🩸 貧血の種類と治療薬の使い分け
| 貧血の種類 | 原因 | 主な治療薬 |
|---|---|---|
| 鉄欠乏性貧血 | 鉄不足 | フマル酸第一鉄(鉄剤) |
| 巨赤芽球性貧血 | VB12・葉酸不足 | メコバラミン・葉酸 |
| 腎性貧血 | EPO産生↓ | EPO製剤・HIF-PH阻害薬 |
| 再生不良性貧血 | 造血幹細胞障害 | 免疫抑制療法・TPO受容体作動薬 |
| 化学療法による好中球減少 | 好中球産生↓ | G-CSF製剤(フィルグラスチム) |
ビタミン欠乏性貧血の治療薬
メコバラミン(活性型ビタミンB₁₂)
活性型ビタミンB₁₂(メコバラミン)
↓
DNAメチル化反応の補酵素として働く
↓
メチオニン合成・DNA合成促進
↓
赤血球の成熟促進 → 巨赤芽球性貧血を改善
メコバラミンはDNAメチル化反応の補酵素。ヘム合成酵素の補酵素ではない(ヘム合成にはビタミンB₆が関与)
悪性貧血(内因子欠如による吸収障害)では注射用シアノコバラミンを使用。
葉酸
葉酸(体外から摂取)
↓
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)で還元
↓
テトラヒドロ葉酸(FH₄)に変換
↓
1炭素転移反応の補酵素
↓
チミジル酸(dTMP)合成 → DNA合成促進
↓
赤血球の成熟促進 → 巨赤芽球性貧血を改善
⚠️ メトトレキサートはDHFRを阻害
→ 葉酸拮抗 → 巨赤芽球性貧血(副作用)
メトトレキサートはDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)を阻害 → 葉酸拮抗 → 巨赤芽球性貧血(副作用)
腎性貧血の治療薬
EPO製剤(エリスロポエチン)
腎臓でのEPO産生↓(腎性貧血の病態)
EPO製剤(皮下注・静注)を投与
↓
赤芽球系前駆細胞のEPO受容体を刺激
↓
赤血球産生↑
副作用:血圧上昇・血栓形成(血液粘度↑)
HIF-PH阻害薬(ダプロデュスタット等)
通常(酸素十分)の状態
HIF(低酸素誘導因子)が産生される
↓
HIF-PH(プロリン水酸化酵素)がHIFを水酸化
↓
HIFがユビキチン化→プロテアソームで分解
↓
EPO遺伝子が転写されない
【HIF-PH阻害薬の作用】
HIF-PHを阻害
↓
HIFの水酸化↓ → 分解されずに蓄積
↓
HIF核内移行 → EPO遺伝子の転写↑
↓
内因性EPO産生↑ → 赤血球産生↑
経口投与可能(EPO製剤は注射のみ) 透析・非透析の腎性貧血に適応
白血球系に作用する薬
フィルグラスチム(G-CSF製剤)
G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)の
遺伝子組換え製剤
↓
好中球系前駆細胞のG-CSF受容体に結合
↓
好中球の産生・分化を直接促進
↓
好中球数↑
フィルグラスチム自体がG-CSF製剤(単球に作用してG-CSFを放出させる薬ではない) 適応:抗悪性腫瘍薬による好中球減少症・骨髄移植後
血小板系に作用する薬
エルトロンボパグ(TPO受容体作動薬)
TPO(トロンボポエチン)受容体(c-MPL)の
細胞内ドメインに作用(非ペプチド性)
↓
巨核球系前駆細胞の増殖・分化を促進
↓
血小板産生↑
非ペプチド性→経口投与可能 適応:慢性ITP・再生不良性貧血・C型肝炎関連血小板減少 EPO受容体(赤芽球系)には作用しない
📊 再生不良性貧血の検査値
病態:造血幹細胞が自己免疫性T細胞に攻撃される → 赤血球・白血球・血小板すべて減少(汎血球減少症)
| 検査項目 | 再生不良性貧血 | 鉄欠乏性貧血 |
|---|---|---|
| 血清鉄 | ↑(増加) | ↓(減少) |
