🩸 脂質異常症の分類と治療目標
| 病態 | 主な異常 | 治療目標 |
|---|---|---|
| 高LDLコレステロール血症 | LDL↑ | スタチン第一選択 |
| 低HDLコレステロール血症 | HDL↓ | 生活習慣改善・フィブラート |
| 高トリグリセリド血症 | TG↑ | フィブラート・ニコチン酸系 |
| 混合型 | LDL↑ + TG↑ | 組み合わせ治療 |
スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
コレステロール合成経路(メバロン酸経路)
アセチルCoA
↓
HMG-CoA(ヒドロキシメチルグルタリルCoA)
↓ HMG-CoA還元酵素(律速酵素)← スタチンが競合阻害
メバロン酸
↓
...
↓
コレステロール
【スタチンの連鎖作用】
HMG-CoA還元酵素を阻害
↓
肝細胞内コレステロール合成↓
↓
フィードバック → 肝細胞のLDL受容体発現↑
↓
血中LDLをより多く取り込む
↓
血清LDL↓↓↓(最強のLDL低下薬)
副作用:横紋筋融解症(CK↑・ミオパチー) CYP3A4阻害薬(シクロスポリン・アゾール系)で筋毒性↑ フィブラート系との併用で横紋筋融解症リスク↑↑
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| アトルバスタチン | 強力・半減期長い(14時間) |
| ロスバスタチン | 最強のLDL低下効果 |
| プラバスタチン | 水溶性・筋障害リスク低い |
| シンバスタチン | プロドラッグ |
ニコチン酸系(ニコモール等)
ニコチン酸受容体(GPR109A)を刺激
↓
Gi(抑制性Gタンパク)→ アデニル酸シクラーゼ阻害
↓
cAMP↓
↓
HSL(ホルモン感受性リパーゼ)不活性化
↓
脂肪組織での脂肪分解↓
↓
遊離脂肪酸(FFA)の血中放出↓
↓
肝臓へのFFA供給↓ → 肝臓でのTG合成↓
【効果】TG↓・HDL↑・LDL↓
副作用:皮膚潮紅(プロスタグランジン媒介)
→ アスピリン前投与で軽減
フィブラート系(PPARα活性化薬)
核内受容体 PPARα(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α)を活性化
↓
【TG低下】
LPL(リポタンパクリパーゼ)遺伝子発現↑
↓
血中TGをVLDL・カイロミクロンから分解↑
↓
血清TG↓↓↓(最強のTG低下薬)
【HDL上昇】
アポA-I・アポA-II産生↑
↓
HDL↑↑
副作用:横紋筋融解症(スタチンとの併用でリスク↑↑)・肝機能障害
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| フェノフィブラート | 最もよく使われる |
| ベザフィブラート | 腎排泄型・腎機能注意 |
エゼチミブ(コレステロール吸収阻害薬)
食事・胆汁由来コレステロール
↓
小腸刷子縁のNPC1L1(Niemann-Pick C1 Like 1)
トランスポーターで吸収
【エゼチミブの作用】
NPC1L1を阻害
↓
小腸でのコレステロール吸収↓
↓
肝臓へのコレステロール供給↓
↓
LDL受容体発現↑ → 血中LDL↓↓
スタチンとの相加効果あり スタチン不耐容例にも有用 副作用が少ない(消化器症状のみ)
PCSK9阻害薬
通常のLDL受容体のサイクル
LDL受容体が血中LDLをとらえて肝細胞内へ取り込む
↓
PCSK9(プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシン9型)が
LDL受容体と結合
↓
LDL受容体をリソソームへ誘導→分解
↓
LDL受容体数↓ → 血中LDL取り込み↓ → LDL↑
【PCSK9阻害薬の作用】
エボロクマブ・アリロクマブ(モノクローナル抗体)が
PCSK9に結合・阻害
↓
LDL受容体がリソソームへ誘導されない
↓
LDL受容体が細胞表面に戻り再利用される
↓
肝細胞表面のLDL受容体数↑↑
↓
血中LDL取り込み↑ → 血清LDL↓↓↓↓
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| エボロクマブ | 完全ヒト型モノクローナル抗体・2週に1回皮下注 |
| アリロクマブ | ヒト化モノクローナル抗体 |
適応:家族性高コレステロール血症・スタチン最大量でも不十分な例
ロミタピド(MTP阻害薬)
MTP(ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質)
