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🏥 病態・薬物治療

循環器疾患の薬物治療【国試頻出】ACE阻害薬の禁忌・急性心不全治療薬カルペリチド

📅 2026年5月20日🔄 更新: 2026年5月21日
📖 この記事でわかること
  • ACE阻害薬との併用禁忌薬(サクビトリルバルサルタン)とその理由がわかる
  • 急性心不全治療薬カルペリチド(組換えBNP)の作用機序がわかる
  • 労作性狭心症・冠攣縮性狭心症・急性心筋梗塞の治療の違いがわかる
  • WPW症候群・QT延長と多形性心室頻拍(TdP)などの不整脈がわかる
  • 国試頻出10テーマと3問分の過去問解説がわかる
目次
  1. 1.心不全の治療薬
  2. 2.ACE阻害薬との併用禁忌:サクビトリルバルサルタン
  3. サクビトリルバルサルタン(エンレスト)の特徴
  4. なぜACE阻害薬と禁忌なのか
  5. 心不全治療薬の比較
  6. LDLアフェレシス(デキストラン硫酸法)との禁忌
  7. 3.急性心不全治療薬:カルペリチド
  8. カルペリチド(ハンプ)の特徴
  9. 急性心不全治療薬の比較
  10. 心不全と神経体液性因子
  11. 4.狭心症・急性冠症候群の治療
  12. 労作性狭心症 vs 急性冠症候群(ACS)の比較
  13. 冠攣縮性狭心症の特徴
  14. 急性心筋梗塞の初期治療
  15. 心疾患合併高血圧の管理目標
  16. 5.不整脈と心電図
  17. 主要な不整脈症候群の比較
  18. QT延長をきたす代表的薬剤
  19. 6.利尿薬と電解質
  20. 利尿薬の作用部位と電解質への影響
  21. 7.高血圧・動脈硬化の薬物治療
  22. 高血圧の降圧薬選択
  23. 閉塞性動脈硬化症(ASO)と間欠性跛行
  24. ドキソルビシンによる心毒性
  25. 8.国試頻出まとめ
  26. 9.国試過去問チェック

💊 心不全の治療薬

循環器領域は国試で毎年多数出題されます。特にACE阻害薬との禁忌カルペリチドは必須知識です。


🚫 ACE阻害薬との併用禁忌:サクビトリルバルサルタン

サクビトリルバルサルタン(エンレスト)の特徴

項目 内容
分類 ARNI(アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬)
成分 サクビトリル(ネプリライシン阻害)+バルサルタン(ARB)の合剤
適応 慢性心不全(HFrEF)
ACE阻害薬との併用 禁忌

なぜACE阻害薬と禁忌なのか

薬剤 ブラジキニンへの影響
ACE阻害薬 ACEによるブラジキニン分解↓ → 蓄積
サクビトリル ネプリライシン阻害 → ブラジキニン分解↓ → 蓄積
両者の併用 ブラジキニン過剰蓄積血管神経性浮腫(生命に関わる)
ACE阻害薬 → ブラジキニン分解↓ → ブラジキニン蓄積
サクビトリル → ネプリライシン阻害 → ブラジキニン分解↓ → ブラジキニン蓄積

両方使うと → ブラジキニンが過剰蓄積 → 血管神経性浮腫(生命に関わる!)

⚠️ ACE阻害薬をARNIに切り替える場合は36時間以上の間隔を空ける

心不全治療薬の比較

薬剤 分類 主な作用 ACE阻害薬との併用
サクビトリルバルサルタン ARNI 血管拡張・利尿 禁忌
アゾセミド ループ利尿薬 利尿 問題なし
イバブラジン HCN阻害薬 心拍数低下 問題なし
カルベジロール αβ遮断薬 心拍数・後負荷低下 問題なし
ダパグリフロジン SGLT2阻害薬 利尿・心保護 問題なし

