🧠 自律神経系の全体像
| 交感神経 | 副交感神経 | |
|---|---|---|
| 放出物質 | ノルアドレナリン(NA) | アセチルコリン(ACh) |
| 受容体 | α₁・α₂・β₁・β₂・β₃ | M₁・M₂・M₃ |
| 心拍数 | ↑ | ↓ |
| 血圧 | ↑(血管収縮) | — |
| 瞳孔 | 散瞳 | 縮瞳 |
| 気管支 | 拡張 | 収縮 |
| 消化管 | 蠕動↓ | 蠕動↑ |
| 膀胱 | 排尿抑制(括約筋収縮) | 排尿促進(膀胱収縮) |
神経節での伝達(交感・副交感共通):節前線維 → ACh → ニコチン受容体(Nn型)→ 節後線維
交感神経系薬
アドレナリン受容体の種類と分布
| 受容体 | Gタンパク | 主な分布 | 活性化で起こること |
|---|---|---|---|
| α₁ | Gq | 血管平滑筋・前立腺・瞳孔散大筋 | 血管収縮・前立腺収縮・散瞳 |
| α₂ | Gi | シナプス前膜・血小板・脂肪細胞 | NA遊離↓(自己受容体)・血小板凝集↑ |
| β₁ | Gs | 心臓(洞房結節・心筋) | 心拍数↑・心収縮力↑ |
| β₂ | Gs | 気管支・末梢血管・子宮 | 気管支拡張・血管拡張・子宮弛緩 |
| β₃ | Gs | 脂肪組織・膀胱排尿筋 | 脂肪分解↑・膀胱弛緩 |
カテコールアミンの合成経路と使い分け
チロシン
↓ チロシン水酸化酵素(律速酵素)
DOPA(ジヒドロキシフェニルアラニン)
↓ DOPA脱炭酸酵素
ドパミン(D₁・D₂・β₁受容体に作用)
↓ ドパミン-β-水酸化酵素
ノルアドレナリン(α₁・α₂・β₁受容体に作用 / β₂にはほとんど作用しない)
↓ PNMT(フェニルエタノールアミン-N-メチル転移酵素)※副腎髄質のみ
アドレナリン(α₁・α₂・β₁・β₂すべてに作用)
| 薬物 | 受容体 | 主な作用 | 臨床応用 |
|---|---|---|---|
| アドレナリン | α₁・α₂・β₁・β₂ | 心拍数↑・血圧↑・気管支拡張 | アナフィラキシー・心停止 |
| ノルアドレナリン | α₁・α₂・β₁(β₂には弱い) | 血管収縮(血圧↑)・心拍数↓(反射性) | ショック時昇圧 |
| ドパミン | D₁・β₁(低用量でD₁→腎血管拡張) | 低用量:腎拡張、高用量:心拍↑・昇圧 | 心原性ショック |
| イソプレナリン | β₁・β₂(αには作用しない) | 心拍↑・気管支拡張・血管拡張 | 徐脈・喘息(現在は後継薬あり) |
α受容体刺激薬
| 薬物 | 受容体選択性 | 特徴・適応 |
|---|---|---|
| フェニレフリン | α₁選択的 | 血管収縮↑・反射性徐脈。散瞳薬(点眼)。低血圧・鼻閉・眼科検査 |
| クロニジン | α₂選択的(中枢性) | 中枢のα₂刺激→交感神経抑制→血圧↓。副作用:眠気・口渇・突然中断でリバウンド高血圧 |
| メチルドパ | α₂刺激(偽性伝達物質) | α-メチルNAに変換→中枢α₂刺激→降圧。妊婦に使える降圧薬 |
α受容体遮断薬
| 薬物 | 受容体 | 特徴・適応 |
|---|---|---|
| プラゾシン | α₁選択的 | 起立性低血圧が起こりやすい。高血圧・前立腺肥大 |
| タムスロシン | α₁A選択的(前立腺>血管) | 血圧低下が少ない。前立腺肥大による排尿障害 |
| フェントラミン | α₁・α₂非選択的 | 頻脈(α₂遮断でNA↑→β₁刺激)。褐色細胞腫の診断・手術前処置 |
| カルベジロール | α₁+β₁・β₂遮断 | 血管拡張+心拍抑制。高血圧・心不全 |
β受容体刺激薬
| 薬物 | 受容体 | 特徴・適応 |
|---|---|---|
| サルブタモール | β₂選択的(SABA) | 気管支拡張(即効型)。喘息発作 |
| サルメテロール | β₂選択的(LABA) | 気管支拡張持続12時間以上。喘息・COPD長期管理 |
