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予防医学・疫学とマススクリーニング

📅 2026年5月19日🔄 更新: 2026年5月22日
📖 この記事でわかること
  • 疾病予防の三段階(一次・二次・三次)を具体例とともに区別できる
  • マススクリーニングの条件と対象疾患(陽性率1位:先天性甲状腺機能低下症)を説明できる
  • 新興感染症・再興感染症の違いと代表例(結核=再興)を正しく区別できる
  • 感染症法の1〜5類分類と代表疾患・報告方式の違いを整理できる
  • 母子感染の経路(経胎盤・経産道・経母乳)と各疾患の対応を正確に覚えられる
目次
  1. 1.疾病予防の三段階
  2. 2.スクリーニング検査
  3. 新生児マススクリーニング
  4. 3.疫学の主要指標
  5. 疫学研究デザイン
  6. 4.感染症の分類
  7. 新興・再興感染症
  8. 感染症法による分類
  9. 5.予防接種
  10. 6.母子感染の経路
  11. 7.性感染症(STI)
  12. 8.国試頻出まとめ
  13. 9.国試過去問チェック

🛡️ 疾病予防の三段階

疾病予防は進行段階に応じて3段階に分類されます。

段階 目的 具体例
一次予防 疾病の発生を防ぐ 予防接種・禁煙教室・健康教育・栄養改善
二次予防 早期発見・早期治療 健康診断・がん検診・スクリーニング検査・献血血液の検査
三次予防 機能回復・再発防止 リハビリテーション・在宅機能訓練・社会復帰支援

三次予防の正体はリハビリ 「三次予防=すでに発症した人に対して機能回復・悪化防止を行うこと」。在宅機能訓練・デイケアなどが該当。

予防接種は一次予防! 予防接種は発症前に行う→一次予防。健康診断・がん検診は発症の早期発見→二次予防。


🔬 スクリーニング検査

良いスクリーニング検査の条件(Wilson & Jungnerの基準):

条件 内容
疾患が重要な健康問題である 頻度が高いか、重篤であること
治療法が確立している 早期治療で予後改善できること
検査法が簡便・安価 大規模実施に向いていること
自然経過が解明されている 潜伏期・発症前期が存在すること

新生児マススクリーニング

生後数日の新生児から採血し、先天性代謝異常・内分泌疾患を早期発見する二次予防です。

疾患 欠損・異常 特徴
先天性甲状腺機能低下症 甲状腺ホルモン産生低下 最も陽性者発見率が高い(約3,000〜4,000人に1人)
先天性副腎過形成症 コルチゾール産生障害 電解質異常・性分化異常
フェニルケトン尿症(PKU) フェニルアラニン水酸化酵素欠損 知的障害・皮膚白色化
メープルシロップ尿症 分岐鎖アミノ酸代謝障害 尿がメープルシロップ臭。治療:分岐鎖アミノ酸制限食
ガラクトース血症 ガラクトース代謝酵素欠損 白内障・肝障害

陽性者発見率が最も高いのは先天性甲状腺機能低下症 2019〜2023年の5年間データで最多。治療:甲状腺ホルモン(レボチロキシン)補充療法


📊 疫学の主要指標

指標 定義 用途
罹患率 一定期間に新たに発症した人数/観察人口 疾病の発生頻度
有病率 ある時点での患者数/観察人口 慢性疾患の負担把握
致命率(致死率) 死亡数/罹患者数 疾病の重篤度
死亡率 死亡数/人口 人口集団の健康指標

有病率 = 罹患率 × 罹患期間(慢性疾患では有病率 > 罹患率)

疫学研究デザイン

研究デザイン 特徴 時間軸
横断的研究(断面研究) ある一時点で疾病の有無と要因を同時に調査 一時点
コホート研究 要因保有集団を将来に向けて追跡・疾病発症を観察 前向き(未来)
症例対照研究 疾病あり(症例)と対照の過去の要因を比較 後ろ向き(過去)
介入研究(RCT) 研究者が介入を加えて効果を検証 前向き

✅ 「一時点」→横断的研究 「将来追跡」→コホート 「過去に遡る」→症例対照


🦠 感染症の分類

新興・再興感染症

分類 定義 代表例
新興感染症 新たに認識された感染症 SARS・MERS・COVID-19・エボラ出血熱・HIV/AIDS
再興感染症 既知だが一度減少した後に再び増加・拡大 結核⭐・マラリア・デング熱・コレラ・ジフテリア