LDLアフェレシス(デキストラン硫酸法)との禁忌

デキストラン硫酸固定化セルロース吸着器
    ↓ 血液が接触
接触系活性化 → ブラジキニン産生↑

ACE阻害薬(エナラプリル等)
    ↓
ブラジキニンの分解↓(ACEはブラジキニンも分解する)

    ↓ 合わさると
ブラジキニン過剰蓄積 → ショック・顔面紅潮・低血圧(アナフィラキシー様反応)

⚠️ ACE阻害薬 + デキストラン硫酸アフェレシス = 禁忌(ARB・Ca拮抗薬は問題なし)


🏥 急性心不全治療薬:カルペリチド

カルペリチド(ハンプ)の特徴

項目 内容
正体 ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)遺伝子組換え体
投与経路 注射(静脈内)
作用 血管拡張(前後負荷軽減)+腎臓でNa排泄促進(利尿)+アルドステロン分泌抑制
適応 急性心不全の症状改善
カルペリチド(BNP)
    ↓ グアニル酸シクラーゼ受容体に結合
cGMP増加
    ↓
① 血管平滑筋弛緩 → 血管拡張(前負荷・後負荷軽減)
② 腎臓でNa排泄促進 → 利尿
③ アルドステロン分泌抑制
    ↓
心臓への負荷が減少 → 心不全症状改善

急性心不全治療薬の比較

薬剤 分類 主な作用
カルペリチド 組換えBNP 血管拡張+利尿(cGMP↑)
コルホルシンダロパート アデニル酸シクラーゼ活性化薬 強心(cAMP↑)
トルバプタン バソプレシンV₂受容体拮抗薬 水利尿(電解質非依存)
ドパミン カテコールアミン 強心・昇圧

「カルペリチド = 組換えBNP = 血管拡張+利尿 = 急性心不全」

心不全と神経体液性因子

因子 変化 役割
BNP / NT-proBNP ↑亢進 心室壁ストレス→利尿・血管拡張(代償)。重症度マーカー
ANP ↑亢進 心房壁ストレス→利尿(代償)
レニン・アルドステロン ↑亢進 Na・水貯留→心負荷増大(悪化因子)
交感神経(NA) ↑亢進 心拍数↑・末梢血管抵抗↑(急性代償→慢性で悪化)

⚠️ 急性左心不全では仰臥位(背臥位)で呼吸困難が悪化する(起座呼吸) 仰臥位→静脈還流増加→肺うっ血悪化


🫀 狭心症・急性冠症候群の治療

労作性狭心症 vs 急性冠症候群(ACS)の比較

労作性狭心症(安定型) 急性冠症候群(ACS)
病態 冠動脈の器質的狭窄(アテローム性動脈硬化) 斑の破裂→血栓形成→急性虚血
症状 労作時の胸部圧迫感→安静3〜4分で消失 安静時・新規発症・増悪・持続する胸痛
トロポニン・CK 正常 上昇
治療 薬物療法・計画的PCI 緊急PCI・DAPT(アスピリン+P2Y₁₂阻害薬)

⚠️ 安定狭心症では心筋壊死はなく、トロポニン・CKは正常値

冠攣縮性狭心症の特徴

項目 内容
発生機序 冠動脈の一過性攣縮(スパズム)→ 一過性虚血
好発時間 夜間〜早朝(安静時)
心筋壊死 なし(虚血は一過性)
心電図 非発作時は正常。発作時にST上昇
第一選択薬 硝酸薬・カルシウム拮抗薬
β遮断薬 冠攣縮を増悪させる可能性あり(禁忌)

急性心筋梗塞の初期治療

治療 薬剤・処置
抗血小板療法(DAPT) アスピリン+P2Y₁₂阻害薬(クロピドグレル・チカグレロル)
血管再開通 緊急PCI(主流)/ tPA(アルテプラーゼ)
硝酸薬 ニトログリセリン→血管拡張・症状緩和
抗凝固薬 ヘパリン→血栓進展抑制
鎮痛 モルヒネ→疼痛緩和・前負荷軽減

