🩺 糖尿病治療薬の大分類
| 分類 | 代表薬 | 主な作用 |
|---|---|---|
| スルホニル尿素薬(SU薬) | グリベンクラミド・グリメピリド | SUR結合→KATPチャネル閉鎖→インスリン分泌↑ |
| グリニド薬 | レパグリニド・ミチグリニド | SUR結合→速効型インスリン分泌↑ |
| DPP-4阻害薬 | シタグリプチン | インクレチン分解抑制→インスリン↑ |
| GLP-1受容体作動薬 | セマグルチド・リラグルチド | GLP-1受容体刺激→インスリン↑・グルカゴン↓ |
| ビグアナイド薬 | メトホルミン | AMPK活性化→肝糖新生↓・末梢インスリン抵抗性改善 |
| チアゾリジン薬 | ピオグリタゾン | PPARγ刺激→インスリン抵抗性改善 |
| SGLT2阻害薬 | エンパグリフロジン | 腎尿細管でのグルコース再吸収↓→尿糖排泄↑ |
| α-グルコシダーゼ阻害薬 | アカルボース・ミグリトール・ボグリボース | 糖質の腸管吸収遅延→食後血糖↑抑制 |
| イメグリミン | イメグリミン | ミトコンドリア機能改善→インスリン分泌↑+インスリン抵抗性改善 |
スルホニル尿素薬(SU薬)・グリニド薬
【SU薬・グリニド薬の共通機序】
膵β細胞のSU受容体(SUR)に結合
↓
KATPチャネル(ATP感受性K⁺チャネル)を閉鎖
↓
K⁺流出↓ → 膜脱分極
↓
電位依存性Ca²⁺チャネル開口
↓
細胞内Ca²⁺↑
↓
インスリン分泌↑
血糖非依存的な分泌促進 → 低血糖リスクが高い
腎機能低下で活性代謝物蓄積 → 重篤な低血糖に注意
【グリニド薬の特徴】
SU薬と同じ機序だが作用時間が短い
→ 食直前服用で食後高血糖を選択的に改善
DPP-4阻害薬(インクレチン関連薬)
通常の経路
食事 → 腸管からGLP-1・GIP(インクレチン)分泌
↓
DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)がすぐに分解
↓
インクレチンの作用が短時間しか続かない
【DPP-4阻害薬の作用】
DPP-4を阻害
↓
GLP-1・GIPの分解↓ → インクレチン濃度↑
↓
膵β細胞:グルコース依存的にインスリン分泌↑
膵α細胞:グルカゴン分泌↓
血糖依存的 → 単独では低血糖リスクが低い
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| シタグリプチン | 最初のDPP-4阻害薬 |
| アログリプチン | 腎排泄。腎機能低下時は減量 |
| テネリグリプチン | 1日1回投与 |
| トレラグリプチン | 週1回投与 |
GLP-1受容体作動薬
腸管ホルモンGLP-1の働きを模倣・増強
GLP-1受容体を直接刺激(DPP-4阻害薬とは別物!)
