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DDS(薬物送達システム)【薬剤師国試対策】リポソーム・EPR効果・ADC・LNPを完全攻略

📅 2026年5月13日
📖 この記事でわかること
  • DDS(Drug Delivery System)の3目的(ターゲティング・放出制御・部位特異的送達)を説明できる
  • リポソームの構造(水溶性薬物=内水相、脂溶性薬物=膜中)とPEG化によるステルス効果を理解できる
  • EPR効果の仕組みと受動的ターゲティング・能動的ターゲティングの違いを区別できる
  • ADCの作用機序(結合→内在化→リンカー切断→ペイロード放出)と代表製剤を説明できる
  • 徐放製剤の粉砕禁忌・舌下錠の初回通過効果回避・腸溶製剤の特徴を正しく説明できる
目次
  1. 1.DDSとは
  2. 2.経口DDS・放出制御製剤
  3. 放出制御製剤の種類
  4. 放出制御の機構
  5. 3.注射剤DDSキャリア
  6. リポソーム
  7. その他のキャリア
  8. 4.ターゲティング
  9. パッシブ(受動的)ターゲティング:EPR効果
  10. アクティブ(能動的)ターゲティング
  11. 5.抗体薬物複合体(ADC)
  12. 6.経皮・粘膜DDS
  13. 7.国試頻出まとめ
  14. 8.国試過去問チェック

DDSとは

**DDS(Drug Delivery System:薬物送達システム)**とは、薬物を必要な部位に・必要な量だけ・必要な時間にわたって届ける製剤技術の総称です。

DDSの目的 内容
Targeting(ターゲティング) 目的部位への選択的集積
Controlled release(放出制御) 薬物放出速度・タイミングの制御
Site-specific delivery 副作用の軽減・有効性の向上

経口DDS・放出制御製剤

放出制御製剤の種類

製剤タイプ 仕組み 代表例
徐放性製剤(SR) 薬物放出を遅らせ長時間効果を持続 ニフェジピン徐放錠
腸溶性製剤 胃酸耐性コーティング→小腸で溶解 アスピリン腸溶錠
口腔内崩壊錠(OD錠) 唾液で崩壊→嚥下困難者に有用(初回通過効果あり) 抗精神病薬など
舌下錠・バッカル錠 口腔粘膜吸収→初回通過効果を回避 ニトログリセリン舌下錠

放出制御の機構

機構 構造
マトリックス型 薬物をポリマー基剤に均一分散→拡散・浸食で放出
リザーバー型(膜制御型) 薬物コアを速度制御膜でコーティング→0次放出

徐放製剤・腸溶製剤は粉砕・半割禁忌 放出制御が破綻し過剰放出→中毒リスク。粉砕可能かは薬剤師が必ず確認する


🧬 注射剤DDSキャリア

リポソーム

リン脂質二重膜からなる球状小胞体(粒子径100〜200 nm)。

部位 封入できる薬物
内水相(コア) 水溶性薬物
脂質二重膜中 脂溶性薬物
代表製剤 薬物 適応
ドキシル® ドキソルビシン(PEG化リポソーム) がん化学療法後に増悪した卵巣癌、エイズ関連カポジ肉腫
アムビゾーム® アムホテリシンB 深在性真菌症

PEG化(ステルス化)のポイント 通常リポソーム→マクロファージに貪食→短い半減期。PEG修飾→免疫系を回避(ステルス効果)→血中循環時間↑→EPR効果による腫瘍集積↑

その他のキャリア

キャリア 特徴
高分子ミセル 両親媒性ブロック共重合体が自己集合。疎水性薬物を内包
高分子ナノ粒子 PLGA等の生分解性ポリマー。タンパク質・核酸も封入可
LNP(脂質ナノ粒子) イオン化脂質・リン脂質・コレステロール・PEG化脂質の4成分。mRNAワクチンのキャリア
デンドリマー 樹状高分子。表面に多数の官能基→薬物・標的分子を修飾

ターゲティング

パッシブ(受動的)ターゲティング:EPR効果

正常血管 腫瘍血管
内皮細胞間隙 密(〜8 nm) 大きい(200〜800 nm)
高分子の通過 通過しにくい 漏出しやすい
リンパ管 正常機能 未発達→薬物が滞留

EPR効果(Enhanced Permeability and Retention effect) 腫瘍血管の高透過性+リンパ管未発達による滞留 → 粒子径100〜200 nmのキャリアが腫瘍に自然集積。パッシブターゲティングの理論的根拠

アクティブ(能動的)ターゲティング

キャリア表面にリガンドを修飾し、標的細胞の受容体に特異的結合。

リガンド 標的受容体 対象
抗体(IgG) 腫瘍抗原 がん細胞
葉酸 葉酸受容体(腫瘍に過剰発現) 卵巣がんなど
糖鎖(ガラクトース) アシアロ糖タンパク受容体(レクチン) 肝細胞
トランスフェリン トランスフェリン受容体 脳・腫瘍

「レクチンによる能動的ターゲティング → 糖鎖修飾」(PEG修飾は受動的ターゲティング)


抗体薬物複合体(ADC)

ADC(Antibody-Drug Conjugate):抗体+リンカー+細胞毒性薬(ペイロード)の複合体。

作用機序:

