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抗がん剤・感染症の実務知識

📅 2026年5月20日🔄 更新: 2026年5月20日
📖 この記事でわかること
  • 抗がん剤の無菌調製に必要な安全キャビネット(BSC)とクリーンベンチの違いがわかる
  • エンピリック治療・デ・エスカレーションの流れを説明できる
  • 腫瘍崩壊症候群(TLS)の病態と予防薬を選べる
  • 主な中毒原因物質と解毒薬の組み合わせを覚えられる
  • ノロウイルスに有効な消毒薬と無効な消毒薬を判断できる
目次
  1. 1.抗がん剤の無菌調製:安全キャビネット(BSC)
  2. 正しい無菌調製の手技
  3. 主な抗がん剤と調製時の注意
  4. 2.感染症治療:エンピリック治療とデ・エスカレーション
  5. 3.腫瘍崩壊症候群(TLS)
  6. TLSの予防・治療薬
  7. 4.解毒薬と中毒原因物質
  8. 5.ノロウイルスの消毒
  9. 6.感染経路の分類
  10. 7.国試頻出まとめ
  11. 8.国試過去問チェック

抗がん剤の無菌調製:安全キャビネット(BSC)

抗がん剤は作業者を守るために、クリーンベンチではなく安全キャビネット(BSC)で調製します。

設備 目的 使用場面
安全キャビネット(BSC) 作業者と環境を保護(排気フィルターで外部に漏れない) 抗がん剤・生物学的製剤の調製
クリーンベンチ 製品を汚染から守る(無菌環境) 一般注射剤の無菌調製

⚠️ 抗がん剤はBSCで調製!クリーンベンチは作業者が暴露されるため使用不可

正しい無菌調製の手技

項目 正しい方法
手袋 二重装着(ダブルグローブ)
シリンジ先端 ルアーロック式(ルアースリップ式は外れて飛散のリスク)
バイアル内圧 陰圧に保つ(陽圧にすると薬液が飛散)
汚染時の拭き取り 外側から内側(中心)へ(中心から外へは汚染を広げる)

主な抗がん剤と調製時の注意

薬剤 分類 調製のポイント
パクリタキセル タキサン系 BSC内で調製、専用輸液セット(DEHPフリー)使用
ドセタキセル タキサン系 前投薬(デキサメタゾン等)が必要
シスプラチン プラチナ系 生食で溶解(糖液は不可)

感染症治療:エンピリック治療とデ・エスカレーション

用語 内容
エンピリック治療 原因菌不明段階での広域抗菌薬による経験的治療
ディフィニティブ治療 培養・感受性結果に基づく確定的治療
デ・エスカレーション 広域→狭域抗菌薬への切り替え(耐性菌対策)
デブリードマン 壊死組織・感染組織・異物を除去して創部を清浄化する処置
テーパリング 薬剤を徐々に減量すること
【発症・入院】
↓
エンピリック治療(経験的治療)
= 原因菌不明の段階で広域抗菌薬を使用
↓
血液培養・薬剤感受性試験の結果確認(48〜72時間後)
↓
ディフィニティブ治療(確定的治療)
= 原因菌・感受性に基づいた適切な抗菌薬に変更
↓
デ・エスカレーション
= より狭いスペクトラムの抗菌薬に変更(耐性菌抑制)

腫瘍崩壊症候群(TLS)

抗がん剤投与
↓
腫瘍細胞の大量破壊
↓
細胞内容物が血中に放出
↓
【高尿酸血症・高カリウム血症・高リン血症・低カルシウム血症】
↓
急性腎障害・不整脈・痙攣
項目 内容
原因 抗がん剤投与後の腫瘍細胞大量破壊で細胞内容物が血中に放出
検査値変化 高尿酸血症・高カリウム血症・高リン血症・低カルシウム血症
合併症 急性腎障害・不整脈・痙攣
リスク高い疾患 急性白血病(ALL・AML)・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫

