DDSとは
**DDS(Drug Delivery System:薬物送達システム)**とは、薬物を必要な部位に、必要な量だけ、必要な時間にわたって送り届けるための製剤技術・システムの総称です。
DDSの3つの目的:
① 経口DDS ⭐頻出
放出制御製剤
| 製剤タイプ | 仕組み | 代表例 |
|---|---|---|
| 徐放性製剤(SR) | 薬物放出を遅らせ、長時間効果を持続 | ニフェジピン徐放錠 |
| 腸溶性製剤 | 胃酸に溶けない高分子でコーティング→小腸で溶解 | アスピリン腸溶錠 |
| 口腔内崩壊錠(OD錠) | 唾液で崩壊→嚥下困難者に有用 | 多くの抗精神病薬 |
| バッカル錠・舌下錠 | 口腔粘膜から吸収→初回通過効果を回避 | ニトログリセリン舌下錠⭐ |
放出制御の機構
マトリックス型:薬物をポリマー基剤に均一分散→拡散・浸食で放出
リザーバー型:薬物コアを膜でコーティング→膜を通して一定速度で放出
⭐ 徐放製剤は粉砕・半割禁忌(放出制御が破綻し、過剰放出→中毒リスク)
② 注射剤DDS(キャリア) ⭐超頻出
リポソーム ⭐
リン脂質二重膜からなる球状小胞体。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | リン脂質二重膜(生体膜と類似)→生体親和性高い |
| 内水相 | 水溶性薬物を封入 |
| 膜中 | 脂溶性薬物を封入 |
| 粒子径 | 100〜200 nm程度 |
代表製剤:
- ドキソルビシンリポソーム(ドキシル®):乳がん・卵巣がん(PEG化リポソーム)
- アムホテリシンB リポソーム(アムビゾーム®):深在性真菌症
ナノ粒子・高分子ミセル
| キャリア | 特徴 |
|---|---|
| 高分子ナノ粒子 | PLGAなど生分解性ポリマー使用。タンパク質・核酸も封入可能 |
| 高分子ミセル | 両親媒性ブロック共重合体が自己集合。内部に疎水性薬物を封入 |
| デンドリマー | 樹状構造の高分子。表面に多数の官能基→薬物・標的分子を修飾 |
③ PEG化(ステルス化) ⭐頻出
リポソームや高分子の表面に**PEG(ポリエチレングリコール)**を修飾する技術。
- 通常のリポソーム → マクロファージに認識・貪食 → 血中半減期が短い
- PEG化リポソーム → 免疫系から逃れる(ステルス効果)→ 血中循環時間↑
メリット:
- 血中循環時間の延長(半減期↑)
- 網内系(RES)での取り込み回避
- EPR効果による腫瘍集積↑
⭐ ドキシル®はPEG化リポソームが使われている代表例
④ ターゲティング ⭐超頻出
パッシブターゲティング(受動的ターゲティング)
EPR効果(Enhanced Permeability and Retention effect:高透過性と滞留性効果)
| 正常血管 | 腫瘍血管 | |
|---|---|---|
| 内皮細胞間隙 | 密(〜8 nm) | 大きい(200〜800 nm) |
| 高分子の通過 | 通過しにくい | 漏出しやすい |
| リンパ管 | 正常機能 | 未発達→薬物が滞留 |
→ 粒子径100〜200 nmのキャリアが腫瘍に選択的に集積する
⭐ EPR効果は固形腫瘍に対するナノDDSの理論的根拠
アクティブターゲティング(能動的ターゲティング)
キャリア表面に**リガンド(抗体・葉酸・トランスフェリンなど)**を修飾し、標的細胞の受容体に結合。
| リガンド | 標的受容体 | 対象 |
|---|---|---|
| 抗体(IgG) | 腫瘍抗原 | がん細胞 |
| 葉酸 | 葉酸受容体(腫瘍に過剰発現) | 卵巣がんなど |
| トランスフェリン | トランスフェリン受容体 | 脳・腫瘍 |
| アシアロ糖タンパク | アシアロ糖タンパク受容体 | 肝細胞 |
⑤ 経皮・粘膜DDS ⭐頻出
経皮吸収型製剤(テープ剤・パッチ剤)