心疾患合併高血圧の管理目標

管理項目 目標値
血圧(心疾患合併高血圧) 診察室血圧 130/80 mmHg未満
LDL-C(冠動脈疾患・二次予防) 70 mg/dL未満
LDL-C(一次予防・高リスク) 120 mg/dL未満

⚡️ 不整脈と心電図

主要な不整脈症候群の比較

疾患 特徴 心電図所見
WPW症候群 副伝導路(ケント束)による心室早期興奮 δ波+PR間隔短縮
Brugada症候群 右脚ブロック型+ST上昇→心室細動 特異的なST変化
QT延長症候群 QT延長→TdP→心室細動 QT間隔延長
Adams-Stokes症候群 高度徐脈・心停止→失神
洞不全症候群 洞結節機能不全→徐脈 洞停止・洞房ブロック

WPW症候群 = 副伝導路(ケント束)= δ波 = 心室早期興奮

QT延長をきたす代表的薬剤

薬効分類 代表薬
抗不整脈薬(クラスIa) キニジン・プロカインアミド・ジソピラミド
抗不整脈薬(クラスIII) アミオダロン・ソタロール
抗菌薬 マクロライド系(エリスロマイシン)・ニューキノロン系
抗精神病薬 ハロペリドール・クロルプロマジン

⚠️ QT延長→R on T現象→多形性心室頻拍(Torsades de Pointes, TdP)→心室細動 リスク因子:低カリウム血症・低マグネシウム血症・徐脈・女性


💧 利尿薬と電解質

利尿薬の作用部位と電解質への影響

薬剤 作用部位 Na K 特徴
フロセミド(ループ利尿薬) ヘンレ上行脚 強力利尿。低K血症注意
スピロノラクトン(K保持性) 集合管(アルドステロン拮抗) 高K血症注意
トルバプタン(水利尿薬) 集合管V₂受容体拮抗 変化なし 水のみ排泄。高Na血症に禁忌
HCTZ(サイアザイド系) 遠位尿細管 低K・低Na・高Ca血症

⚠️ トルバプタン → 高ナトリウム血症の患者には禁忌(さらにNa↑するため)


🩺 高血圧・動脈硬化の薬物治療

高血圧の降圧薬選択

推奨 薬剤の組み合わせ
1剤 Ca拮抗薬 or ARB/ACE阻害薬 or サイアザイド系利尿薬のいずれか
2剤 Ca拮抗薬+ARB/ACE阻害薬(最推奨)
3剤 上記+サイアザイド系利尿薬
追加 α₁遮断薬・β遮断薬・スピロノラクトンなど

⚠️ ARBとACE阻害薬の併用(二重RAAS遮断)は腎機能悪化・高K血症リスクがあり推奨されない 降圧薬は単剤・低用量から開始し、効果不十分なら増量または他クラスを追加

閉塞性動脈硬化症(ASO)と間欠性跛行

項目 内容
病態 下肢動脈硬化・血流障害
症状 歩行中に下肢の疼痛・しびれ→休息で回復(間欠性跛行
第一選択薬 シロスタゾール(PDE3阻害→cAMP↑→血小板凝集抑制・血管拡張)
シロスタゾール禁忌 うっ血性心不全
重症虚血肢 アルプロスタジル(PGE₁)注射

ドキソルビシンによる心毒性

薬剤 分類 心毒性のメカニズム
ドキソルビシン アントラサイクリン系抗がん薬 活性酸素産生→心筋細胞の直接壊死→拡張型心筋症→心不全
トラスツズマブ 抗HER2抗体 心機能低下(可逆性)
フルオロウラシル 代謝拮抗薬 冠動脈痙攣→狭心症

⚠️ ドキソルビシン = 心筋細胞を直接壊死させる(累積投与量依存性)


