⚡ 電気浸透流(EOF)
溶融シリカ毛細管の内壁は pH > 2 でシラノール基(Si−OH)が負に帯電する。引き寄せられた陽イオン層が電場で移動し、バルク液全体が陰極方向に流れる。
EOF の方向:陽極(+)→ 陰極(−)
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 内壁の電荷 | 負(シラノール基が解離) |
| 形成される電気二重層 | 陽イオン層が内壁近くに集中 |
| EOF 方向 | 陽極 → 陰極(pH > 2 で常に一定方向) |
⚠️ EOF は陰極から陽極ではない! 陽極→陰極方向が正しい。
EOF は pH が高いほど強くなる(シラノール基の解離が進むため)。
🔬 各モードの比較
| モード | 略称 | 原理 | 中性物質の分離 |
|---|---|---|---|
| キャピラリーゾーン電気泳動 | CZE | イオンの電気泳動移動度の差 | 不可(同時溶出) |
| キャピラリーゲル電気泳動 | CGE | ゲルによる分子ふるい(サイズ依存) | 可(大きいほど遅い) |
| キャピラリー等電点電気泳動 | CIEF | 両性電解質でpH勾配を形成 → pI 位置で停止 | 不可 |
| ミセル動電クロマトグラフィー | MEKC | SDS ミセルを疑似固定相として使用 | 可 |
✅ 中性物質を分離できるのは MEKC(と CGE)のみ! CZE・CIEF では不可。
📊 CZEでの検出順序
pH 7 の緩衝液を用いた場合:
陽イオン → 中性 → 陰イオン の順で検出される
| 物質の種類 | 移動速度 | 理由 |
|---|---|---|
| 陽イオン | 最速 | EOF+電気泳動速度(同方向)が加算 |
| 中性物質 | 中間(すべて同時) | EOF 速度のみ → CZE では分離不可 |
| 陰イオン | 最遅 | EOF 速度−電気泳動速度(逆方向)が相殺 |
⚠️ 中性物質は「すべて同時」に検出される(CZEでは分離不可)!
中性物質を分離したい場合は MEKC を使用する。
🧫 MEKC・CGE・CIEF の詳細
MEKC(ミセル動電クロマトグラフィー)
SDS(ドデシル硫酸ナトリウム:陰イオン性界面活性剤)がCMC(臨界ミセル濃度)以上でミセルを形成 → 疑似固定相として機能
- 疎水性の高い物質 → ミセル内に長時間分配 → 遅く検出
- 疎水性の低い物質 → 水相に長くとどまる → 早く検出
- → 疎水性の差で中性物質を分離できる
CGE(キャピラリーゲル電気泳動)
ゲルが分子ふるいとして機能:
| 分子サイズ | 移動 | 検出 |
|---|---|---|
| 小さい | ゲル内を自由に移動 | 先に検出 |
| 大きい | ゲルにより遅延 | 後で検出 |
✅ CGE はSDS-PAGE の毛細管版。大きい分子ほど遅く検出される(SDS-PAGEと同じ原理)。
CIEF(キャピラリー等電点電気泳動)
両性電解質(キャリアアンフォライト)を加えてpH勾配を形成 → 各タンパク質は自分の等電点(pI)の位置で電荷が 0 になり停止・集中(フォーカシング)
✅ CIEF のキーワード:両性電解質(キャリアアンフォライト)・pH勾配・pI
💉 SDS-PAGEと染色
| 操作 | 試薬・方法 | 用途 |
|---|---|---|
| タンパク質染色 | クーマシーブリリアントブルー(CBB) | ゲル中のタンパク質を青く染色 |
| 核酸(DNA・RNA)染色 | 臭化エチジウム(EtBr) | UV照射で蛍光 |
| アミノ酸・ペプチド検出 | ニンヒドリン | 紫色の呈色(アミノ基と反応) |
| タンパク質蛍光標識 | フルオレセインイソチオシアネート(FITC) | 蛍光標識 |
⚠️ SDS-PAGE のタンパク質染色 = CBB(クーマシーブリリアントブルー)!