  1. 抗体が腫瘍抗原に特異的結合
  2. エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれる
  3. リソソーム内でリンカーが切断
  4. ペイロード(細胞毒性薬)が放出 → DNA傷害・細胞死
ADC製剤 標的抗原 適応
トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1) HER2 HER2陽性乳がん
トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd) HER2 HER2陽性乳がん・胃がん
ブレンツキシマブ ベドチン CD30 ホジキンリンパ腫
イノツズマブ オゾガマイシン CD22 急性リンパ性白血病

🩹 経皮・粘膜DDS

代表薬 製剤 適応
ニトログリセリン テープ剤 狭心症予防
フェンタニル パッチ剤 がん疼痛・慢性疼痛
ツロブテロール テープ剤 気管支喘息(小児に多用)
ニコチン パッチ剤 禁煙補助
リバスチグミン パッチ剤 アルツハイマー型認知症

経皮吸収製剤のメリット:初回通過効果を回避・長時間の安定した血中濃度・貼り替えで中止が容易


国試頻出まとめ

# テーマ 重要ポイント
1 EPR効果 腫瘍血管の高透過性+リンパ管未発達による滞留。受動的ターゲティングの根拠
2 PEG化(ステルス化) 免疫回避→血中循環時間↑。代表:ドキシル®(PEG化リポソーム)
3 リポソームへの薬物封入 水溶性→内水相脂溶性→脂質二重膜
4 能動的ターゲティング リガンド修飾で受容体に特異的結合。レクチン認識には糖鎖修飾
5 ADCの機序 結合→エンドサイトーシス→リソソームでリンカー切断→ペイロード放出
6 徐放製剤の禁忌 粉砕・半割禁忌。放出制御が破綻→過剰放出→中毒
7 舌下錠の特徴 口腔粘膜吸収→初回通過効果回避。代表:ニトログリセリン
8 LNPの組成 イオン化脂質・リン脂質・コレステロール・PEG化脂質の4成分
9 腸溶製剤 胃酸耐性コーティング→小腸で溶解。NSAIDs胃粘膜保護・不安定薬物の保護
10 受動的 vs 能動的 受動的=EPR効果・PEG化能動的=抗体・糖鎖・葉酸などリガンド修飾

📝 国試過去問チェック

第111回 問55(受動的ターゲティング製剤)

受動的ターゲティングを目的に臨床で用いられている製剤はどれか。1つ選べ。

  1. 自己乳化型マイクロエマルション製剤
  2. マイクロニードル製剤
  3. シクロデキストリン包接体製剤
  4. ポリエチレングリコール修飾リポソーム製剤
  5. 生分解性高分子マイクロカプセル型製剤
解答と解説を見る

正答:4

1❌ 自己乳化型マイクロエマルション:難溶性薬物の溶解性改善(ターゲティングではない)

2❌ マイクロニードル製剤:皮膚透過促進(ターゲティングではない)

3❌ シクロデキストリン包接体:溶解性・安定性向上(ターゲティングではない)

4✅ PEG修飾リポソーム(ドキシル®):PEG鎖による長循環化(ステルス効果)→腫瘍血管のEPR効果で受動的にがん組織に集積。臨床で使われている受動的ターゲティング製剤の代表

5❌ 生分解性高分子マイクロカプセル:放出制御が主目的(受動的ターゲティングとは異なる)


第110回 問55(レクチン認識による能動的ターゲティング)

レクチンによる認識機構を介した能動的ターゲティングのための修飾基として用いられるのはどれか。1つ選べ。

  1. 糖鎖
  2. ポリペプチド
  3. 長鎖不飽和脂肪酸
  4. オリゴヌクレオチド
  5. ポリエチレングリコール(PEG)
解答と解説を見る

正答:1

1✅ 糖鎖:レクチン(糖結合タンパク質)は特定の糖鎖構造を認識する。製剤表面にガラクトースなどの糖鎖を修飾→肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体(レクチン型受容体)に結合→能動的ターゲティング

2❌ ポリペプチド:抗体・ペプチドリガンドによる能動的ターゲティングはあるがレクチン認識ではない

3❌ 長鎖不飽和脂肪酸:脂質膜の構成成分(ターゲティングリガンドではない)

4❌ オリゴヌクレオチド:核酸医薬の素材(糖鎖認識とは無関係)

5❌ PEG修飾:受動的ターゲティング(ステルス効果による長循環化・EPR効果の利用)


第109回 問55(リポソームへの薬物封入)

リポソームに封入されやすい薬物の組合せとして正しいのはどれか。1つ選べ。

(内水相封入:水溶性薬物 / 脂質二重膜封入:脂溶性薬物)

  1. 内水相:ドキソルビシン(水溶性) 膜中:アムホテリシンB(脂溶性)
  2. 内水相:脂溶性薬物 膜中:水溶性薬物
  3. 内水相・膜中ともに脂溶性薬物のみ封入可能
  4. 内水相・膜中ともに水溶性薬物のみ封入可能
  5. リポソームは薬物を封入できない
解答と解説を見る

正答:1

1✅ リポソームの構造的特徴:内水相(コア)→水溶性薬物(ドキソルビシン等)、脂質二重膜中→脂溶性薬物(アムホテリシンB等)を封入。両方の性質の薬物を1粒子に封入できる点がリポソームの大きなメリット

2❌ 内外が逆。内水相は水性環境なので水溶性薬物が封入される

3❌・4❌ リポソームは水溶性・脂溶性の両方を封入可能

5❌ リポソームは薬物キャリアとして薬物を封入する

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