眼圧と緑内障の基礎
緑内障:眼圧↑(または眼圧が正常でも)→ 視神経障害 → 視野欠損 → 失明
眼圧を決める要素:
眼圧 = 房水産生量 ÷ 房水流出量
→ 房水産生を減らすか、房水流出を増やすと眼圧↓
緑内障の2分類:
| 型 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 開放隅角緑内障 | 隅角は開いているが流出抵抗↑ | 最も多い。自覚症状が出にくい |
| 閉塞隅角緑内障 | 虹彩が隅角を塞いで房水流出↓ | 急性発作:激しい眼痛・嘔吐 |
緑内障治療薬の分類
| 分類 | 作用 | 代表薬 |
|---|---|---|
| PG関連薬(FP受容体作動) | ぶどう膜強膜流出↑ | ラタノプロスト・タフルプロスト |
| β遮断薬 | 房水産生↓ | チモロール・カルテオロール |
| α₂作動薬 | 房水産生↓ + 流出↑ | ブリモニジン |
| 炭酸脱水酵素阻害薬 | 房水産生↓ | ドルゾラミド・ブリンゾラミド |
| Rhoキナーゼ阻害薬 | シュレム管流出↑ | リパスジル |
| 縮瞳薬(M作動) | シュレム管流出↑ | ピロカルピン(閉塞隅角に使用) |
プロスタグランジン関連薬(第1選択薬)
ラタノプロスト(キサラタン®)
作用機序:
プロスタノイドFP受容体を刺激(プロスタグランジンF₂α誘導体)
↓
ぶどう膜強膜路(副経路)からの房水流出↑
↓
眼圧↓
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ラタノプロスト(キサラタン®) | 最も広く使われるPG関連薬。1日1回夜点眼 |
| タフルプロスト(タプロス®) | ラタノプロストより眼圧下降効果強い |
| ビマトプロスト(ルミガン®) | まつ毛美容効果で知られる(副作用として色素沈着) |
副作用:虹彩・眼周囲の色素沈着、まつ毛の変化(伸長・増多)→ 片眼だけ使用した場合に左右差が出ることがある。
β遮断薬(房水産生抑制)
チモロール(チモプトール®)
- 非選択的β遮断薬(β₁・β₂両方を遮断)
- 毛様体上皮のβ₂受容体遮断 → cAMP↓ → 房水産生↓ → 眼圧↓
禁忌:気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患(β₂遮断 → 気管支収縮)、房室ブロック
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| チモロール | 最も使われるβ遮断点眼薬 |
| カルテオロール(ミケラン®) | 内因性交感神経刺激作用(ISA)あり → 徐脈が出にくい |
| ベタキソロール | β₁選択的。喘息患者への相対的安全性↑ |
α₂受容体作動薬
ブリモニジン(アイファガン®)
作用機序(2重):
① 毛様体のα₂受容体刺激 → cAMP↓ → 房水産生↓
② ぶどう膜強膜路からの房水流出↑
↓
眼圧↓(二方向から作用)
- 全身へのα₂刺激作用もあるため、心拍数低下・血圧低下の可能性
- 2歳未満の乳幼児に禁忌(血液脳関門が未発達→呼吸抑制リスク)
炭酸脱水酵素阻害薬(CA阻害薬)
ドルゾラミド(トルソプト®)・ブリンゾラミド(エイゾプト®)
毛様体上皮の**炭酸脱水酵素(CA)**阻害 → HCO₃⁻産生↓ → 房水産生↓ → 眼圧↓
全身投与のアセタゾラミド(ダイアモックス®)も緑内障に使用(利尿作用も)
Rhoキナーゼ阻害薬
リパスジル(グラナテック®)
- Rhoキナーゼ(ROCK)を阻害 → 線維柱帯細胞の細胞骨格変化 → シュレム管からの流出↑
- 日本初の緑内障治療用Rhoキナーゼ阻害点眼薬
閉塞隅角緑内障の急性発作治療