臭化エチジウムは DNA の染色(核酸用)であり、タンパク質には使わない。
📋 国試頻出まとめ
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | EOF の方向 | 陽極→陰極(pH > 2 の溶融シリカ) |
| 2 | CZE の検出順 | 陽イオン → 中性(同時)→ 陰イオン |
| 3 | 中性物質の分離 | MEKC のみ可能(疎水性差を利用) |
| 4 | MEKC の原理 | SDS ミセルが疑似固定相 |
| 5 | CGE の検出順 | 小分子 → 先、大分子 → 後(分子ふるい) |
| 6 | CIEF の原理 | 両性電解質でpH勾配 → pI 位置でフォーカシング |
| 7 | SDS-PAGE 染色 | タンパク質 = CBB、核酸 = 臭化エチジウム |
| 8 | EOF 強度と pH | pH ↑ → シラノール基解離↑ → EOF↑ |
| 9 | EOF 抑制 | 内壁をポリマーコーティングすると EOF を抑制できる |
📝 国試過去問チェック
第109回薬剤師国家試験 問2(必須)
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後、タンパク質の染色に用いる最も適切な化合物はどれか。1つ選べ。
1. ニンヒドリン
2. 臭化エチジウム
3. o-フタルアルデヒド
4. フルオレセインイソチオシアネート
5. クーマシーブリリアントブルー(クマシーブリリアントブルー)
解答と解説を見る
正解:5
5○ クーマシーブリリアントブルー(CBB, Coomassie Brilliant Blue)は SDS-PAGE 後のタンパク質染色に最も広く用いられる色素。タンパク質と非特異的に結合し、青色に染色する。正しい。
1✗ ニンヒドリンはアミノ酸・ペプチドの検出試薬(アミノ基と反応して紫色を呈する)。ゲル電気泳動後のタンパク質染色には使用しない。
2✗ 臭化エチジウム(EtBr)は DNA・RNA などの核酸の染色に使用する(UV 照射で蛍光発光)。タンパク質の染色には使用しない。
3✗ o-フタルアルデヒドはアミノ酸・ペプチドの蛍光検出試薬(HPLC の誘導体化試薬)。ゲル染色には使用しない。
4✗ フルオレセインイソチオシアネート(FITC)はタンパク質の蛍光標識試薬。ゲル染色というよりも抗体標識などに使用する。
第107回薬剤師国家試験 問100(一般)
溶融シリカ毛細管を用いたキャピラリー電気泳動に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. pH 7の緩衝液を用いると、電気浸透流は陰極から陽極の方向に向かう。
2. キャピラリーゾーン電気泳動ではpH 7の緩衝液を用いると、陽イオン性物質と中性物質は同時に泳動される。
3. キャピラリーゲル電気泳動でタンパク質を分離すると、分子サイズの大きい順に検出される。
4. キャピラリー等電点電気泳動では、緩衝液に両性電解質(ポリアミノカルボン酸など)を溶解して分離を行う。
5. ミセル動電クロマトグラフィーでは、中性物質の相互分離が可能である。
解答と解説を見る
正解:4、5
4○ CIEF(キャピラリー等電点電気泳動)では両性電解質(キャリアアンフォライト)を加えてpH勾配を形成し、各タンパク質を pI の位置でフォーカシングする。正しい。
5○ MEKC(ミセル動電クロマトグラフィー)では SDS ミセルが疑似固定相となり、中性物質の疎水性の差を利用して分離できる。正しい。
1✗ 電気浸透流(EOF)は陽極→陰極の方向に向かう(溶融シリカ内壁が負に帯電 → 陽イオン層 → EOF が陰極へ)。「陰極から陽極」は逆。
2✗ CZE では陽イオン性物質は EOF+電気泳動速度(同方向)で最速に検出される。中性物質は EOF 速度のみで、陽イオン性物質より遅く検出される。同時ではない。
3✗ CGE では分子サイズの小さいものほど先に検出される(分子ふるい効果により大きい分子ほどゲルで遅延する)。「大きい順」は誤り。