| 代表薬 | 適応 |
|---|---|
| ニトログリセリンテープ | 狭心症予防 |
| フェンタニルパッチ | がん疼痛・慢性疼痛 |
| ツロブテロールテープ | 気管支喘息(小児に多用) |
| ニコチンパッチ | 禁煙補助 |
| リバスチグミンパッチ | アルツハイマー型認知症 |
メリット:初回通過効果を回避・長時間の安定した血中濃度・貼り替えで中止が容易
⭐ 経皮吸収を高める因子:角質層の水和↑(密封法ODT)、低分子・脂溶性薬物
吸入製剤
| 製剤タイプ | 特徴 |
|---|---|
| pMDI(加圧式定量噴霧吸入器) | 噴射剤使用。スペーサーで吸入効率↑ |
| DPI(ドライパウダー吸入器) | 吸気力で吸入。噴射剤不要 |
| ネブライザー | 液体を霧化。重症患者・小児に適 |
⑥ 抗体薬物複合体(ADC) ⭐近年頻出
ADC(Antibody-Drug Conjugate):抗体とリンカーを介して強力な細胞毒性薬を結合したもの。
作用機序:
- 抗体が腫瘍抗原に結合
- エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれる
- リソソーム内でリンカーが切断
- ペイロード(細胞毒性薬)が放出→DNA傷害・細胞死
| ADC製剤 | 標的抗原 | 適応 |
|---|---|---|
| トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1) | HER2 | HER2陽性乳がん |
| トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd) | HER2 | HER2陽性乳がん・胃がん |
| ブレンツキシマブ ベドチン | CD30 | ホジキンリンパ腫 |
| イノツズマブ オゾガマイシン | CD22 | 急性リンパ性白血病 |
⑦ 核酸医薬・LNP ⭐近年頻出
siRNA・アンチセンス核酸
| 種類 | 機序 |
|---|---|
| siRNA | mRNAに相補的に結合→RNAi機構によりmRNA分解→タンパク合成阻害 |
| アンチセンス核酸(ASO) | 標的mRNAに結合→翻訳阻害またはRNase Hによるmna分解 |
LNP(脂質ナノ粒子) ⭐
mRNAやsiRNAを細胞内に送達するキャリア。
- イオン化脂質・リン脂質・コレステロール・PEG化脂質の4成分から構成
- コロナウイルスmRNAワクチン(BNT162b2など)で注目
国試頻出まとめ
DDSキャリア比較
| キャリア | 封入薬物 | 特徴 |
|---|---|---|
| リポソーム ⭐ | 水溶性(内水相)・脂溶性(膜中) | 生体親和性高い・PEG化でステルス化 |
| 高分子ミセル | 疎水性薬物 | 両親媒性ブロック共重合体が自己集合 |
| ナノ粒子 | 各種薬物・核酸 | 生分解性ポリマー(PLGA)など |
| LNP ⭐ | mRNA・siRNA | mRNAワクチンに使用 |
| ADC ⭐ | 細胞毒性薬(ペイロード) | 抗体で標的特異性付与 |
必須キーワード
| 用語 | ポイント |
|---|---|
| EPR効果 ⭐ | 腫瘍血管の高透過性と滞留性。パッシブターゲティングの根拠 |
| ステルス化(PEG化) ⭐ | 免疫回避→血中循環時間↑。ドキシル®が代表 |
| 徐放製剤の粉砕禁忌 ⭐ | 放出制御が破綻→過剰放出→中毒リスク |
| 腸溶製剤 ⭐ | 胃酸耐性コーティング→小腸で溶解。NSAIDsの胃粘膜保護 |
| 舌下錠 ⭐ | 口腔粘膜吸収→初回通過効果回避。ニトログリセリンが代表 |
| ADC ⭐ | 抗体+リンカー+ペイロード。T-DM1・T-DXdが頻出 |
| アクティブターゲティング | リガンド修飾で受容体に結合(葉酸・トランスフェリンなど) |
