📊 疫学研究デザインの分類
研究デザインと算出できる指標
| 研究デザイン | 方向 | 特徴 | 算出できる指標 |
|---|---|---|---|
| コホート研究 | 前向き(曝露→疾病) | 費用・時間大。稀少疾患に不向き | 相対リスク・寄与危険度・ARR |
| 症例対照研究 | 後ろ向き(疾病→曝露) | 費用・時間小。稀少疾患に有用 | オッズ比のみ |
| ランダム化比較試験(RCT) | 前向き | 最高エビデンス(介入研究) | 相対リスク・ARR・NNT |
| 横断研究 | 時点 | 有病率の把握 | 有病割合 |
✅ 「症例対照研究 → オッズ比のみ」(発症率が求められないため) 「コホート研究・RCT → 相対リスク・ARR・NNT・寄与危険度」
症例対照研究でオッズ比を使う理由
症例対照研究では「すでに発症した人」を選んで調べるため、発症率(incidence)が求められない。代わりにオッズ比を算出する。
オッズ比(OR)= 症例群の曝露オッズ / 対照群の曝露オッズ
OR > 1 → 曝露がリスク因子
OR = 1 → 関連なし
OR < 1 → 曝露が防御因子
症例対照研究の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究の方向 | 後ろ向き(結果→原因) |
| バイアス | 選択バイアス・想起バイアス(情報バイアス)が生じやすい |
| メリット | コホート研究より費用・時間が少ない。稀少疾患に有用 |
| 追跡期間 | 不要(コホート研究では必要) |
| 算出できる指標 | オッズ比のみ(発生率・相対リスクは直接求められない) |
📈 各統計指標の意味と計算
指標まとめ
| 指標 | 公式 | どんな研究で使う |
|---|---|---|
| 相対リスク(RR) | 曝露群発症率 ÷ 非曝露群発症率 | コホート研究・RCT |
| オッズ比(OR) | 症例の曝露オッズ ÷ 対照の曝露オッズ | 症例対照研究 |
| 寄与危険度 | 曝露群発症率 − 非曝露群発症率 | コホート研究 |
| 絶対リスク減少率(ARR) | 対照群発症率 − 介入群発症率 | RCT |
| NNT(治療必要数) | 1 ÷ ARR | RCT(小さいほど有効) |
| NNH(害必要数) | 1 ÷ ARI(絶対リスク増加) | RCT(大きいほど安全) |
NNT計算例
プラセボ群:発症率10%(800人中80人)、NNT=20のとき、新薬群の発症者数は?
- NNT = 1 ÷ ARR → ARR = 1 ÷ 20 = 5%
- 新薬群発症率 = 10% − 5% = 5%
- 新薬群発症者数 = 800 × 5% = 40人
🔬 感度・特異度・陽性的中率(PPV)
検査性能指標の公式
| 指標 | 公式 | 意味 |
|---|---|---|
| 感度(Sensitivity) | 真陽性 ÷(真陽性 + 偽陰性) | 病気の人を正しく陽性と判定する割合 |
| 特異度(Specificity) | 真陰性 ÷(真陰性 + 偽陽性) | 健康な人を正しく陰性と判定する割合 |
| 陽性的中率(PPV) | 真陽性 ÷(真陽性 + 偽陽性) | 陽性判定された人が実際に病気の割合 |
| 陰性的中率(NPV) | 真陰性 ÷(真陰性 + 偽陰性) | 陰性判定された人が実際に健康の割合 |
PPV計算例(感度95%・特異度90%・有病率10%)
1000人で計算:
- 有病者:100人 → 真陽性:95人
- 非有病者:900人 → 偽陽性:900 × 10% = 90人
- PPV = 95 ÷(95 + 90)= 95 ÷ 185 ≒ 51%
⚠️ 有病率が低いほどPPVは低下する(偽陽性が相対的に増えるため) スクリーニング検査(有病率低)では特異度を上げてPPVを高めることが重要
📚 メタアナリシスとエビデンスレベル
エビデンスレベル(高い順)
1. システマティックレビュー・メタアナリシス ← 最高
2. ランダム化比較試験(RCT)
3. コホート研究
4. 症例対照研究
5. 症例報告・専門家意見 ← 最低
メタアナリシスの特徴
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 統計統合の方法 | 重み付き平均(相乗平均ではない) |
| 統合結果の視覚化 | フォレストプロット(各研究の効果量・95%CI) |
| 出版バイアスの評価 | ファンネルプロット |
| 出版バイアスとは | 陽性結果が発表されやすい → 否定的結果が見落とされるリスク |
| 異質性 | I²統計量で評価。相反する研究でも統合可能 |
⚠️ 「ファンネルプロット = 出版バイアスの評価」 「フォレストプロット = 統合した効果量の表示」(混同注意)
臨床試験の統計解釈と非劣性試験
| 試験の目的 | 判断基準 |
|---|---|
| 優越性試験 | 95%CIが0(差なし)を含まず、新薬側に位置 → 優越性あり |
| 非劣性試験 | 95%CIの下限が非劣性マージン(−D)より大きい → 非劣性が示された |
| 同等性試験 | 95%CIの全体が[−D, +D]の範囲内 → 同等性が示された |
🏥 EBMの実践プロセスとデータの尺度
EBM(Evidence-Based Medicine)の実践
| プロセス | 内容 |
|---|---|
| ① 問題の定式化 | PICO/PECOの4要素(Patient・Intervention/Exposure・Comparison・Outcome) |