ピロカルピン(サンピロ®)
- M₃受容体刺激 → 瞳孔括約筋収縮(縮瞳)→ 隅角開大 → 房水流出↑
- 急性閉塞隅角緑内障の発作時に点眼
注意:β遮断薬・プロスタグランジン関連薬・α₂作動薬は閉塞隅角緑内障には禁忌または注意。瞳孔散大による隅角閉塞を悪化させる薬(抗コリン薬・交感神経刺激薬)にも注意。
第108回 国試過去問チェック
第108回薬剤師国家試験 問40(必須問題・薬理)
緑内障治療薬ブリモニジンの作用機序はどれか。1つ選べ。
- プロスタノイドEP₂受容体刺激 2. プロスタノイドFP受容体刺激 3. アドレナリンα₂受容体刺激 4. アセチルコリンM₃受容体刺激 5. Rhoキナーゼ阻害
正解:3
解説: ブリモニジンはα₂受容体刺激薬(房水産生↓+ぶどう膜強膜路流出↑)。FP受容体刺激はプロスタグランジン関連薬(ラタノプロスト等)。EP₂受容体刺激はない標準薬。M₃刺激はピロカルピン(縮瞳薬)。Rhoキナーゼ阻害はリパスジル。
加齢黄斑変性(AMD)の治療薬:抗VEGF薬
緑内障と同じく眼科領域の重要疾患。滲出型(湿性型)AMDでは新生血管が網膜下に生じて視力障害が起こるため、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)阻害薬が治療の中心です。
AMDの病態:
- 加齢・喫煙などで網膜色素上皮が障害 → 滲出型では**脈絡膜新生血管(CNV)**が形成 → VEGFが新生血管形成・血管透過性亢進を促進 → 網膜浮腫・出血 → 視力低下
抗VEGF薬(硝子体内注射)
| 薬物 | 種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| ラニビズマブ(ルセンティス®) | 抗VEGF-A抗体Fabフラグメント | 月1回硝子体内注射。標準治療 |
| アフリベルセプト(アイリーア®) | VEGFR1+VEGFR2細胞外ドメイン+IgFc融合(VEGFトラップ) | 2ヶ月に1回(維持期)。VEGF-A・VEGF-B・PlGFを捕捉 |
| ブロルシズマブ(ビズアイ®) | 抗VEGF-A単鎖抗体フラグメント(scFv) | 3ヶ月に1回(維持期)。分子量が小さく組織浸透性↑ |
| ファリシマブ(バビースモ®) | 抗VEGF-A+抗Ang-2二重特異性抗体 | VEGFとアンジオポエチン2を同時に阻害 |
VEGF阻害薬のポイント:硝子体内注射で局所投与するため全身副作用は少ない。ただし眼内炎・眼圧上昇・網膜剥離などの眼科的合併症に注意。
第108回 国試過去問チェック(眼科薬)
第108回薬剤師国家試験 問191(一般問題・病態)
加齢性黄斑変性(加齢黄斑変性)の病態と薬物治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 水晶体の混濁により、視機能が低下する
- 喫煙は危険因子の1つである
- 失明に至ることはまれである
- 薬物治療の対象となるのは、萎縮型である
- 薬物治療には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の阻害薬が用いられる
正解:2と5
解説:
- 選択肢1:✗ 水晶体の混濁は白内障の特徴。AMDは黄斑部(網膜の中央部)の障害
- 選択肢2:◯ 喫煙はAMDの重要な危険因子。禁煙が重要な予防策
- 選択肢3:✗ 滲出型AMDは進行すると失明に至ることがある(先進国での失明原因の上位)
- 選択肢4:✗ 薬物治療(抗VEGF薬)の対象は滲出型(湿性型)。萎縮型には現在確立した薬物治療がない
- 選択肢5:◯ 滲出型AMDにはラニビズマブ・アフリベルセプトなどの抗VEGF薬(硝子体内注射)が使用される