↓
【膵β細胞】グルコース依存的インスリン分泌↑
【膵α細胞】グルカゴン分泌↓
【消化管】胃排出遅延 → 食後血糖上昇↓
【中枢】食欲抑制
↓
血糖低下 + 体重減少 + 心血管保護効果
血糖依存的 → 単独では低血糖リスクが低い 副作用:悪心・嘔吐(投与開始時)
| 薬物 | 投与経路 | 特徴 |
|---|---|---|
| リラグルチド | 皮下注(1日1回) | 体重減少効果・心血管保護 |
| セマグルチド | 皮下注(週1回)または経口 | 最も強い体重減少効果 |
| デュラグルチド | 皮下注(週1回) | 心血管イベント抑制効果 |
| エキセナチド | 皮下注(週1回持続型あり) | 最初のGLP-1受容体作動薬 |
ビグアナイド薬(メトホルミン)
メトホルミン投与
↓
AMPK(AMP依存性プロテインキナーゼ)を活性化
↓
【肝臓】糖新生に関わる酵素を抑制
→ 肝糖新生↓ → 血糖↓
【骨格筋】グルコース取り込み↑
→ 末梢インスリン抵抗性改善
【脂肪組織】脂肪酸酸化↑
体重増加なし(むしろ体重減少) 低血糖リスク低い 乳酸アシドーシスに注意 ヨード造影剤使用前後は休薬 腎機能低下・肝障害・過度の飲酒では禁忌
チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)
ピオグリタゾン投与
↓
核内受容体 PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)を刺激
↓
脂肪細胞への分化促進
アディポネクチン産生↑
↓
筋肉・肝臓のインスリン感受性↑
↓
インスリン抵抗性↓ → 血糖↓
副作用:体重増加・浮腫 禁忌:心不全・膀胱がん
💧 SGLT2阻害薬
通常の腎臓での糖の動き
糸球体でグルコースがろ過
↓
近位尿細管のSGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)で
約90%のグルコースが再吸収
【SGLT2阻害薬の作用】
SGLT2を阻害
↓
グルコースの再吸収↓
↓
尿中へグルコースを排泄↑ → 血糖↓
【追加の効果】
体重減少・血圧低下・心臓・腎臓保護効果
副作用:尿路感染症・性器感染症・ケトアシドーシス
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| エンパグリフロジン | 心血管死・心不全入院リスク↓ |
| ダパグリフロジン | 心不全・慢性腎臓病の適応あり |
| カナグリフロジン | 腎保護効果 |
| ルセオグリフロジン | 同様にSGLT2阻害 |
🍚 α-グルコシダーゼ阻害薬
小腸刷子縁の α-グルコシダーゼ(二糖類加水分解酵素)を阻害
↓
デンプン・二糖類の消化↓
↓
単糖への分解が遅れる
↓
糖の腸管吸収が遅延
↓
食後血糖スパイク(急上昇)を抑制
食後高血糖の改善に特化 副作用:腹部膨満感・放屁・下痢(腸内での未消化糖の発酵によるガス産生)
イメグリミン(新機序)
ミトコンドリアの電子伝達系複合体Iに作用
【作用①】膵β細胞への効果
ミトコンドリア機能改善
↓
ATP産生↑ → KATPチャネル閉鎖
↓
グルコース依存的インスリン分泌↑
【作用②】末梢組織への効果
骨格筋・肝臓のミトコンドリア機能改善
↓
インスリン抵抗性↓
→ 他の糖尿病薬と全く異なる独自の機序(二重の効果)
単独では低血糖リスクが低い(グルコース依存的) 腎機能低下時は減量
📊 作用機序別クイック一覧
| 薬物 | 作用機序のキーワード |
|---|---|
| グリベンクラミド・グリメピリド | SUR結合・KATPチャネル閉鎖(血糖非依存的・低血糖リスク高) |
| レパグリニド・ミチグリニド | SUR結合・速効型(食後高血糖改善) |
| シタグリプチン | DPP-4阻害・インクレチン↑(血糖依存的・低血糖リスク低) |
| セマグルチド | GLP-1受容体直接刺激(体重減少・心血管保護) |
| メトホルミン | AMPK活性化・肝糖新生↓(乳酸アシドーシスに注意) |
| ピオグリタゾン | PPARγ刺激・インスリン抵抗性↓(浮腫・体重増加) |
| エンパグリフロジン | SGLT2阻害・尿糖排泄↑(心・腎保護) |
| アカルボース・ボグリボース | α-グルコシダーゼ阻害・食後血糖↑抑制 |
| イメグリミン | ミトコンドリア機能改善・インスリン分泌↑+抵抗性↓ |
