❤️ 心不全治療薬の分類
| 分類 | 目的 | 代表薬 |
|---|---|---|
| 強心薬(陽性変力薬) | 心収縮力↑ | ジゴキシン・ピモベンダン |
| 利尿薬 | 体液量↓・前負荷↓ | フロセミド・スピロノラクトン |
| β遮断薬 | 心臓リモデリング抑制 | ビソプロロール・カルベジロール |
| RAAS抑制薬 | 後負荷↓・リモデリング抑制 | ACE阻害薬・ARB |
| 心拍数低下薬 | 心拍数↓ | イバブラジン |
| ANP製剤 | 血管拡張・利尿 | カルペリチド |
強心薬(陽性変力薬)
ジゴキシン
【通常】
Na⁺/K⁺-ATPase(ナトリウムポンプ)が働く
↓
細胞内Na⁺を細胞外へ排出・K⁺を取り込む
↓
細胞内Na⁺濃度を低く維持
【ジゴキシン投与後】
Na⁺/K⁺-ATPaseを【阻害】
↓
細胞内Na⁺↑(排出できなくなる)
↓
Na⁺/Ca²⁺交換体(NCX)が逆転
(通常はNa⁺流入↔Ca²⁺流出だが、Na⁺が多くなるとCa²⁺が流出できなくなる)
↓
細胞内Ca²⁺↑
↓
心筋収縮力↑(陽性変力作用)
さらに
迷走神経亢進 → 心拍数↓(陰性変時作用)・房室伝導抑制
- 心房細動の心拍数コントロール+収縮力改善に使用
- 治療域が狭い → TDM(血中濃度モニタリング)が必要
- 副作用:悪心・嘔吐・不整脈・黄緑視
低カリウム血症でジゴキシン毒性↑:K⁺とジゴキシンはNa⁺/K⁺-ATPaseの結合部位が競合→血中K⁺↓でジゴキシンが結合しやすくなる
ジゴキシンはNa⁺/K⁺-ATPaseを「阻害」する(「活性化」は誤り!国試頻出の引っかけ)
ピモベンダン
ピモベンダンの2重作用
【作用①】Ca²⁺感受性増強
心筋トロポニンCへのCa²⁺親和性↑
↓
少ないCa²⁺でも強い収縮が可能
↓
心筋収縮力↑
【作用②】PDE Ⅲ(ホスホジエステラーゼⅢ)阻害
cAMPの分解↓ → cAMP↑
↓
PKA(プロテインキナーゼA)活性化
↓
Ca²⁺流入↑ → 収縮力↑
β遮断薬:心臓リモデリング抑制
ビソプロロール
慢性心不全では交感神経が過剰に活性化
↓
カテコールアミン(ノルアドレナリン等)が心臓を慢性的に刺激
↓
心肥大・線維化・心臓リモデリングが進行 → 心機能低下
【ビソプロロールの作用】
β₁受容体を選択的に遮断
↓
カテコールアミン過剰刺激をブロック
↓
心臓リモデリングの抑制
↓
慢性心不全の予後改善(死亡率↓)
少量から開始し漸増(急な中止・大量投与は禁止。心不全が悪化する場合あり)
⏱️ 心拍数低下薬|イバブラジン
洞房結節の自動能(ペースメーカー活動)
↓
過分極時にHCNチャネル(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル)が開く
↓
If電流(Pacemaker電流:Na⁺・K⁺が流入)→ 自動脱分極
↓
規則正しい心拍リズムが形成される
【イバブラジンの作用】
HCNチャネルを選択的に阻害
↓
If電流(Pacemaker電流)↓
↓
洞房結節の自動脱分極が遅くなる
↓
心拍数↓(心収縮力・血圧には影響しない)
- β遮断薬が使えない場合や追加治療として使用
洞調律の患者にのみ有効(心房細動では洞房結節が働いていないため無効)
💧 ANP製剤|カルペリチド
カルペリチド(ANP遺伝子組換え製剤)投与
↓
グアニル酸シクラーゼ型受容体(pGC-A)に結合・刺激
↓
cGMP(環状グアノシン一リン酸)産生↑
↓
【血管】平滑筋弛緩 → 前負荷↓・後負荷↓(動静脈拡張)
【腎臓】Na⁺・水の排泄促進 → 利尿↑ → 体液量↓
↓
急性心不全の症状改善
カルペリチドはANP製剤そのもの(cGMP経路)。「ナトリウム利尿ペプチドの分解を阻害する」は誤り → それはネプリライシン阻害薬(サクビトリル)の機序!
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | ジゴキシン:Na⁺/K⁺-ATPaseを阻害→細胞内Na⁺↑→NCX逆転→Ca²⁺↑→収縮力↑(「活性化」は誤り!) |
| 2 | ジゴキシン:治療域が狭い→TDM必要。低K⁺血症で毒性増強。副作用:黄緑視・不整脈 |
| 3 | ピモベンダン:Ca²⁺感受性増強+PDE Ⅲ阻害の2重機序(cAMP誘導体ではない!) |
| 4 | ビソプロロール:β₁選択的遮断→慢性的カテコールアミン過剰による心臓リモデリング抑制→予後改善 |
| 5 | イバブラジン:HCNチャネル阻害→If電流↓→洞房結節自動能↓→心拍数↓。洞調律患者のみ有効 |
| 6 | カルペリチド:ANP遺伝子組換え製剤。pGC-A→cGMP↑→血管拡張・利尿。急性心不全に静注 |
| 7 | サクビトリル(ネプリライシン阻害薬):ANPの分解を阻害してANPを長持ちさせる(カルペリチドとは別機序) |
| 8 | スピロノラクトン(アルドステロン拮抗薬):利尿+心臓リモデリング抑制。高K⁺血症に注意 |
| 9 | 急性心不全には強心薬(ドパミン・ドブタミン・ピモベンダン)・ANP製剤・利尿薬を使用 |
| 10 | 慢性心不全の予後改善薬:ACE阻害薬・ARB・β遮断薬・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 |
📝 国試過去問チェック
第109回 問159(一般)
心不全の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. ジゴキシンは、Na⁺, K⁺-ATPaseを活性化し、心筋細胞内Ca²⁺濃度を上昇させて、強心作用を示す
2. ピモベンダンは、サイクリックAMP(cAMP)誘導体で、細胞内でcAMPに変換されて、強心作用を示す
3. ビソプロロールは、アドレナリンβ₁受容体を遮断し、心臓のリモデリングを抑制する
4. カルペリチドは、生体内で活性体となり、ナトリウム利尿ペプチドの分解を阻害して、血管拡張作用と利尿作用を示す
5. イバブラジンは、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル(HCNチャネル)を遮断して、心拍数を減少させる
解答と解説を見る
正解:3・5
3○ ビソプロロールはβ₁選択的遮断→慢性的カテコールアミン過剰による心臓リモデリング抑制→慢性心不全の予後改善。
5○ イバブラジンはHCNチャネル(If電流)を遮断→洞房結節自動能↓→心拍数↓。心収縮力・血圧には影響しない。
1✗ ジゴキシンはNa⁺/K⁺-ATPaseを阻害する(活性化ではない)。阻害→細胞内Na⁺↑→NCX逆転→Ca²⁺↑→収縮力↑。
2✗ ピモベンダンはcAMP誘導体ではなくCa²⁺感受性増強+PDE Ⅲ阻害の2重作用薬。
4✗ カルペリチドはANP製剤そのもの(pGC-A→cGMP↑)。「分解を阻害」はネプリライシン阻害薬(サクビトリル)の機序。
