糖尿病治療薬の大分類
糖尿病(主に2型)の薬は作用機序によって7つに大別されます。
| 分類 | 代表薬 | 主な作用 |
|---|---|---|
| スルホニル尿素薬(SU薬) | グリベンクラミド | SUR結合→K⁺チャネル閉鎖→インスリン分泌↑ |
| グリニド薬 | レパグリニド・ミチグリニド | SUR結合→速効型インスリン分泌↑ |
| DPP-4阻害薬 | シタグリプチン | インクレチン分解抑制→インスリン↑ |
| GLP-1受容体作動薬 | セマグルチド・リラグルチド | GLP-1受容体刺激→インスリン↑・グルカゴン↓ |
| ビグアナイド薬 | メトホルミン | AMPK活性化→肝糖新生↓・末梢インスリン抵抗性改善 |
| チアゾリジン薬 | ピオグリタゾン | PPARγ刺激→インスリン抵抗性改善 |
| SGLT2阻害薬 | エンパグリフロジン | 腎尿細管でのグルコース再吸収↓→尿糖排泄↑ |
| α-グルコシダーゼ阻害薬 | アカルボース・ミグリトール | 糖質の腸管吸収遅延→食後血糖↑抑制 |
各分類の詳細
DPP-4阻害薬(インクレチン関連薬)
**ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)**はGLP-1・GIPを分解する酵素。
→ DPP-4阻害 → インクレチン濃度↑ → 膵β細胞からインスリン分泌↑ & 膵α細胞からグルカゴン分泌↓
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| シタグリプチン | 最初のDPP-4阻害薬 |
| アログリプチン | 腎排泄。腎機能低下時は減量 |
| テネリグリプチン | 1日1回投与 |
ポイント:DPP-4阻害薬は血糖依存的にインスリンを出すため、単独では低血糖リスクが低い
GLP-1受容体作動薬
本来の腸管ホルモンGLP-1の働きを模倣します。
| 薬物 | 投与経路 | 特徴 |
|---|---|---|
| リラグルチド | 皮下注(1日1回) | 体重減少効果・心血管保護 |
| セマグルチド | 皮下注(週1回)または経口 | 最も強い体重減少効果 |
| エキセナチド | 皮下注(週1回持続型あり) | 最初のGLP-1受容体作動薬 |
注意:GLP-1受容体作動薬は「GLP-1受容体を直接刺激」する。DPP-4阻害薬とは別物!
ビグアナイド薬(メトホルミン)
AMP依存性キナーゼ(AMPK)を活性化 → 肝臓での糖新生↓・脂肪酸酸化↑
- 体重増加なし・低血糖リスク低い
- 乳酸アシドーシスに注意(ヨード造影剤使用前後は休薬)
- 腎機能低下・肝障害・過度の飲酒では禁忌
チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)
核内受容体PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)を刺激
→ 脂肪細胞への分化促進 + アディポネクチン産生↑ → インスリン抵抗性↓
- 体重増加・浮腫に注意
- 心不全、膀胱がんには禁忌
SGLT2阻害薬
腎近位尿細管の**ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)**を阻害
→ グルコースの再吸収↓ → 尿中へ排泄 → 血糖↓
| 薬物 | 心血管・腎保護効果 |
|---|---|
| エンパグリフロジン | 心血管死・心不全入院リスク↓ |
| ダパグリフロジン | 心不全・慢性腎臓病の適応あり |
| カナグリフロジン | 腎保護効果 |
注意:尿路感染症・性器感染症・ケトアシドーシスのリスクあり
まとめ:作用機序別クイック一覧
| 薬物 | 作用機序のキーワード |
|---|---|
| グリベンクラミド | SUR結合・K⁺チャネル閉鎖 |
| シタグリプチン | DPP-4阻害・インクレチン↑ |
| セマグルチド | GLP-1受容体直接刺激 |
| メトホルミン | AMPK活性化・肝糖新生↓ |
| ピオグリタゾン | PPARγ刺激・インスリン抵抗性↓ |
| エンパグリフロジン | SGLT2阻害・尿糖排泄↑ |
| アカルボース | α-グルコシダーゼ阻害 |
第111回 国試過去問チェック
問165(第111回 一般問題)
糖尿病治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- レパグリニドは、膵β細胞上のGLP-1受容体を直接刺激することで、インスリン分泌を促進する。
- ミグリトールは、AMPキナーゼを阻害することで、肝臓における糖新生を抑制する。
- セマグルチドは、スルホニル尿素受容体に結合してATP感受性K⁺チャネルを遮断することで、膵β細胞の細胞膜を脱分極させる。
- シタグリプチンは、DPP-4を阻害して血中インクレチン濃度を上昇させることで、インスリン分泌を促進する。
- ピオグリタゾンは、PPARγを刺激して、インスリン抵抗性を改善する。
正答:4・5
解説:
- 1:× レパグリニドはSUR結合→K⁺チャネル閉鎖(GLP-1受容体刺激ではない)
- 2:× ミグリトールはα-グルコシダーゼ阻害(AMPKはメトホルミン)
- 3:× セマグルチドはGLP-1受容体作動薬(SUR結合はSU薬・グリニド薬)
- 4:○ シタグリプチン=DPP-4阻害薬
- 5:○ ピオグリタゾン=PPARγ刺激
試験のコツ:選択肢の説明と薬物名が入れ替わったひっかけが頻出。「セマグルチド=GLP-1受容体作動薬」「レパグリニド=グリニド薬」を確実に区別しましょう!