| 不飽和鉄結合能(UIBC) | ↑(増大) | ↑ |
| 血小板 | ↓(減少) | 正常 |
| エリスロポエチン | ↑(亢進) | 正常〜軽度↑ |
| 赤血球の大きさ | 正球性(MCV正常) | 小球性(MCV↓) |
血清鉄↑の理由:赤血球産生が低下してFe(鉄)がヘム合成に使われず血中に蓄積(「使えていない鉄」が増えている状態)
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | メコバラミン(活性型VB₁₂):DNAメチル化反応の補酵素→赤血球成熟↑(ヘム合成の補酵素はVB₆) |
| 2 | 葉酸:体内で**テトラヒドロ葉酸(FH₄)**に変換→1炭素転移反応の補酵素→dTMP合成→DNA合成→赤血球成熟 |
| 3 | メトトレキサート:DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)を阻害→葉酸拮抗→巨赤芽球性貧血(副作用) |
| 4 | EPO製剤:赤芽球系前駆細胞のEPO受容体を刺激→赤血球産生↑。副作用:血圧上昇・血栓形成 |
| 5 | HIF-PH阻害薬(ダプロデュスタット等):HIF-PHを阻害→HIF蓄積・核内移行→EPO遺伝子転写↑→内因性EPO産生↑。経口投与可能 |
| 6 | フィルグラスチム:G-CSF製剤そのもの→好中球産生を直接促進(単球に作用してG-CSFを放出させるのではない!) |
| 7 | エルトロンボパグ:非ペプチド性TPO受容体(c-MPL)作動薬→巨核球系前駆細胞の分化↑→血小板産生↑(EPO受容体には作用しない!) |
| 8 | 再生不良性貧血:汎血球減少症。血清鉄↑(鉄が使われない)・UIBC↑・EPO↑・血小板↓・MCV正常(正球性) |
| 9 | 鉄欠乏性貧血は小球性低色素性貧血(MCV↓・MCH↓)。血清鉄↓・UIBC↑ |
| 10 | HIF-PH阻害薬は**EPO産生↑**を介して赤血球産生↑(EPO受容体を直接刺激するEPO製剤とは機序が異なる) |
📝 国試過去問チェック
第109回 問161(一般問題)
造血系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. エルトロンボパグは、赤芽球系前駆細胞のエリスロポエチン受容体を刺激することで、赤血球の産生を促進する
2. メコバラミンは、赤芽球内のヘム合成酵素の補酵素として作用することで、ヘムの合成を促進する
3. ダプロデュスタットは、HIF(低酸素誘導因子)プロリン水酸化酵素を阻害することで、HIFの分解を抑制してエリスロポエチンの産生を促進する
4. フィルグラスチムは、単球系前駆細胞から単球への分化を促進することで、単球からのG-CSFの放出を増加させる
5. 葉酸は、体内でテトラヒドロ葉酸に代謝されて、DNA合成の補酵素として作用し、赤血球の成熟を促進する
解答と解説を見る
正解:3・5
3○ ダプロデュスタット(HIF-PH阻害薬):HIF-PHを阻害→HIFの水酸化・分解↓→HIF蓄積・核内移行→EPO遺伝子転写↑→内因性EPO産生↑→赤血球産生↑。
5○ 葉酸→テトラヒドロ葉酸(FH₄)→1炭素転移反応の補酵素→dTMP合成→DNA合成→赤血球成熟↑。
1✗ エルトロンボパグはTPO受容体(c-MPL)(巨核球系)を刺激→血小板産生↑(赤芽球系・EPO受容体ではない)。
2✗ メコバラミンはDNAメチル化反応の補酵素(ヘム合成酵素の補酵素はビタミンB₆=ピリドキサールリン酸)。
4✗ フィルグラスチムはG-CSF製剤そのものであり、好中球産生を直接促進する(単球に作用してG-CSFを放出させる薬ではない)。
