生薬とは?基本をおさえる
生薬(しょうやく)とは、天然物(植物・動物・鉱物)を乾燥・加工して薬用に用いるものです。漢方薬はこれらを組み合わせた処方です。
生薬の学習ポイントは3つ:① 成分の種類 ② 薬用部位 ③ 主な薬理作用
成分ごとの特徴
| 成分種類 | 化学的特徴 | 代表的な作用 |
|---|---|---|
| アルカロイド | 窒素を含む塩基性化合物。多くは苦味あり | 強い薬理作用・毒性を持つものが多い |
| 配糖体 | 糖(グルコース等)+アグリコン(活性本体) | 種類により緩下・強心・抗炎症など多様 |
| 精油 | 揮発性の芳香成分。水蒸気蒸留で得る | 芳香・健胃・防腐・局所刺激 |
| タンニン | ポリフェノール。タンパク質と結合 | 収斂・止血・抗菌 |
① アルカロイド系生薬★超頻出
アルカロイドを含む生薬は作用が強く・毒性があることが多いため、国試で非常によく出題されます。
| 生薬名 | 薬用部位 | 主なアルカロイド | 作用・国試ポイント |
|---|---|---|---|
| マオウ(麻黄) | 地上茎 | エフェドリン | 気管支拡張・交感神経興奮。β₂刺激+α刺激 |
| ベラドンナ | 根・葉 | アトロピン・スコポラミン | 抗コリン作用。散瞳・口渇・尿閉 |
| ロートコン | 根 | アトロピン・スコポラミン | ベラドンナと同系統 |
| コルヒカム | 種子・球茎 | コルヒチン | 痛風発作に使用。チューブリン重合阻害 |
⚠️ アルカロイドの見分け方のコツ:「〜イン」「〜アミン」で終わる名前が多い(エフェドリン・アトロピン・モルヒネ・コルヒチン等)
② 配糖体系生薬★最頻出
配糖体は糖+アグリコンの構造。体内で加水分解されてアグリコンが活性本体として働きます。
強心配糖体(ジギタリス系)★頻出
| 生薬名 | 薬用部位 | 主な成分 | 国試ポイント |
|---|---|---|---|
| ジギタリス | 葉 | ジゴキシン・ジギトキシン | Na⁺/K⁺-ATPase阻害→強心。安全域が狭い(TDM必須) |
ジギタリス中毒:悪心・嘔吐・徐脈・黄緑色視(黄視症)。血中濃度管理が必須!
その他の重要な配糖体系生薬
| 生薬名 | 薬用部位 | 主な成分 | 作用 |
|---|---|---|---|
| カンゾウ(甘草) | 根・根茎 | グリチルリチン酸(サポニン配糖体) | 抗炎症・去痰・甘味料。多くの漢方に配合 |
| ニンジン(人参) | 根 | ジンセノサイド(サポニン配糖体) | 強壮・抗疲労。補中益気湯など |
| シャクヤク(芍薬) | 根 | パエオニフロリン(配糖体) | 鎮痙・鎮痛。芍薬甘草湯 |
| ゲンチアナ(竜胆) | 根・根茎 | ゲンチオピクリン(苦味配糖体) | 苦味健胃・食欲増進 |
③ 精油系生薬・タンニン系生薬
精油系生薬
| 生薬名 | 薬用部位 | 主な成分 | 作用 |
|---|---|---|---|
| ハッカ(薄荷) | 地上部 | l-メントール | 清涼感・局所刺激・健胃 |
| ケイヒ(桂皮) | 樹皮 | 桂皮アルデヒド | 健胃・発汗・体を温める |
| ショウキョウ(生姜) | 根茎 | ジンゲロール・ショウガオール | 健胃・鎮吐・体を温める |
| ウイキョウ(茴香) | 果実 | アネトール | 健胃・駆風・去痰 |
| チョウジ(丁子) | 花蕾 | オイゲノール | 健胃・局所麻酔(歯科用) |
タンニン系生薬
| 生薬名 | 薬用部位 | 主な成分 | 作用 |
|---|---|---|---|
| フシ(五倍子) | 虫嚢 | タンニン酸 | 収斂・止血・下痢止め |
| チャ(茶) | 葉 | カテキン(タンニン) | 収斂・抗菌・カフェイン含有 |
| アセンヤク | 枝葉エキス | カテキン | 収斂・止血 |
④ 薬用部位と主な生薬一覧
⑤ 国試頻出の漢方処方と配合生薬
漢方処方の国試問題では「この生薬が含まれる処方はどれか」という形式が多く出ます。
| 漢方処方名 | 特徴的な配合生薬 | 主な適応 |
|---|---|---|
| 葛根湯(かっこんとう) | カッコン・マオウ | かぜの初期(汗なし)・肩こり |
| 麻黄湯(まおうとう) | マオウ・キョウニン | かぜ(強い悪寒)・小児喘息 |
| 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) | シャクヤク+カンゾウのみ | 急性の筋けいれん・こむら返り |
| 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう) | ダイオウ・カンゾウ | 便秘 |
| 六君子湯(りっくんしとう) | ニンジン・ブクリョウ・ビャクジュツ | 胃腸虚弱・食欲不振 |
| 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | ニンジン・カンゾウ・オウギ | 疲労倦怠・食欲不振 |
| 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん) | ダイオウ・マオウ含む18味 | 肥満・高血圧・便秘 |
| 桃核承気湯(とうかくじょうきとう) | ダイオウ・ケイヒ・モモ種子 | 月経不順・便秘(駆瘀血) |
カンゾウ(甘草)は非常に多くの処方に配合されています。偽アルドステロン症(低K・高血圧・浮腫)の副作用に注意!
