🧠 アルツハイマー型認知症の病態
アミロイドβ(Aβ)の産生増加・分解低下
↓
Aβがシナプス間隙・神経細胞外に蓄積
↓
老人斑(アミロイド斑)の形成
↓
コリン作動性神経の変性・消失 → ACh産生↓(コリン仮説)
↓
記憶・学習能力の低下
また同時に…
グルタミン酸による興奮毒性 → NMDA受容体の過剰活性化(グルタミン酸仮説)
↓
Ca²⁺の過剰流入 → 神経細胞死
| 病態 | 治療薬の系統 | 代表薬 |
|---|---|---|
| ACh減少(コリン仮説) | コリンエステラーゼ阻害薬 | ドネペジル・リバスチグミン・ガランタミン |
| グルタミン酸過剰(NMDA仮説) | NMDA受容体拮抗薬 | メマンチン |
コリンエステラーゼ阻害薬
コリンエステラーゼ阻害薬の作用フロー:
コリン作動性神経からACh放出
↓
シナプス間隙
↓ 通常はAChE(アセチルコリンエステラーゼ)がAChを分解
↓ 【コリンエステラーゼ阻害薬】がAChEを阻害 → ACh分解を抑制
シナプス間隙のACh濃度↑
↓
M受容体・N受容体が刺激される
↓
記憶・認知機能の改善
3薬の比較:
| 薬名 | 特徴 | 剤形 |
|---|---|---|
| ドネペジル | AChE選択的阻害。全病期(軽度〜重度)に適応 | 錠・OD錠・細粒・ゼリー・貼付剤 |
| リバスチグミン | AChE+BuChE(ブチリルコリンエステラーゼ)を阻害 | 貼付剤のみ |
| ガランタミン | AChE阻害+ニコチン性ACh受容体(nAChR)増感(APL作用) | 錠・OD錠・内服液 |
ガランタミンのAPL作用:nAChRのアロステリック部位に結合してACh感受性を高める二重作用。AChEを阻害しつつnAChRも活性化する。
共通の副作用(コリン作動性):嘔気・嘔吐・食欲不振・下痢・徐脈。消化性潰瘍・気管支喘息・COPD・徐脈には慎重投与。
メマンチン(NMDA受容体拮抗薬)
【病態】
アルツハイマー病でグルタミン酸過剰状態
↓
NMDA型グルタミン酸受容体が持続的に過剰活性化
↓
Ca²⁺の過剰流入 → 神経興奮毒性 → 神経細胞死
【メマンチンの作用】
メマンチン投与
↓
NMDA受容体チャネルを非競合的に遮断(開口状態のチャネルに入り込んで遮断)
↓
Ca²⁺過剰流入を抑制 → 神経保護
↓
認知症の進行抑制・行動心理症状(BPSD)の改善
- 中等度〜重度のアルツハイマー型認知症に適応
- コリンエステラーゼ阻害薬との併用可能(ドネペジルとの配合薬あり)
- 副作用:めまい・便秘・頭痛・傾眠(コリン系の副作用はない)
重篤な腎障害では用量調節が必要(腎排泄型)
アマンタジンとの併用注意(同じくNMDA拮抗作用があり作用増強)
認知症の種類と治療薬の適応
| 認知症の種類 | 特徴 | 治療薬 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 最多(約70%)、記憶障害から始まる | ドネペジル・リバスチグミン・ガランタミン・メマンチン |
| レビー小体型 | パーキンソン症状・幻視を伴う | ドネペジルのみ適応あり |
| 血管性 | 脳血管障害後、段階的悪化 | 根本治療なし(抗血小板薬など) |
| 前頭側頭型(ピック病) | 人格変化・行動障害 | 薬物療法の適応なし |
レビー小体型認知症に使えるのはドネペジルのみ(リバスチグミン・ガランタミンは適応外)
🧬 新規治療薬:レカネマブ
従来の治療薬(対症療法)
↓ AChE阻害 / NMDA遮断
症状の一時的改善のみ(根本原因のAβには作用しない)
【疾患修飾薬:レカネマブ】
レカネマブ(抗Aβプロトフィブリル抗体)
↓
脳内に蓄積したアミロイドβプロトフィブリルに結合
↓
免疫系がAβを除去(マクロファージによる貪食)
↓
老人斑の形成を抑制 → 疾患の進行そのものを遅らせる
- レカネマブ(レケンビ®):2023年承認
- 早期アルツハイマー病(MCI・軽度)に適応
- 副作用:ARIA(アミロイド関連画像異常)— 脳浮腫・微小出血
レカネマブは初の「疾患修飾薬」。従来薬は症状を和らげるだけだが、レカネマブは病気の進行自体を遅らせることを目標とする。
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | ドネペジル:AChE選択的阻害。全病期(軽度〜重度)に適応。レビー小体型認知症にも使える唯一のChE阻害薬 |
| 2 | リバスチグミン:AChE+BuChE二重阻害。剤形は貼付剤のみ(消化器副作用が経口より少ない) |
| 3 | ガランタミン:AChE阻害+APL作用(nAChR増感)の二重作用 |
| 4 | メマンチン:NMDA受容体の非競合的拮抗薬。中等度〜重度に適応。ドネペジルとの併用可能 |
| 5 | メマンチンの副作用:めまい・便秘(コリン系副作用なし)。腎排泄型→腎障害で用量調節 |
| 6 | ChE阻害薬の共通副作用:嘔気・下痢・徐脈(コリン作動性)。消化性潰瘍・喘息・徐脈に慎重 |
| 7 | レビー小体型認知症に適応があるのはドネペジルのみ |
| 8 | レカネマブ:抗Aβプロトフィブリル抗体。疾患修飾薬。早期アルツハイマーに適応。副作用:ARIA |
| 9 | アマンタジン(インフルエンザ薬・抗パーキンソン薬)もNMDA拮抗→メマンチンとの併用注意 |
| 10 | アルツハイマー病の2大仮説:コリン仮説(ACh↓)とグルタミン酸仮説(NMDA過活性化) |
📝 国試過去問チェック
第110回 問176(一般)
アルツハイマー型認知症の治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1. ドネペジルは、中等度〜重度のアルツハイマー型認知症のみに適応がある
2. リバスチグミンは、錠剤・OD錠・内服液など多様な剤形が利用できる
3. ガランタミンは、コリンエステラーゼ阻害作用に加えて、ニコチン性アセチルコリン受容体への増感作用を持つ
4. メマンチンは、GABA-A受容体を遮断することで神経保護作用を示す
5. メマンチンとドネペジルの併用は禁忌である
解答と解説を見る
正解:3
1✗ ドネペジルは軽度〜重度まで全病期に適応(レビー小体型にも使える)。
2✗ リバスチグミンは貼付剤のみ(経口剤は消化器副作用が強いため貼付剤が標準)。
3○ ガランタミンはAChE阻害+nAChR増感(APL作用)の二重作用を持つ。
4✗ メマンチンはNMDA型グルタミン酸受容体の非競合的拮抗薬(GABA-A受容体ではない)。
5✗ メマンチンとドネペジルは併用可能(作用機序が異なる。配合薬も発売されている)。