TLSの予防・治療薬

薬剤 分類 役割
フェブキソスタット キサンチンオキシダーゼ(XO)阻害薬 尿酸産生を抑制→TLS予防
アロプリノール キサンチンオキシダーゼ阻害薬 尿酸産生抑制(古くからの標準薬)
ラスブリカーゼ 尿酸酸化酵素 尿酸を分解→急速な尿酸低下
補液・利尿 尿酸・リン酸の腎排泄を促進

⚠️ TLS予防の核心は「尿酸産生抑制」。フェブキソスタット・アロプリノールはどちらもXO阻害薬

解毒薬と中毒原因物質

中毒原因物質 解毒薬 機序
鉛・銅(ウィルソン病) ペニシラミン キレート形成→重金属を排泄
アセトアミノフェン N-アセチルシステイン グルタチオン補充
有機リン(サリン等) ヨウ化プラリドキシム(PAM)・アトロピン ChE再活性化
モルヒネ・麻薬 ナロキソン オピオイド受容体拮抗
ベンゾジアゼピン フルマゼニル GABA受容体拮抗
メタノール ホメピゾール・エタノール 代謝阻害

💡 ペニシラミンは重金属キレート薬。鉛・銅・水銀などに使用

ノロウイルスの消毒

ノロウイルスはノンエンベロープウイルス(脂質の膜なし)のため、アルコール・逆性石鹸は無効です。

消毒薬 ノロウイルスへの効果 備考
次亜塩素酸ナトリウム 有効 床・物品・リネンの消毒に最適(200ppm以上)
グルタラール ✅ 有効 内視鏡・器具消毒(リネン・床には不適)
エタノール 無効 ノンエンベロープウイルスには効果弱い
ベンザルコニウム塩化物 無効 第四級アンモニウム化合物→ノンエンベロープに無効
クロルヘキシジン 無効 細菌に有効だがノンエンベロープウイルスには無効
ノロウイルス = ノンエンベロープウイルス(脂質の膜なし)
↓
アルコール・逆性石鹸(ベンザルコニウム等)は無効!
↓
【次亜塩素酸ナトリウム(200ppm以上)が有効】

⚠️ アルコール手指消毒はノロウイルスに効果が弱い!流水・石鹸での手洗いが基本

感染経路の分類

感染経路 特徴 代表疾患
飛沫感染 飛沫(5μm以上)が粘膜に付着 インフルエンザ・風疹・マイコプラズマ肺炎・百日咳・流行性耳下腺炎
空気感染 飛沫核(5μm未満)が長時間浮遊 結核・麻疹・水痘・帯状疱疹
接触感染 直接・間接接触 MRSA・疥癬・CD感染症・ノロウイルス・流行性角結膜炎
経口(糞口)感染 汚染食品・水を摂取 腸管出血性大腸菌・A型肝炎・サルモネラ

⚠️ 空気感染「結核・麻疹・水痘」の3つを覚える。それ以外の多くは飛沫感染

国試頻出まとめ

# テーマ ポイント
1 BSC vs クリーンベンチ 抗がん剤は必ずBSC(安全キャビネット)。クリーンベンチは作業者が暴露される
2 ダブルグローブ 抗がん剤調製時は手袋を二重に装着
3 デ・エスカレーション 広域→狭域抗菌薬への切り替え。耐性菌対策の核心
4 TLS予防薬 フェブキソスタット・アロプリノール(XO阻害)で尿酸産生を抑制
5 ペニシラミン 鉛・銅の重金属キレート薬
6 ノロウイルス消毒 次亜塩素酸ナトリウムのみ有効。アルコール・ベンザルコニウムは無効
7 空気感染 結核・麻疹・水痘の3つだけ覚える
8 デブリードマン 壊死組織除去によって創部を清浄化する処置

国試過去問チェック

第110回 問90(必須)