⑦ 全生薬一覧表(82種)
国試では特に薬用部位・主成分(成分の種類)・薬効の組み合わせが問われます。
| 生薬名 | 薬用部位 | 主成分 | 薬効 |
|---|---|---|---|
| アヘン | 未熟果実の乳液 | イソキノリンアルカロイド(モルヒネ、コデインノスカピン、パパベリン | 鎮痛、鎮、鎮咳 |
| インチンコウ | 頭花 | クロモン類、クマリン類 | 利胆、利尿、消炎 |
| ウイキョウ | 果実 | フェニルプロパノイド (アネトール | 芳香性健胃 |
| ウコン | 根茎 | 黄色色素 (クルクミン | 芳香性健胃、利胆 |
| エイジツ | 偽果、果実 | フラボノイド配糖体 | 緩下 |
| オウギ | 根 | イソフラボン、サポニン | 強壮、利尿、血圧降下 |
| オウゴン | 根 | フラボノイド配糖体 (バイカリン )、フラボノイド (バイカレイン | 解熱、抗炎症 |
| オウバク | 樹皮 | イソキノリンアルカロイド ( ベルベリン | 苦味健胃、止、整腸 |
| オウレン | 根茎 | イソキノリンアルカロイド ( ベルベリン | 苦味健胃、止瀉 |
| オンジ | 根、根皮 | トリテルペンサポニン (オンジサポニン | 去、強壮、鎮静 |
| カッコン | 根 | デンプン、イソフラボン配糖体 (プエラリン )、イソフラボノイド(ダイゼイン、ゲニステイン | 解熱、発汗、鎮痛 |
| カンキョウ | 根茎 | 辛味成分 ([ 6 ] - ショーガオール | 芳香性健胃 |
| カンゾウ | 根、ストロン | トリテルペンサポニン (グリチルリチン酸 | 矯味、鎮痛、鎮咳、去痰 |
| キキョウ | 根 | トリテルペンサポニン (プラチコジン | 鎮咳、去、排膿 |
| キジツ | 未熟果実 | モノテルペン (d-リモネンフラボノイド配糖体(ヘスペリジン | 芳香性苦味健胃、下 |
| キョウニン | 種子 | 青酸配糖体 (アミグダリン | 鎮咳、去痰 |
| ケイヒ | 樹皮 | フェニルプロパノイド (シンナムアルデヒド | 芳香性健胃、解熱 |
| ケジギタリス | 葉 | 強心配糖体 (ジゴキシン、ラナトシドC 、デスラノシド | 強心、利尿 |
| ケツメイシ | 種子 | アントラキノン類 (エモジン | 緩下、整腸、利尿 |
| ゲンチアナ | 根、根茎 | セコイリドイド配糖体 (ゲンチオピクロシド | 苦味健胃 |
| ゲンノショウコ | 地上部 | 加水分解型タンニン (ゲラニイン | 止、整腸 |
| コウジン | 根 | トリテルペンサポニン (ギンセノシド類 | 強壮、健胃 |
| コウボク | 樹皮 | セスキテルペノイド (オイデスモール | 芳香性健胃、鎮痛、鎮痛 |
| コカヨウ | 葉 | トロパンアルカロイド (コカイン | 局所麻酔 |
| ゴオウ | 胆のう中に生じた結石 | 色素 ( ビリルビン )、胆汁酸 (デオキシコール酸、コール酸 | 強心、鎮静、解熱 |
| ゴシュユ | 果実 | インドールアルカロイド( エボジアミン | 健胃、鎮痛、冷え性の改善 |
| ゴミシ | 果実 | リグナン (シザンドリン | 鎮咳、去痰 |
| サイコ | 根 | トリテルペノイド配糖体 (サイコサポニン | 解熱、鎮痛、消炎 |
| サイシン | 根、根茎 | フェニルプロパノイド (メチルオイゲノール | 鎮咳、去、解熱、鎮痛 |
| サフラン | 柱頭 | カロテノイド、苦味配糖体 | 婦人薬 |
| サンシシ | 果実 | イリドイド配糖体 (ゲニポシド | 止血、利胆、鎮痛、消炎 |
| サンショウ | 果皮 | 辛味成分 (サンショオール | 芳香性辛味健胃、整腸 |
