🩺 皮膚疾患
🔬 アトピー性皮膚炎
診断基準(日本皮膚科学会)
以下の3項目をすべて満たすことが必要。
| # | 診断基準 |
|---|---|
| 1 | 掻痒(強いかゆみ) |
| 2 | 特徴的な皮疹と分布:左右対称性の湿疹(乳児:顔・体幹、幼小児〜成人:四肢屈曲部) |
| 3 | 慢性・反復性経過(乳児:2か月以上、その他:6か月以上) |
病態・免疫機序
| 因子 | 内容 |
|---|---|
| Th2優位の免疫応答 | IL-4・IL-13・IL-31が主要サイトカイン |
| 皮膚バリア機能障害 | フィラグリン(FLG)遺伝子変異 → 角質層の保湿能低下 → アレルゲン侵入 |
| IgE産生亢進 | 血清総IgE上昇・アレルゲン感作 |
| 掻痒のメカニズム | IL-31 → 神経線維への作用 → 掻痒 |
外用薬(段階的治療)
| 薬剤 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| ステロイド外用薬 | 抗炎症作用・第1選択 | 長期使用で皮膚萎縮・毛細血管拡張 |
| タクロリムス軟膏(プロトピック) | カルシニューリン阻害薬。皮膚萎縮なし | 塗布部位の灼熱感・刺激感。皮膚感染症のある部位には禁忌 |
| デルゴシチニブ軟膏(コレクチム) | JAK阻害薬外用。小児から使用可 | 感染症に注意 |
| ジファミラスト軟膏(モイゼルト) | PDE4阻害薬外用 | 2歳以上で使用可 |
✅ タクロリムスは顔面・頸部に使用可能(ステロイドと異なり皮膚菲薄化を起こさない) ⚠️ タクロリムスは皮膚感染症部位・潰瘍・びらん部位には禁忌
内服薬・生物学的製剤・JAK阻害薬
| 薬剤 | 機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| シクロスポリン | カルシニューリン阻害 → T細胞抑制 | 重症例の短期使用。腎毒性・高血圧に注意 |
| デュピルマブ(デュピクセント) | 抗IL-4Rα抗体(IL-4・IL-13両方阻害) | 中等症〜重症に皮下注射。結膜炎が副作用 |
| トラロキヌマブ | 抗IL-13抗体 | 成人の中等症〜重症 |
| バリシチニブ(オルミエント) | JAK1/2阻害薬 | 内服。感染症・血栓症リスク |
| ウパダシチニブ(リンヴォック) | JAK1選択的阻害薬 | 内服。重症例 |
🩹 褥瘡(床ずれ)の外用薬
褥瘡(床ずれ)の治療は目的別に薬剤を選択することが重要。
| 目的 | 薬剤 | 特徴 |
|---|---|---|
| 壊死組織除去(デブリドマン) | ブロメライン(ブロメライン軟膏) | パイナップル由来のタンパク質分解酵素 |
| 血流改善・肉芽形成 | アルプロスタジルアルファデクス(PGE1) | 血管拡張 |
| 肉芽形成・表皮化促進 | トレチノイントコフェリル・ジメチルイソプロピルアズレン | 血管新生促進 |
| 感染対策・殺菌 | ポビドンヨード・カデキソマーヨウ素 | 殺菌+浸出液吸収 |
| 浸出液吸収 | デキストラノマー | 多量の浸出液に |
✅ ブロメライン = タンパク質分解酵素 → 壊死組織(タンパク質)を選択的に除去
🦷 白癬(皮膚糸状菌症)
白癬の原因はTrichophyton属(皮膚糸状菌)(カンジダではない)。
| 薬剤 | 分類 | 適応 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| テルビナフィン(ラミシール) | アリルアミン系 | 体部・足・爪白癬(内服) | 重篤な肝障害。CYP2D6阻害 |
| イトラコナゾール(イトリゾール) | トリアゾール系 | 体部・足・爪白癬(内服・パルス療法) | 妊婦禁忌。CYP3A4阻害(多数の相互作用) |
| ルリコナゾール(ルリコン) | イミダゾール系 | 体部・足白癬(外用) | 外用のみ |