がん薬物療法を行う患者に腫瘍崩壊症候群(TLS)が生じた際に使用する薬剤として適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. ウルソデオキシコール酸 2. フェブキソスタット 3. メトトレキサート 4. ラモセトロン 5. タクロリムス
✅ 正解・解説を見る

正解:2

1✗ ウルソデオキシコール酸(胆汁酸製剤)→TLSと無関係
2○ フェブキソスタット(XO阻害薬)→尿酸産生抑制→TLS予防・治療
3✗ メトトレキサート(抗がん剤)→むしろTLSを引き起こす側
4✗ ラモセトロン(5-HT3拮抗薬・制吐薬)→TLSと無関係
5✗ タクロリムス(免疫抑制薬)→TLSと無関係

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第109回 問87(必須)

鉛による中毒の治療に用いられる解毒薬として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. アトロピン 2. ペニシラミン 3. ナロキソン 4. フルマゼニル 5. N-アセチルシステイン
✅ 正解・解説を見る

正解:2

2○ ペニシラミン:鉛・銅などの重金属とキレートを形成し尿中排泄を促進

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第109回 問88(必須)

ノロウイルスに汚染された床の消毒に適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. クロルヘキシジン 2. グルタラール 3. 次亜塩素酸ナトリウム 4. ポビドンヨード 5. ベンザルコニウム塩化物
✅ 正解・解説を見る

正解:3

1✗ クロルヘキシジン→ノンエンベロープウイルスに無効
2✗ グルタラール→内視鏡器具消毒用、床消毒には不向き
3○ 次亜塩素酸ナトリウム(200ppm以上)→ノロウイルスの床・環境消毒に最適
4✗ ポビドンヨード→皮膚・粘膜用、床消毒には使用しない
5✗ ベンザルコニウム塩化物(逆性石鹸)→ノンエンベロープウイルスに無効

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第108回 問86(必須)

次の感染症のうち、飛沫感染によって伝播するものはどれか。1つ選べ。

  1. 角化型疥癬 2. クロストリジウム・ディフィシル感染症 3. 流行性角結膜炎 4. マイコプラズマ肺炎 5. 腸管出血性大腸菌感染症
✅ 正解・解説を見る

正解:4

1✗ 角化型疥癬→接触感染
2✗ CD感染症→接触感染(芽胞による)
3✗ 流行性角結膜炎→接触感染
4○ マイコプラズマ肺炎→飛沫感染
5✗ 腸管出血性大腸菌→経口(糞口)感染

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第107回 問85(必須)

抗がん剤の無菌調製に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 手袋を二重に装着する 2. クリーンベンチ内で調製する 3. ルアースリップ式シリンジを使用する 4. バイアル内を陽圧にする 5. 中心から外側に向けて拭き取る
✅ 正解・解説を見る

正解:1

1○ 手袋の二重装着(ダブルグローブ)→抗がん剤暴露防止の基本
2✗ クリーンベンチ→**安全キャビネット(BSC)**内で調製
3✗ ルアースリップ式→ルアーロック式を使用(外れて飛散のリスク)
4✗ 陽圧→陰圧に保つ(陽圧では薬液が飛散)
5✗ 中心から外側→外側から中心へ拭き取る

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第107回 問86(必須)

風しん(風疹)の主な感染経路はどれか。1つ選べ。

  1. 空気感染 2. 接触感染 3. 飛沫感染 4. 経口感染 5. 血液感染
✅ 正解・解説を見る

正解:3

3○ 風疹の主な感染経路は飛沫感染(咳・くしゃみの飛沫)
※垂直感染(母→胎児)は先天性風疹症候群の経路だが、流行の主要経路は飛沫感染

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第105回 問89(必須)

感染した壊死組織や異物を除去して創部を清浄化する処置はどれか。1つ選べ。

  1. ドレナージ 2. スクラビング 3. トリアージ 4. デ・エスカレーション 5. デブリードマン
✅ 正解・解説を見る

正解:5

5○ デブリードマン:壊死組織・感染組織・異物を外科的または保存的に除去し、創部を清浄化する処置

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