| ミラベグロン | β₃選択的 | 膀胱排尿筋弛緩→蓄尿量↑。口渇なし(M受容体に作用しない)。過活動膀胱 |
| リトドリン | β₂刺激 | 子宮平滑筋弛緩。切迫早産 |
β受容体遮断薬(β遮断薬)
| 薬物 | β₁選択性 | ISA | 特徴 |
|---|---|---|---|
| プロプラノロール | 非選択的(β₁・β₂) | なし | 脂溶性↑→中枢移行(頭痛・不眠)。気管支喘息禁忌 |
| アテノロール | β₁選択的 | なし | 水溶性→中枢移行少ない。腎排泄 |
| ビソプロロール | β₁選択的 | なし | 心不全・高血圧に使用 |
| ピンドロール | 非選択的 | あり | ISA→安静時の徐脈が起こりにくい |
| カルベジロール | α₁+β非選択的 | なし | 血管拡張作用あり。心不全に有用 |
ISA(内因性交感神経刺激活性):β受容体を弱く刺激しながら遮断する性質。安静時の徐脈が起こりにくい。ピンドロール・アセブトロールが代表。
β遮断薬の気管支喘息禁忌:β₂遮断→気管支収縮。β₁選択的薬でも高用量では禁忌。
🫀 副交感神経系薬
ムスカリン受容体の種類と分布
| 受容体 | Gタンパク | 主な分布 | 活性化で起こること |
|---|---|---|---|
| M₁ | Gq | 胃壁細胞・神経節 | 胃酸分泌↑ |
| M₂ | Gi | 心臓(洞房結節・房室結節) | 心拍数↓・伝導↓ |
| M₃ | Gq | 平滑筋・外分泌腺・毛様体筋・瞳孔括約筋・膀胱排尿筋 | 収縮・分泌↑・縮瞳・排尿促進 |
ムスカリン受容体刺激薬(直接型)
| 薬物 | 選択性 | 特徴・適応 |
|---|---|---|
| ピロカルピン | M(特にM₃) | 毛様体筋収縮(調節緊張)・縮瞳・唾液分泌↑。緑内障・口腔乾燥症 |
| ベタネコール | M₃ | 消化管・膀胱平滑筋収縮。ニコチン受容体に作用しない。術後腸管麻痺・排尿障害 |
| セビメリン | M₃選択的 | M₁・M₂への作用が少→唾液・涙液分泌↑。シェーグレン症候群・ドライマウス |
コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬(間接型)
AChを分解するChEを阻害 → ACh濃度↑ → M・N受容体を刺激
シナプス前膜からACh放出
↓
シナプス間隙
↓ 通常はコリンエステラーゼ(ChE)がAChを加水分解→コリン+酢酸
↓ 【ChE阻害薬】がChEを阻害 → AChが分解されずにシナプス間隙に蓄積
後膜のM受容体・N受容体
↓ ACh過剰刺激
副交感神経様作用↑(縮瞳・気管支収縮・腸管収縮・心拍↓・分泌↑)
+骨格筋収縮↑(Nm受容体刺激)
| 薬物 | 阻害の種類 | 特徴・適応 |
|---|---|---|
| ネオスチグミン | 可逆的 | 末梢性(中枢移行しにくい)。重症筋無力症・術後腸管麻痺・筋弛緩薬の拮抗 |
| ドネペジル | 可逆的(中枢選択的) | 脳内AChを増やす。アルツハイマー型認知症 |
| フィゾスチグミン | 可逆的 | 中枢移行あり。緑内障(点眼)・アトロピン中毒の解毒 |
| エドロホニウム | 可逆的(超短時間) | 静注後数分で効果消失。重症筋無力症の診断(テンシロンテスト) |
| パラチオン(有機リン) | 不可逆的 | 農薬・サリン類似。ChEと共有結合。解毒薬:PAM+アトロピン |
有機リン中毒の治療フロー:
有機リン(パラチオン・サリン等)が体内に吸収
↓
ChEと共有結合(不可逆的)→ ACh分解できず → ACh過剰蓄積
↓
SLUDGE症状:縮瞳・流涎・排尿↑・下痢・嘔吐/気管支痙攣・徐脈
【治療】
PAM(プラリドキシム)
→ 有機リン-ChE複合体を分解してChEを再活性化
→ ※エイジング(時間経過で結合が安定化)前に早急に投与!