| エフィナコナゾール(クレナフィン) | トリアゾール系 | 爪白癬(外用) | 爪外用液。爪浸透性高い |
⚠️ 外用薬は症状が消えても4週間以上継続(1週間で中止すると再発) ⚠️ イトラコナゾール → 妊婦禁忌(催奇形性)
🟡 尋常性乾癬
ターンオーバー亢進(正常28日 → 乾癬では4〜5日)による慢性炎症性皮膚疾患。 **境界明瞭な紅斑+銀白色の鱗屑(フケ様)**が特徴。
| 治療 | 薬剤 |
|---|---|
| 外用薬(第1選択の一つ) | 活性型ビタミンD₃外用薬(カルシポトリオール等) |
| 外用薬 | ステロイド外用薬 |
| 光線療法 | PUVA・ナローバンドUVB |
| 生物学的製剤 | 抗TNF-α抗体(アダリムマブ)・抗IL-17抗体(セクキヌマブ)・抗IL-23抗体 |
👁️ 眼科疾患
白内障
水晶体の混濁により視機能が低下する疾患。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点眼薬 | ピレノキシン(カタリン)・グルタチオン(タチオン)→ 進行抑制のみ(混濁は消失しない) |
| 根治 | 手術(水晶体摘出+眼内レンズ挿入) |
| ステロイド性白内障 | ステロイド長期投与 → 後嚢下白内障を誘発 |
⚠️ 「頭蓋骨の打ち抜き像」は多発性骨髄腫の所見(白内障ではない)
緑内障
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| 開放隅角緑内障 | 線維柱帯での房水流出障害。自覚症状少なく視野欠損が徐々に進行(慢性型) |
| 急性閉塞隅角緑内障 | 隅角が急閉塞し眼圧急上昇。急激な眼痛・頭痛・悪心嘔吐・霧視・視力低下 |
| 薬剤 | 機序 |
|---|---|
| ラタノプロスト(プロスタグランジン系) | 房水流出促進(第1選択) |
| チモロール(β遮断薬点眼) | 房水産生抑制 |
| ドルゾラミド(炭酸脱水酵素阻害薬) | 房水産生抑制 |
| ピロカルピン(縮瞳薬) | 閉塞隅角に有効 |
✅ 日本の緑内障の約70%は正常眼圧緑内障(NTG)(眼圧正常でも発症) ⚠️ 緑内障による視野欠損は不可逆的(眼圧を下げても回復しない。進行抑制のみ)
加齢黄斑変性(AMD)
黄斑部の変性により中心視力が低下する疾患。
| 型 | 特徴 | 治療 |
|---|---|---|
| 滲出型(湿性型) | 新生血管の発生 | 抗VEGF療法(ラニビズマブ・アフリベルセプト等)硝子体内注射 |
| 萎縮型(乾性型) | 網膜色素上皮の萎縮 | 有効な薬物療法は限られる |
✅ 喫煙はAMDの主要な危険因子
春季カタル
重症の慢性アレルギー性眼疾患(好酸球・マスト細胞が関与)。主に小児男性に多い。 症状:強い眼の掻痒感・充血・羞明・巨大乳頭(眼瞼結膜)・角膜プラーク
| 薬剤 | 機序 | 役割 |
|---|---|---|
| シクロスポリン点眼液(イケルビス) | カルシニューリン阻害 → T細胞活性化抑制 | 重症春季カタルの第一選択 |
| タクロリムス眼軟膏 | カルシニューリン阻害 | 重症例 |
| 抗アレルギー点眼薬 | ヒスタミンH1受容体遮断 | 軽症の対症療法 |
| ステロイド点眼 | 抗炎症 | 急性増悪期 |
✅ 「シクロスポリン点眼液 → 春季カタル(重症アレルギー性眼疾患)」 ⚠️ エストロゲンではなくT細胞が主役。緑内障・白内障・加齢黄斑変性には使用しない
📋 国試頻出まとめ
| # | テーマ | 重要ポイント |
|---|---|---|
| 1 | アトピー病態 | Th2優位・IL-4/13/31・FLG遺伝子変異(バリア障害) |
| 2 | タクロリムス | 顔面・頸部に使用可。灼熱感。皮膚感染症部位は禁忌 |
| 3 | デュピルマブ | 抗IL-4Rα抗体。副作用は結膜炎 |
| 4 | ブロメライン | タンパク質分解酵素。褥瘡の壊死組織除去 |
| 5 | 白癬の原因菌 | Trichophyton属(カンジダではない) |