📋 国試頻出まとめ

# テーマ 重要ポイント
1 ACE阻害薬+ARNI禁忌 サクビトリルバルサルタン→ブラジキニン過剰蓄積→血管神経性浮腫
2 ARNI切り替え時 ACE阻害薬中止から36時間以上の間隔
3 カルペリチド ヒト組換えBNP = 血管拡張+利尿 = 急性心不全
4 安定狭心症のマーカー トロポニン・CKは正常(ACSと区別)
5 冠攣縮性狭心症 夜間〜早朝に好発。β遮断薬は禁忌。Ca拮抗薬・硝酸薬が第一選択
6 AMI初期治療 **アスピリン+P2Y₁₂阻害薬(DAPT)**を即座に投与
7 WPW症候群 **副伝導路(ケント束)**による心室早期興奮。心電図:δ波+PR短縮
8 QT延長→TdP QT延長→多形性心室頻拍(Torsades de Pointes)
9 トルバプタン禁忌 高ナトリウム血症(水利尿でNaがさらに上昇)
10 ドキソルビシン心毒性 心筋細胞を直接壊死(活性酸素)→累積投与量依存性

📝 国試過去問チェック

第111回 問57(ACE阻害薬との禁忌)

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を服用中の患者に投与禁忌なのはどれか。1つ選べ。

  1. アゾセミド
  2. イバブラジン
  3. カルベジロール
  4. サクビトリルバルサルタン
  5. ダパグリフロジン
解答と解説を見る

正答:4

4✅ **サクビトリルバルサルタン(ARNI)はネプリライシン阻害によりブラジキニンの分解を抑制する。ACE阻害薬も同様にブラジキニン分解を抑制するため、両者の併用でブラジキニンが過剰蓄積し血管神経性浮腫(アンジオエデマ)**が生じるリスクが高まり禁忌。1❌ アゾセミド(ループ利尿薬)→ 問題なし。2❌ イバブラジン(HCN阻害薬)→ 問題なし。3❌ カルベジロール(αβ遮断薬)→ 問題なし。5❌ ダパグリフロジン(SGLT2阻害薬)→ 問題なし。


第110回 問58(WPW症候群)

心房と心室を直接連絡する副伝導路により、心室の早期興奮が生じるのはどれか。1つ選べ。

  1. Adams-Stokes症候群
  2. Brugada症候群
  3. QT延長症候群
  4. WPW症候群
  5. 洞不全症候群
解答と解説を見る

正答:4

4✅ WPW症候群では正常伝導路(房室結節)以外にケント束(副伝導路)が存在し、心房の興奮が直接心室の一部に伝わることで心室が早期興奮する。心電図ではδ波(デルタ波)・短いPR間隔が特徴的。1❌ Adams-Stokes症候群 → 高度徐脈・心停止による失神。2❌ Brugada症候群 → 右脚ブロック型+ST上昇→心室細動。3❌ QT延長症候群 → QT延長→TdP→心室細動(副伝導路は無関係)。5❌ 洞不全症候群 → 洞結節の機能不全→徐脈。


第109回 問61(QT延長と不整脈)

心電図上でQT間隔の延長により生じやすくなる不整脈はどれか。1つ選べ。

  1. 洞停止
  2. 洞房ブロック
  3. 心房細動
  4. 発作性上室頻拍
  5. 多形性心室頻拍
解答と解説を見る

正答:5

5✅ 多形性心室頻拍(Torsades de Pointes, TdP):QT延長→心室の再分極異常→R on T現象→QRS波形が変化しながら200〜250/分の心室頻拍が生じる。心室細動に移行しうる危険な不整脈。1・2❌ 洞停止・洞房ブロック → 洞結節の機能不全によるもの。QT延長とは無関係。3❌ 心房細動 → 心房の異常興奮。QT延長とは無関係。4❌ 発作性上室頻拍 → 房室結節リエントリーなど。QT延長とは無関係。

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