患との関連 |
|---|---|
| 抗SS-A抗体(抗Ro抗体) | シェーグレン症候群の約70%陽性(最も特異的) |
| 抗SS-B抗体(抗La抗体) | シェーグレン症候群でも陽性になることがある |
| 抗核抗体(ANA) | 多くの自己免疫疾患で陽性(スクリーニング) |
主な症状と治療
| 症状 | 部位 | 治療 |
|---|---|---|
| ドライアイ(乾燥性角結膜炎) | 涙腺 | 人工涙液(対症)・シクロスポリン点眼 |
| ドライマウス(口腔乾燥症)→ う歯増加 | 唾液腺 | 人工唾液・セビメリン(M₃受容体刺激薬)・ピロカルピン |
| 関節痛・皮膚・肺・腎・末梢神経障害 | 全身 | ステロイド・免疫抑制薬 |
⚠️ アトロピン(抗コリン薬)はドライマウスを悪化させるため禁忌 → ドライマウスの治療は抗コリン薬でなくコリン作動薬(セビメリン・ピロカルピン)
✅ 「涙腺と唾液腺のみ」ではなく、全身臓器にも病変が出ることがある
🔬 主要自己免疫疾患と自己抗体まとめ
| 自己抗体 | 対応疾患 |
|---|---|
| 抗dsDNA抗体・抗Sm抗体 | SLE(特異的) |
| 抗SS-A(Ro)抗体・抗SS-B(La)抗体 | シェーグレン症候群 |
| 抗CCP抗体・リウマトイド因子(RF) | 関節リウマチ |
| 抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体) | 全身性強皮症 |
| 抗Jo-1抗体 | 多発性筋炎・皮膚筋炎 |
| MPO-ANCA | 顕微鏡的多発血管炎 |
| PR3-ANCA | 多発血管炎性肉芽腫症(旧ウェゲナー) |
| 抗チログロブリン抗体・抗TPO抗体 | 橋本病(慢性甲状腺炎) |
| 抗GAD抗体 | 1型糖尿病 |
📋 国試頻出まとめ
| # | テーマ | 重要ポイント |
|---|---|---|
| 1 | RAの第一選択 | メトトレキサート(MTX) |
| 2 | 抗CCP抗体 | 関節リウマチに特異性が高い |
| 3 | 生物学的製剤の注意 | 使用前に結核・B型肝炎のスクリーニング必須 |
| 4 | SLEのアレルギー型 | Ⅲ型(免疫複合体型) |
| 5 | SLEの特異抗体 | 抗dsDNA抗体・抗Sm抗体。活動性は抗dsDNA↑・補体↓ |
| 6 | 蝶形紅斑 | 鼻梁から両頬の両側性紅斑(一側性でない) |
| 7 | ループス腎炎III/IV型 | 最重症。ステロイド+シクロホスファミド |
| 8 | シェーグレン症候群の自己抗体 | 抗SS-A抗体(約70%陽性・最も特異的) |
| 9 | ドライマウスの治療 | セビメリン・ピロカルピン(M₃刺激)。アトロピンは禁忌 |
| 10 | シェーグレンの全身症状 | 涙腺・唾液腺だけでなく全身臓器にも病変あり |
📝 国試過去問チェック
第111回 問189(シェーグレン症候群)
シェーグレン症候群に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 抗SS-A抗体が陽性になることが多い。
- 障害は涙腺と唾液腺に現れ、その他の臓器ではみられない。
- 中年男性に好発する。
- ドライマウスに対して、アトロピンが使用される。
- ドライアイに対して、人工涙液による対症療法が用いられる。
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正答:1・5
1✅ 抗SS-A抗体はシェーグレン症候群の約70%で陽性となる特徴的な自己抗体。2❌ 涙腺・唾液腺だけでなく、関節・皮膚・肺・腎・末梢神経など全身臓器にも病変が出ることがある。3❌ シェーグレン症候群は中年女性に好発(男女比 1:9〜14)。4❌ アトロピンは抗コリン薬であり、唾液分泌を抑制するためドライマウスを悪化させる。ドライマウスの治療はコリン作動薬(セビメリン・ピロカルピン)。5✅ ドライアイの基本治療は人工涙液による対症療法。
第107回 問56(SLEの自己抗体)
全身性エリテマトーデス(SLE)に特異性の高い抗体はどれか。1つ選べ。
- 抗チログロブリン抗体(抗サイログロブリン抗体)
- 抗二本鎖DNA抗体
- 抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)
- 抗Jo-1抗体
- 抗GAD抗体(抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体)
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正答:2
1❌ 抗チログロブリン抗体 → 橋本病(慢性甲状腺炎)・グレーブス病。2✅ 抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体 → SLEに高い特異性。疾患活動性のモニタリングにも使用される。3❌ 抗CCP抗体 → **関節リウマチ(RA)**に特異性が高い。4❌ 抗Jo-1抗体 → 多発性筋炎・皮膚筋炎(炎症性筋疾患)。5❌ 抗GAD抗体 → 1型糖尿病・自己免疫性脳炎。
第109回 問157(SLE合併症・症例問題)
37歳女性。SLE診断後ステロイド療法で安定中。漸減中に精神症状(多弁・無表情・混乱)が出現。血清Cr 1.84 mg/dL、eGFR 32.8、HbA1c 6.5%、抗核抗体(+)、尿タンパク(2+)、尿潜血(+)。赤血球・白血球・血小板は正常範囲。
この患者に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- SLEはⅠ型アレルギーによって発症した
- 顔面の紅斑は鼻梁から頬にかけて一側性である
- 副腎皮質ステロイド性薬の漸減中の症状から中枢神経ループスが疑われる
- 血液検査から汎血球減少症が疑われる
- 血液検査からループス腎炎が疑われる
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正答:3・5
3✅ ステロイド漸減中の精神症状(多弁・混乱) → 中枢神経ループス(NP-SLE)の再燃を示唆。5✅ 尿タンパク(2+)・尿潜血(+)・Cr上昇・eGFR低下 → ループス腎炎が疑われる。1❌ SLEはⅠ型ではなくⅢ型アレルギー(免疫複合体沈着→補体活性化)が主体。2❌ 蝶形紅斑は鼻梁から両頬にかけて両側性(蝶の翅のような形)。一側性ではない。4❌ 赤血球400万・白血球5120・血小板20.8万はいずれも正常範囲 → 汎血球減少ではない。