結核は「再興感染症」!SARSは新興感染症

感染症法による分類

分類 特徴 代表例
一類感染症 感染力・重篤性が最も高い。入院措置 エボラ出血熱・ペスト・天然痘・ラッサ熱
二類感染症 感染力・重篤性が高い 結核・SARS・MERS・ポリオ・ジフテリア
三類感染症 特定の職業への就業制限が必要 コレラ・腸チフス・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症
四類感染症 動物・飲食物・物件を介して人に感染 デング熱・マラリア・狂犬病・日本脳炎・Q熱・レジオネラ症
五類感染症 発生動向の把握・情報提供が必要 インフルエンザ・麻疹・風疹・梅毒・クラミジア・COVID-19(2023年5月〜)

「一類=最重症・入院措置」「結核=二類」「デング熱=四類(動物媒介)」を押さえよう!


💉 予防接種

区分 目的 努力義務 対象疾病例
A類疾病 集団予防を主目的 あり ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・麻疹・風疹・HPV等
B類疾病 個人予防を主目的 なし インフルエンザ・高齢者の肺炎球菌

免疫の種類:

種類 内容
人工能動免疫 ワクチン接種で自身の免疫系を刺激して抗体産生
自然能動免疫 感染症に罹患して免疫獲得
人工受動免疫 抗血清・免疫グロブリン製剤の投与
自然受動免疫 母乳・胎盤経由の移行抗体

✅ 予防接種による健康被害 → 「予防接種健康被害救済制度」で救済(医薬品副作用被害救済制度とは別)


🤰 母子感染の経路

疾患 病原体の種類 主な感染経路 結果
風しん ウイルス 経胎盤 先天性風疹症候群(白内障・難聴・心奇形)
梅毒 細菌(スピロヘータ) 経胎盤 先天性梅毒
HIV ウイルス 経胎盤・経産道・経母乳 先天性HIV感染
トキソプラズマ症 原虫(Toxoplasma gondii) 経胎盤 水頭症・脳石灰化・網膜脈絡膜炎
成人T細胞白血病(ATL) ウイルス(HTLV-1) 主に経母乳 成人後に発症
淋菌感染症 細菌(Neisseria gonorrhoeae) 経産道 新生児淋菌性結膜炎
カンジダ症 真菌(Candida属) 経産道 新生児鵞口瘡
B型肝炎 ウイルス 経産道・経母乳 慢性肝炎キャリア
性器クラミジア 細菌(偏性細胞内寄生性) 経産道 新生児結膜炎・肺炎

風しん・トキソプラズマ→経胎盤 / ATL→経母乳 / 淋菌・カンジダ・クラミジア→経産道


🔴 性感染症(STI)

疾患 病原体 母子感染 報告体制
性器クラミジア感染症 Chlamydia trachomatis(細菌) 産道感染 定点報告(五類)
淋菌感染症 Neisseria gonorrhoeae(細菌) 産道感染 定点報告(五類)
梅毒 Treponema pallidum(スピロヘータ) 経胎盤感染 → 先天梅毒 全数報告

クラミジアの母子感染は「産道感染」!経胎盤ではない 梅毒は血液感染→献血血液の**梅毒抗体検査(STS法・TPHA法)**が実施される

疾患 動向
性器クラミジア感染症 報告数が最多(STIの中で最も多い)
梅毒 近年急増傾向⭐(2022年に年間1万件超)
淋菌感染症 梅毒・クラミジアより少ない

📋 国試頻出まとめ

# テーマ 重要ポイント
1 三次予防 リハビリ・在宅機能訓練
2 二次予防 健康診断・がん検診・スクリーニング
3 一次予防 予防接種・禁煙・健康教育
4 マススクリーニング 二次予防に分類される
5 発見率1位 先天性甲状腺機能低下症
6 PKU フェニルアラニン水酸化酵素欠損
7 再興感染症 結核(SARSは新興感染症)
8 四類感染症 動物・物件を介して人に感染。デング熱・マラリア
9 A類予防接種 集団予防目的・努力義務あり
10 母子感染 風しん・トキソプラズマ→経胎盤 / ATL→経母乳

📝 国試過去問チェック

第111回 問16(疾病の三次予防)

疾病の三次予防に該当するのはどれか。1つ選べ。

  1. 健常者のがん検診
  2. 禁煙教室
  3. 在宅機能訓練
  4. 献血された血液の抗HIV抗体検査
  5. 予防接種
解答と解説を見る

正答:3

3✅ 在宅機能訓練は発症後の機能回復→三次予防

1❌ がん検診は二次予防(早期発見)

