脂質異常症の分類と治療目標
| 病態 | 主な異常 | 治療目標 |
|---|---|---|
| 高LDLコレステロール血症 | LDL↑ | スタチン第一選択 |
| 低HDLコレステロール血症 | HDL↓ | 生活習慣改善・フィブラート |
| 高トリグリセリド血症 | TG↑ | フィブラート・ニコチン酸系 |
| 混合型 | LDL↑ + TG↑ | 組み合わせ治療 |
スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
作用:HMG-CoA還元酵素(メバロン酸経路の律速酵素)競合阻害 → コレステロール合成↓
コレステロール合成経路: アセチルCoA → HMG-CoA →(HMG-CoA還元酵素)→ メバロン酸 → ... → コレステロール
スタチンがHMG-CoA還元酵素を競合阻害することで、コレステロール合成が抑制されます。
細胞レベルの効果:
- 肝細胞内コレステロール↓ → LDL受容体発現↑(フィードバック)
- 血中LDL取り込み↑ → 血清LDL↓
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| アトルバスタチン | 強力・半減期長い(14時間) |
| ロスバスタチン | 最強のLDL低下効果 |
| プラバスタチン | 水溶性・筋障害リスク低い |
| シンバスタチン | プロドラッグ |
副作用:
- 横紋筋融解症(最重要!)— ミオパチー、CK上昇
- CYP3A4阻害薬(シクロスポリン、アゾール系抗真菌薬)で筋毒性リスク↑
- 肝機能障害
国試チェック: スタチン + フィブラートの併用 → 横紋筋融解症リスク↑(要注意!)
ニコモール(ニコチン酸誘導体)
作用:脂肪組織のHSL(ホルモン感受性リパーゼ)阻害 → 遊離脂肪酸↓ → 肝臓でのTG合成↓
特徴:
- TG低下効果が強い
- HDL↑(ニコチン酸系の特徴)
- LDL↓
- 副作用:皮膚潮紅(プロスタグランジン媒介)— アスピリン前投与で軽減
- ニコモール(ニコフラノース)、ニセリトロール、ペントキシフィリンなどが含まれる
フィブラート系(PPARα活性化薬)
作用:核内受容体**PPARα(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α)**活性化 → LPL発現↑ → TG分解↑
特徴:
- TG低下効果が最強(スタチンより強い)
- HDL↑(アポA-I・アポA-II産生↑)
- LDL低下効果は弱い
- 適応:高TG血症・低HDL血症
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| フェノフィブラート | 最もよく使われる |
| ベザフィブラート | 腎排泄型・腎機能注意 |
副作用: 横紋筋融解症(スタチンとの併用で↑↑)、肝機能障害
エゼチミブ(コレステロール吸収阻害薬)
作用:小腸刷子縁の**NPC1L1(Niemann-Pick C1 Like 1)**阻害 → コレステロール吸収↓
特徴:
- LDL↓(スタチンとの相加効果)
- スタチン不耐容例に有用
- 副作用少ない(消化器症状のみ)
PCSK9阻害薬(最新のLDL低下療法)
作用:**PCSK9(プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型)**阻害
PCSK9の役割:
- 通常:LDL受容体と結合 → LDL受容体をリソソームに運んで分解
- PCSK9阻害 → LDL受容体の分解が抑制 → 肝細胞表面のLDL受容体数↑ → 血中LDL↓↓
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| エボロクマブ | 完全ヒト型モノクローナル抗体・2週に1回皮下注 |
| アリロクマブ | ヒト化モノクローナル抗体 |
適応: 家族性高コレステロール血症、スタチン最大量でも不十分な例
コレステロール低下薬の比較まとめ
| 薬剤 | LDL | TG | HDL | 主な機序 |
|---|---|---|---|---|
| スタチン | ↓↓↓ | ↓ | ↑ | HMG-CoA還元酵素阻害 |
| エゼチミブ | ↓↓ | → | → | NPC1L1阻害 |
| フィブラート | ↓ | ↓↓↓ | ↑↑ | PPARα活性化 |
| ニコチン酸系 | ↓ | ↓↓ | ↑↑ | HSLリパーゼ阻害 |
| PCSK9阻害薬 | ↓↓↓↓ | ↓ | ↑ | PCSK9阻害 |
第110回 国試過去問チェック
第110回 問164
アトルバスタチンの作用機序として正しいのはどれか。
- HMG-CoA還元酵素阻害 → 正解
- メバロン酸経路を阻害してコレステロール合成を抑制
ニコモールのTG低下機序として正しいのはどれか。
- ホルモン感受性リパーゼ(HSL)阻害 → 脂肪組織からの遊離脂肪酸放出↓ → 肝TG合成↓