| シャクヤク | 根 | モノテルペン配糖体 (ペオニフロリン) 、タンニン | 鎮痛、鎮、婦人薬 |
| シャゼンシ | 種子 | イリドイド配糖体 | 消炎、利尿、止、鎮咳 |
| ショウキョウ | 根茎 | 辛味成分 ([ 6 ] -ギンゲロール | 芳香性健胃、矯味、鎮嘔 |
| シンイ | つぼみ | リモネン、アルカロイド( コクラウリン | 鎮痛、鎮静 |
| ジオウ | 根 | イリドイド配糖体 | 強壮、補血、解熱 |
| ジギタリス | 葉 | 強心配糖体 (ジギトキシン | 強心、利尿 |
| ジュウヤク | 地上部 | フラボノイド配糖体 | 利尿、緩下、解毒 |
| セッコウ | なし | 含水硫酸カルシウム | 鎮静、鎮、解熱、抗炎症 |
| セネガ | 根 | トリテルペンサポニン (セネギン | 去痰 |
| センキュウ | 根茎 | フタリド類 (クニジリド | 駆血、婦人薬 |
| センソ | 耳腺の分泌物を集めたもの | 強心性ステロイド (ブファリン | 強心、鎮痛 |
| センナ | 小葉 | アントラキノン類(レイン、エモジンビアントロン配糖体(センノシドAおよびB | 緩下、整腸 |
| センブリ | 全草 | セコイリドイド配糖体 (スウェルチアマリン | 苦味健胃 |
| ソウジュツ | 根茎 | セスキテルペン(β -オイデスモール、ヒネソールポリアセチレン(アトラクチロジン | 利尿、健胃、整腸 |
| タイソウ | 果実 | トリテルペンサポニン (ジジフスサポニン | 強壮、補血、健胃 |
| タクシャ | 塊茎 | トリテルペン類 (アリソール | 利尿、コレステロール低下 |
| ダイオウ | 根茎 | アントラキノン類(レイン、エモジンビアントロン配糖体(センノシドA | 緩下、鎮痛、消炎 |
| チョウジ | つぼみ | フェニルプロパノイド (オイゲノール | 芳香性健胃 |
| チョウトウコウ | とげ | インドールアルカロイド (ヒルスチン | 高血圧の改善、消炎 |
| チョレイ | 菌核 | エルゴステロール、多糖 | 利尿 |
| チンピ | 果皮 | モノテルペン (d-リモネンフラボノイド配糖体(ヘスペリジン | 芳香性健胃、鎮咳、去痰 |
| トウキ | 根 | フタリド類 (リグスチリド | 補血、婦人薬 |
| トウニン | 種子 | 青酸配糖体 (アミグダリン | 駆血、婦人薬、緩下 |
| トウヒ | 果皮 | モノテルペン (d-リモネンフラボノイド配糖体(ナリンギン | 芳香性苦味健胃 |
| トコン | 根、根茎 | イソキノリンアルカロイド (エメチン | 去、催吐 |
| トチュウ | 樹皮 | リグナン | 強壮、鎮痛 |
| ニチニチソウ | 全草 | インドールアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン | 抗腫瘍 (白血球減少、細胞増殖抑制 |
| ニンジン | 根 | トリテルペンサポニン (ギンセノシド類 | 強壮、健胃 |
| ハッカ | 地上部 | モノテルペン ( l-メントール | 芳香性健胃、解熱、鎮痛、抗炎症 |
| ハンゲ | 塊茎 | フェノール類 (ホモゲンチジン酸 | 鎮咳、去、鎮吐 |
| バクモンドウ | 根 | ステロイド配糖体 (オフィオポゴニン | 鎮咳、去痰 |
| ビャクシ | 根 | フロクマリン ( ビャクアンゲリコール | 解熱、鎮痛、解毒、排膿 |
| ビャクジュツ | 根茎 | セスキテルペン (アトラクチロン | 健胃、整腸、利尿 |