2❌ 禁煙教室は一次予防(発症予防)

4❌ 献血血液のHIV検査は輸血感染予防(二次予防的)

5❌ 予防接種は一次予防


第111回 問17(新生児マススクリーニング)

2019〜2023年の5年間の陽性者発見率が最も高い新生児マススクリーニングの対象疾患はどれか。1つ選べ。

  1. 先天性甲状腺機能低下症
  2. メープルシロップ尿症
  3. フェニルケトン尿症
  4. ガラクトース血症
  5. 先天性副腎過形成症
解答と解説を見る

正答:1

1✅ 先天性甲状腺機能低下症は約3,000〜4,000人に1人と頻度が最も高く、陽性者発見率が最大

2❌〜5❌ 他疾患は頻度がより低い(メープルシロップ尿症は約30万人に1人)


第110回 問17(再興感染症)

再興感染症はどれか。1つ選べ。

  1. 結核
  2. クリプトスポリジウム症
  3. 重症急性呼吸器症候群(SARS)
  4. レジオネラ症
  5. ロタウイルス感染症
解答と解説を見る

正答:1

1✅ 結核は19〜20世紀に蔓延後、抗菌薬開発で激減。その後耐性菌の出現などで再び増加した再興感染症の代表例

2❌ クリプトスポリジウム症は原虫による新興感染症

3❌ SARSは2002〜2003年に初めて認識された新興感染症

4❌ レジオネラ症は1976年に初めて認識された新興感染症

5❌ ロタウイルス感染症は小児の急性胃腸炎の原因として新たに認識された新興感染症


第109回 問16(疫学研究デザイン)

対象集団について、ある一時点における疾病の有無と要因の保有状況を調査し、その関連を明らかにする疫学研究手法はどれか。1つ選べ。

  1. 症例対照研究
  2. 縦断的研究
  3. 介入研究
  4. コホート研究
  5. 横断的研究
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正答:5

5✅ 横断的研究=ある一時点での疾病の有無と要因を同時に調査する断面研究。「一時点」がキーワード

1❌ 症例対照研究=過去にさかのぼって要因を調べる

4❌ コホート研究=要因保有者を将来に向けて追跡する


第109回 問17(子宮頸がんの原因ウイルス)

予防接種が勧奨されている子宮頸がんのリスク要因はどれか。1つ選べ。

  1. ヒト単純ヘルペスウイルス
  2. 梅毒トレポネーマ
  3. クラミジア・トラコマチス
  4. ヒトパピローマウイルス
  5. 淋菌
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正答:4

4✅ 子宮頸がんの主要リスク要因は**HPV(ヒトパピローマウイルス)**感染(HPV16型・18型が高リスク)。HPVワクチン(定期接種)で予防可能

1❌ HSV(単純ヘルペスウイルス)は子宮頸がんの主要因ではない

2・3・5❌ 梅毒・クラミジア・淋菌は性感染症の原因だがリスク要因ではない


第108回 問16(四類感染症の定義)

感染症法において、「動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症」に分類されるのはどれか。1つ選べ。

  1. 性器クラミジア感染症
  2. デング熱
  3. マイコプラズマ肺炎
  4. 麻しん
  5. 流行性耳下腺炎
解答と解説を見る

正答:2

2✅ デング熱は感染症法四類感染症。ネッタイシマカ等の蚊(ベクター=動物)を介して感染するため四類に該当

1❌ 性器クラミジア感染症=五類(全数把握)

3❌ マイコプラズマ肺炎=五類(定点把握)

4❌ 麻しん=五類(全数把握)

5❌ 流行性耳下腺炎=五類(定点把握)


第108回 問125(母子感染の経路)

母子感染する疾患について、病原体及び主な感染経路の組合せとして正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 風しん — ウイルス — 経胎盤
  2. 淋菌感染症 — ウイルス — 経産道
  3. トキソプラズマ症 — 原虫 — 経胎盤
  4. 成人T細胞白血病 — 細菌 — 経母乳
  5. カンジダ症 — 真菌 — 経母乳
解答と解説を見る

正答:1・3

1✅ 風しん=ウイルス→経胎盤感染→先天性風疹症候群

3✅ トキソプラズマ症原虫(Toxoplasma gondii)→経胎盤感染→水頭症・網膜炎

2❌ 淋菌感染症の病原体は細菌(ウイルスではない)

4❌ 成人T細胞白血病の病原体はHTLV-1ウイルス(細菌ではない);経母乳は正しい

5❌ カンジダ症の主な母子感染経路は経産道(経母乳ではない)

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