| ② 情報収集 | 二次資料(システマティックレビュー・ガイドライン)から開始するのが効率的 |
| ③ 情報の批判的吟味 | 内的妥当性(研究の正確さ・再現性)の評価 |
| ④ 適用 | 患者への適用可否の判断 |
✅ ITT(intention-to-treat)解析 → 脱落者を含めて解析 PP(per-protocol)解析 → 治療を完遂した人のみで解析
バイアス・交絡の対策
| 手法 | 効果 |
|---|---|
| ランダム化(無作為割付) | 選択バイアスを軽減・既知・未知の交絡因子を均等分布 |
| 盲検化 | 情報バイアス(測定バイアス)を軽減 |
| マッチング | 観察研究で交絡因子の影響を軽減 |
データの尺度まとめ
| 尺度 | 特徴 | 例 | 使える統計 |
|---|---|---|---|
| 名義尺度 | 分類のみ(順序なし) | 血液型・性別・疾患名 | 最頻値・χ²検定 |
| 順序尺度 | 順序あり・間隔不均等 | PS・がんステージ・痛みのNRS | 中央値・Mann-Whitney検定 |
| 間隔尺度 | 順序あり・間隔均等・絶対ゼロなし | 体温(℃)・暦年 | 平均・SD・t検定 |
| 比例(比率)尺度 | 順序あり・間隔均等・絶対ゼロあり | 体重・身長・血圧・血糖値 | 全統計手法 |
✅ 「PS(パフォーマンスステータス)→ 順序尺度」(0〜4の大小関係あり・等間隔でない)
📋 国試頻出まとめ
| # | テーマ | 重要ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 症例対照研究 | オッズ比のみ算出可。後ろ向き研究。追跡期間不要 |
| 2 | コホート研究・RCT | 相対リスク・ARR・NNT・寄与危険度 |
| 3 | NNT | 1÷ARR。小さいほど有効。1人の発症を防ぐために必要な治療人数 |
| 4 | PPVと有病率 | 有病率↓ → PPV↓(偽陽性が相対的に増加) |
| 5 | メタアナリシス | エビデンスレベル最高。統合 = 重み付き平均(相乗平均ではない) |
| 6 | フォレスト vs ファンネル | フォレスト = 効果量表示。ファンネル = 出版バイアス評価 |
| 7 | ITT解析 | 脱落者を含めて解析(PP解析は完遂者のみ) |
| 8 | EBMの最初のプロセス | 問題の定式化(PICO/PECO)(情報収集ではない) |
| 9 | PSのデータ尺度 | 順序尺度(大小関係はあるが等間隔でない) |
| 10 | 非劣性試験 | 95%CIの下限が−Dより大きい → 非劣性が示された |
📝 国試過去問チェック
第111回 問69(症例対照研究で算出できる統計値)
症例対照研究で算出することができる統計値はどれか。1つ選べ。
- 絶対リスク減少率
- オッズ比
- 発症割合
- 寄与危険度
- 相対リスク
解答と解説を見る
正答:2
2✅ オッズ比:症例対照研究は後ろ向き研究で、すでに疾患を発症した「症例群」と発症していない「対照群」の過去の曝露を比較する。発症率が算出できないため、相対リスク・ARR・寄与危険度は直接求められない。1❌ 絶対リスク減少率(ARR)→ RCTで算出。3❌ 発症割合 → コホート研究で算出。4❌ 寄与危険度 → コホート研究で算出。5❌ 相対リスク → コホート研究・RCTで算出。
第111回 問195(メタアナリシスに関する記述)
メタアナリシスに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 複数の研究で示された効果量を統計学的に統合する際は、相乗平均を用いる。
- エビデンスレベルは症例対照研究より高い。
- 相反する結論の資料を混在させてはならない。
- 統合した結果は、ファンネルプロットで示される。
- 解析を行う際は、出版バイアスに留意する。
解答と解説を見る
正答:2・5
2✅ メタアナリシスはエビデンスレベルの最上位。症例対照研究より高い。5✅ 陽性結果が発表されやすい出版バイアスに留意が必要。1❌ 重み付き平均を用いる(相乗平均は不適切)。3❌ 異質性をI²統計量等で評価した上で統合できる。相反する結果でも統合可能。4❌ ファンネルプロットは出版バイアスの評価に使う。統合結果を示すのはフォレストプロット。
第107回 問194(EBMの実践に関する記述)
EBMの実践に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 最初のプロセスは「問題解決のための情報収集」である。
- 情報を効率的に収集するために、一次資料の調査から開始する。
- PICO又はPECOとよばれる4つの要素を用いて問題の定式化を行う。
- 論文等に示された研究成果の正確度や再現性を確認することを、内的妥当性の評価という。
- 割りつけられた治療を完遂できず脱落した者を除いた解析はITT(intention-to-treat)解析という。
解答と解説を見る
正答:3・4
3✅ PICO/PECO(Patient・Intervention/Exposure・Comparison・Outcome)の4要素で問題を定式化する。4✅ 内的妥当性:研究デザイン上の正確さ・再現性の評価。1❌ EBMの最初のプロセスは問題の定式化(PICO/PECO)(情報収集ではない)。2❌ 情報収集は二次資料(システマティックレビュー・ガイドライン)から開始するのが効率的。5❌ ITT解析は脱落者を含めて解析する手法。脱落者を除く解析はPP(per-protocol)解析。