| ブクリョウ | 菌核 | 四環性トリテルペン酸 (エブリコ酸) 、エルゴステロール | 利尿、抗炎症 |
| ブシ | 塊根 | ジテルペンアルカロイド (アコニチン | 鎮痛、強心、抗炎症 |
| ベラドンナコン | 根 | トロパンアルカロイド(ヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミン | 鎮痛、鎮、副交感神経遮断 |
| ホミカ | 種子 | インドールアルカロイド (ストリキニーネ | 苦味健胃、食欲増進 |
| ボウイ | 茎、根茎 | アルカロイド | 利尿、鎮痛、血圧降下、抗炎症 |
| ボウフウ | 根、根茎 | クマリン、クロモン誘導体 | 解熱、鎮痛 |
| ボタンピ | 根皮 | フェノール類 (ペオノール)、タンニンモノテルペン配糖体(ペオニフロリン | 鎮痛、鎮、婦人薬 |
| ボレイ | 貝殻 | 炭酸カルシウム | 鎮静、利尿、制酸 |
| マオウ | 地上茎 | アルカロイド (エフェドリン | 鎮咳、去、気管支拡張 |
| マクリ | 全藻 | イミノ酸 (α - カイニン酸 | 回虫駆除 |
| モクツウ | 茎 | トリテルペンサポニン (アケボシド | 利尿 |
| ユウタン | 胆汁を乾燥したもの | 胆汁酸 (ウルソデオキシコール酸 | 利胆、消炎 |
| ヨクイニン | 種子 | デンプン、タンパク質 | 鎮痛、消炎、いぼとり、抗肌荒れ |
| リュウコツ | なし | 炭酸カルシウム、リン酸カルシウム | 精神神経用薬、鎮静 |
| リュウタン | 根、根茎 | セコイリドイド配糖体 (ゲンチオピクロシド | 苦味健胃 |
| レンギョウ | 果実 | トリテルペノイド、リグナン類 | 抗菌、胆汁分泌促進 |
| ロートコン | 根、根茎 | トロパンアルカロイド(ヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミン | 鎮痛、鎮、副交感神経遮断 |
繰り返し出る組み合わせ: 同じ薬効(例:去痰)でも成分の種類が異なる(サポニン系 vs アルカロイド系)生薬を区別できるようにしておきましょう。
国試頻出まとめ
絶対に覚える生薬10選
| 生薬 | 成分 | 薬用部位 | 最重要ポイント |
|---|---|---|---|
| マオウ | エフェドリン(アルカロイド) | 地上茎 | 気管支拡張・葛根湯・麻黄湯 |
| ダイオウ | センノシド(アントラキノン配糖体) | 根茎 | 緩下。多くの漢方に配合 |
| センナ | センノシドA・B | 小葉 | 市販便秘薬。妊婦注意 |
| アロエ | バルバロイン(アントラキノン配糖体) | 葉の液汁 | 緩下。妊婦禁忌・子宮収縮 |
| ジギタリス | ジゴキシン(強心配糖体) | 葉 | 強心。安全域狭い・TDM必要 |
| カンゾウ | グリチルリチン酸(サポニン配糖体) | 根・根茎 | 多処方配合。偽アルドステロン症 |
| ベラドンナ | アトロピン(アルカロイド) | 根・葉 | 抗コリン作用。散瞳・口渇 |
| ハッカ | l-メントール(精油) | 地上部 | 清涼感・健胃 |
| ブシ(附子) | アコニチン(アルカロイド) | 塊根 | 強心・鎮痛。猛毒→炮製で毒性減弱 |
禁忌・注意の生薬(国試でよく問われる)
| 注意事項 | 該当生薬 |
|---|---|
| 妊婦禁忌 | アロエ・ダイオウ・センナ・ブシ・ボウイ |
| 中毒・安全域が狭い | ジギタリス・ブシ(アコニチン)・マオウ |
| 偽アルドステロン症 | カンゾウ(グリチルリチン酸)を含む製剤 |
| 麻薬指定 | オピウム(モルヒネ・コデイン)・コカ葉 |