→ 小腸・肝臓でVLDL・カイロミクロンの組み立てに必要
【ロミタピドの作用】
MTPを阻害
↓
小腸でのカイロミクロン産生↓
肝臓でのVLDL産生↓
↓
血中LDL・TG↓↓↓↓
副作用:肝毒性・脂肪肝(肝臓でのTG蓄積)・消化器症状
適応:ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)
→ 低脂肪食が必須
📊 薬剤別効果まとめ
| 薬剤 | LDL | TG | HDL | 主な機序 |
|---|---|---|---|---|
| スタチン | ↓↓↓ | ↓ | ↑ | HMG-CoA還元酵素阻害 |
| エゼチミブ | ↓↓ | → | → | NPC1L1阻害 |
| フィブラート | ↓ | ↓↓↓ | ↑↑ | PPARα活性化 |
| ニコチン酸系 | ↓ | ↓↓ | ↑↑ | ニコチン酸受容体刺激→cAMP↓→脂肪分解↓ |
| PCSK9阻害薬 | ↓↓↓↓ | ↓ | ↑ | PCSK9阻害 |
| ロミタピド | ↓↓↓↓ | ↓↓ | → | MTP阻害 |
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | スタチン:HMG-CoA還元酵素(メバロン酸経路の律速酵素)を競合阻害→肝コレステロール↓→LDL受容体↑→LDL↓↓↓ |
| 2 | スタチンの副作用:横紋筋融解症。CYP3A4阻害薬・フィブラート系との併用でリスク↑↑ |
| 3 | エゼチミブ:小腸のNPC1L1阻害→コレステロール吸収↓→LDL↓。スタチンと相加効果 |
| 4 | フィブラート系:PPARα活性化→LPL↑→TG分解↑、アポA-I↑→HDL↑。TG低下効果が最強 |
| 5 | ニコチン酸系(ニコモール):GPR109A刺激→Gi→cAMP↓→HSL不活性化→脂肪分解↓→TG合成↓。副作用:皮膚潮紅 |
| 6 | PCSK9阻害薬(エボロクマブ):PCSK9阻害→LDL受容体の分解↓→LDL受容体数↑→LDL↓↓↓↓ |
| 7 | ロミタピド:MTP阻害→VLDL・カイロミクロン産生↓→LDL↓↓↓↓。適応:HoFH(ホモ接合体家族性高コレステロール血症) |
| 8 | コレスチミド(陰イオン交換樹脂):腸管内で胆汁酸と結合→胆汁酸排泄↑→肝臓でコレステロール→胆汁酸への異化↑→LDL↓ |
| 9 | スタチン+フィブラート:横紋筋融解症リスクが特に高い組み合わせ→原則避ける |
| 10 | MTP阻害薬(ロミタピド)・NPC1L1阻害薬(エゼチミブ)・PCSK9阻害薬・HMG-CoA阻害薬はすべて作用部位が異なる |
📝 国試過去問チェック
第110回 問164(一般問題)
脂質異常症治療薬に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. アトルバスタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害して、肝細胞のLDL受容体を増加させる。
2. コレスチミドは、転写因子SREBP-1cの活性を抑制して、トリグリセリドの合成を抑制する。
3. プロブコールは、小腸コレステロールトランスポーターを阻害して、腸管からのコレステロール吸収を抑制する。
4. ベザフィブラートは、MTP(ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質)を阻害して、VLDLの産生を抑制する。
5. ニコモールは、ニコチン酸受容体を刺激し、脂肪組織における脂肪分解を抑制して、肝臓への遊離脂肪酸の動員を減少させる。
解答と解説を見る
正解:1・5
1○ アトルバスタチン(スタチン系)はHMG-CoA還元酵素を阻害→肝細胞内コレステロール合成↓→フィードバックでLDL受容体発現↑→血中LDL取り込み↑→血清LDL↓。
5○ ニコモールはニコチン酸受容体(GPR109A)刺激→Gi→cAMP↓→HSL不活性化→脂肪組織の脂肪分解↓→遊離脂肪酸放出↓→肝TG合成↓。
2✗ コレスチミドは腸管内で胆汁酸と結合して体外排泄↑→胆汁酸の腸肝循環↓→肝臓でのコレステロール→胆汁酸への異化↑→LDL受容体↑(SREBP-1c抑制ではない)。
3✗ プロブコールは肝臓でコレステロール→胆汁酸への異化を促進する(NPC1L1阻害はエゼチミブ)。
4✗ ベザフィブラートはPPARα活性化→LPL活性化→TG分解↑(MTP阻害はロミタピド)。