| 6 | イトラコナゾール | 妊婦禁忌。CYP3A4阻害 |
| 7 | テルビナフィン | 重篤な肝障害リスク |
| 8 | 白内障点眼薬 | ピレノキシン・グルタチオン → 進行抑制のみ(混濁消失しない) |
| 9 | 緑内障 | 日本の約70%は正常眼圧緑内障。視野欠損は不可逆的 |
| 10 | 春季カタル | シクロスポリン点眼液(イケルビス) → T細胞抑制。重症アレルギー性眼疾患の第一選択 |
📝 国試過去問チェック
第111回 問60(アトピー治療薬・必須)
アトピー性皮膚炎の治療に用いる薬剤はどれか。1つ選べ。
- タクロリムス
- オメプラゾール
- アトルバスタチン
- レボフロキサシン
- アムロジピン
解答と解説を見る
正答:1
1✅ タクロリムスはカルシニューリン阻害薬。アトピー性皮膚炎の外用薬(プロトピック軟膏)として使用される非ステロイド系抗炎症薬。2❌ オメプラゾールはPPI(胃酸分泌抑制)。3❌ アトルバスタチンはスタチン系脂質異常症薬。4❌ レボフロキサシンはニューキノロン系抗菌薬。5❌ アムロジピンはCa拮抗薬(降圧薬)。
第110回 問184(アトピー性皮膚炎の特徴)
アトピー性皮膚炎に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 発症にT細胞は関与しない
- 掻痒、左右対称性の湿疹、慢性反復性の経過が特徴である
- 皮膚感染症のある部位への使用を目的に開発された
- 発症にIgEは関与しない
- タクロリムス外用薬は、塗布部位に灼熱感が生じることがあり、皮膚感染症のある部位への使用は避ける
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正答:2・5
1❌ アトピー性皮膚炎はTh2優位のT細胞性免疫応答が関与する。2✅ アトピー性皮膚炎の3大特徴:掻痒・左右対称性の湿疹・慢性反復性経過。3❌ タクロリムスは皮膚感染症がない部位に使用する薬剤。感染症部位への使用は禁忌。4❌ アトピー性皮膚炎ではIgE産生が亢進し、血清総IgE値が上昇する。5✅ タクロリムス外用薬の副作用は塗布部位の灼熱感・刺激感。皮膚感染症のある部位には禁忌。
第110回 問64(春季カタルとシクロスポリン点眼)
シクロスポリン点眼液が使用される眼疾患はどれか。1つ選べ。
- 白内障
- 春季カタル
- 感染性角膜炎
- 加齢黄斑変性
- 緑内障
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正答:2
2✅ **シクロスポリン点眼液(イケルビス)**は免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬)で、春季カタルの重症アレルギー炎症を抑制するために使用される。1❌ 白内障 → ピレノキシン(進行抑制)。3❌ 感染性角膜炎 → 抗菌薬・抗ウイルス薬(免疫抑制は禁忌)。4❌ 加齢黄斑変性 → アフリベルセプト・ラニビズマブ(抗VEGF薬)。5❌ 緑内障 → ラタノプロスト・チモロールなど。
第109回 問66(褥瘡・壊死組織除去薬)
褥瘡治療に用いる外用薬のうち、壊死組織除去効果を有するのはどれか。1つ選べ。
- アルプロスタジルアルファデクス
- ブロメライン
- ポビドンヨード
- ジメチルイソプロピルアズレン
- トレチノイントコフェリル
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正答:2
1❌ アルプロスタジルアルファデクス(PGE1)は血管拡張・血流改善による肉芽形成促進薬。2✅ ブロメラインはパイナップル由来のタンパク質分解酵素。壊死組織(タンパク質)を選択的に分解・除去(デブリドマン)する。3❌ ポビドンヨードは殺菌消毒薬。4❌ ジメチルイソプロピルアズレンは抗炎症・肉芽形成促進薬。5❌ トレチノイントコフェリルは血管新生・肉芽形成促進薬。