アトロピン(M受容体遮断薬)
→ M受容体をブロックして副交感神経様症状(縮瞳・気管支痙攣・徐脈)を緩和
→ ※N受容体症状(筋麻痺)にはPAMが必要
PAMはエイジング前の早期投与が必須。時間が経つと有機リン-ChE結合が安定化してPAMが効かなくなる。
ムスカリン受容体遮断薬(抗コリン薬)
| 薬物 | 選択性 | 特徴・適応 |
|---|---|---|
| アトロピン | 非選択的 | M₂遮断→心拍数↑・散瞳。徐脈・有機リン中毒・術前投与 |
| スコポラミン | 非選択的 | 中枢移行あり→鎮静・乗り物酔い抑制。麻酔前投薬 |
| ピレンゼピン | M₁選択的 | 胃酸分泌↓。消化性潰瘍 |
| オキシブチニン | M₃遮断 | 膀胱平滑筋弛緩→蓄尿量↑。口渇の副作用。過活動膀胱 |
| ソリフェナシン | M₃選択的 | 膀胱選択的。口渇が少ない。過活動膀胱 |
| チオトロピウム | M₃遮断(長時間) | 吸入薬・気管支拡張。1日1回。COPD長期管理 |
| トロピカミド | M₃遮断 | 散瞳・調節麻痺(点眼)。眼底検査・屈折検査 |
抗コリン薬の5大副作用:散瞳・調節麻痺(M₃)/頻脈(M₂遮断)/口渇(唾液分泌↓)/便秘(消化管蠕動↓)/尿閉(膀胱括約筋収縮)
閉塞隅角緑内障に禁忌:散瞳→隅角が狭くなる→眼房水の流出障害→眼圧上昇。
ニコチン受容体(N受容体)関連薬
| 受容体 | 場所 | 関連薬 |
|---|---|---|
| Nn(神経節型) | 自律神経節 | 神経節遮断薬(ヘキサメトニウム)が作用 |
| Nm(筋肉型) | 神経筋接合部 | 筋弛緩薬(スキサメトニウム・ベクロニウム)が作用 |
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | α₁(Gq):血管収縮・散瞳・前立腺収縮 / 刺激薬:フェニレフリン / 遮断薬:プラゾシン・タムスロシン |
| 2 | α₂(Gi):NA遊離↓(自己受容体) / 刺激薬:クロニジン(中枢性降圧)・メチルドパ(妊婦に可) |
| 3 | β₁(Gs):心拍数↑・心収縮力↑ / 遮断薬:ビソプロロール・アテノロール(β₁選択的) |
| 4 | β₂(Gs):気管支拡張・子宮弛緩 / 刺激薬:サルブタモール(SABA)・サルメテロール(LABA)・リトドリン |
| 5 | β₃(Gs):膀胱弛緩 / 刺激薬:ミラベグロン(過活動膀胱・口渇なし) |
| 6 | ISA:β受容体を弱く刺激しながら遮断→安静時の徐脈が起こりにくい。代表薬:ピンドロール |
| 7 | M₁(Gq):胃酸分泌↑ / 遮断薬:ピレンゼピン(消化性潰瘍) |
| 8 | M₂(Gi):心拍数↓・伝導↓ / 遮断薬:アトロピン(徐脈・有機リン中毒) |
| 9 | M₃(Gq):平滑筋収縮・外分泌↑・縮瞳 / 刺激薬:ピロカルピン・セビメリン / 遮断薬:チオトロピウム・ソリフェナシン |
| 10 | ChE阻害薬:可逆的(ネオスチグミン・ドネペジル・エドロホニウム)vs 不可逆的(有機リン)。有機リン解毒:PAM+アトロピン |
📝 国試過去問チェック
第111回 問152(一般)
自律神経系に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1. フェニレフリンはα₂受容体を選択的に刺激し昇圧する
2. クロニジンは末梢のα₁受容体を刺激して血圧を下げる
3. セビメリンはM₃受容体を選択的に刺激し唾液分泌を促進する
4. アトロピンはM受容体を刺激して心拍数を上昇させる
5. ネオスチグミンはコリンエステラーゼと不可逆的に結合して阻害する
解答と解説を見る
正解:3
1✗ フェニレフリンはα₁選択的刺激薬(α₂ではない)。
2✗ クロニジンは中枢のα₂受容体を刺激して降圧(末梢α₁ではない)。
3○ セビメリンはM₃選択的刺激→シェーグレン症候群の口腔乾燥症に使用。
4✗ アトロピンはM受容体を遮断する(刺激ではない)。
5✗ ネオスチグミンは可逆的阻害(不可逆的なのはパラチオン等の有機リン)。
第109回 問82(一般)
β遮断薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1. プロプラノロールはβ₁選択性が高いため、気管支喘息患者に安全に使用できる
2. ピンドロールはISAを持つため、安静時の徐脈が起こりにくい
3. アテノロールは脂溶性が高く中枢移行しやすいため不眠の副作用がある
4. カルベジロールはβ受容体のみを遮断する
5. ビソプロロールはα₁受容体も遮断するため血管拡張作用がある
解答と解説を見る
正解:2
1✗ プロプラノロールは非選択的β遮断薬。気管支喘息に禁忌。
2○ ピンドロールはISAあり→安静時の徐脈が起こりにくい。
3✗ アテノロールは水溶性で中枢移行しにくい(中枢性副作用が少ない)。
4✗ カルベジロールはα₁+βを遮断(血管拡張作用あり)。
5✗ ビソプロロールはβ₁選択的(α₁は遮断しない)。