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | SU薬(グリメピリド等):SUR結合→KATPチャネル閉鎖→脱分極→Ca²⁺↑→インスリン↑。血糖非依存的→低血糖リスク高 |
| 2 | DPP-4阻害薬(シタグリプチン等):DPP-4阻害→GLP-1・GIP↑→インスリン↑。血糖依存的→単独では低血糖リスク低 |
| 3 | GLP-1受容体作動薬(セマグルチド等):GLP-1受容体を直接刺激(DPP-4阻害薬とは別物)。体重減少・心血管保護効果あり |
| 4 | メトホルミン:AMPK活性化→肝糖新生↓。乳酸アシドーシスに注意。ヨード造影剤前後は休薬 |
| 5 | ピオグリタゾン:PPARγ刺激→アディポネクチン↑→インスリン抵抗性↓。副作用:浮腫・体重増加 |
| 6 | SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン等):腎近位尿細管SGLT2阻害→尿糖排泄↑。心・腎保護効果。副作用:尿路感染症 |
| 7 | α-グルコシダーゼ阻害薬(ボグリボース等):二糖類消化↓→吸収遅延→食後高血糖の改善に特化 |
| 8 | イメグリミン:ミトコンドリア複合体Iへの作用→①インスリン分泌↑②インスリン抵抗性↓の二重効果(独自の機序) |
| 9 | グリニド薬(レパグリニド等):SU薬と同じKATP閉鎖機序だが短時間作用型。食直前服用で食後高血糖を改善 |
| 10 | ピオグリタゾン=PPARγ(AMPKを直接活性化するのはメトホルミン!混同しないこと) |
📝 国試過去問チェック
第108回 問164(一般問題)
糖尿病治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. ピオグリタゾンは、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)を直接活性化することで、肝臓における糖新生を抑制する
2. デュラグルチドは、膵臓β細胞のGLP-1受容体を刺激することで、グルコースによるインスリン分泌を促進する
3. ボグリボースは、DPP-4を阻害することで、ソルビトールの細胞内への蓄積を抑制する
4. トレラグリプチンは、尿細管のSGLT2を阻害することで、尿中のグルコースの再吸収を抑制する
5. グリメピリドは、SU受容体に結合して、KATPチャネルを遮断することで、インスリン分泌を促進する
解答と解説を見る
正解:2・5
2○ デュラグルチドはGLP-1受容体作動薬 → グルコース依存的インスリン分泌↑。
5○ グリメピリドはSU受容体 → KATPチャネル閉鎖 → 膜脱分極 → Ca²⁺↑ → インスリン分泌↑。
1✗ ピオグリタゾンはAMPKを直接活性化しない。PPARγ(核内受容体)を活性化してインスリン抵抗性を改善する(AMPKを活性化するのはメトホルミン)。
3✗ ボグリボースはDPP-4阻害ではなくα-グルコシダーゼ阻害(ソルビトール蓄積とは無関係)。
4✗ トレラグリプチンはSGLT2阻害ではなくDPP-4阻害薬(週1回投与型)。
第111回 問165(一般問題)
糖尿病治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. レパグリニドは、膵β細胞上のGLP-1受容体を直接刺激することで、インスリン分泌を促進する。
2. ミグリトールは、AMPキナーゼを阻害することで、肝臓における糖新生を抑制する。
3. セマグルチドは、スルホニル尿素受容体に結合してKATPチャネルを遮断することで、膵β細胞の細胞膜を脱分極させる。
4. シタグリプチンは、DPP-4を阻害して血中インクレチン濃度を上昇させることで、インスリン分泌を促進する。
5. ピオグリタゾンは、PPARγを刺激して、インスリン抵抗性を改善する。
解答と解説を見る
正解:4・5
4○ シタグリプチン=DPP-4阻害薬 → インクレチン↑ → インスリン分泌↑。
5○ ピオグリタゾン=PPARγ刺激 → インスリン抵抗性↓。
1✗ レパグリニドはSUR結合→KATPチャネル閉鎖(GLP-1受容体刺激ではない)。
2✗ ミグリトールはα-グルコシダーゼ阻害(AMPKを活性化するのはメトホルミン)。
3✗ セマグルチドはGLP-1受容体作動薬(SUR結合はSU薬・グリニド薬の機序)。
