🧬 ホルモン関連薬の全体像
| 分類 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| ホルモン補充(作動薬) | 不足しているホルモンを補う | インスリン・テリパラチド・リュープロレリン |
| ホルモン合成阻害薬 | 過剰なホルモン産生を抑える | プロピルチオウラシル・フィナステリド |
| 受容体拮抗薬 | ホルモンの過剰作用をブロック | スピロノラクトン・フルタミド |
副腎皮質ホルモン関連薬
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)製剤
| 薬物 | 作用機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| テトラコサクチド | 副腎皮質束状層のACTH受容体(MC2R)を刺激 → コルチゾール産生↑ | クッシング症候群の診断(負荷試験)・炎症性疾患 |
副腎皮質ステロイド合成阻害薬
コルチゾール合成経路
コレステロール
↓ 各種酵素
11-デオキシコルチゾール
↓ 11β-ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)← メチラポン・オシロドロスタットが阻害
コルチゾール
「11β-ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)」
「3β-HSD(3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素)」ではない!
← 国試頻出の引っかけ
メチラポンが阻害するのは
| 薬物 | 阻害する酵素 | 適応 |
|---|---|---|
| メチラポン | **11β-ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)**阻害 → コルチゾール合成↓ | クッシング症候群の診断(メチラポンテスト) |
| オシロドロスタット | **11β-ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)**阻害 | クッシング症候群 |
| ミトタン | 副腎皮質の細胞毒性 → コルチゾール↓ | 副腎皮質がん |
性ホルモン関連薬
男性ホルモン関連薬
テストステロン
↓ 5α還元酵素(Ⅱ型:前立腺・頭皮)← フィナステリドが阻害
↓ 5α還元酵素(Ⅰ型+Ⅱ型) ← デュタステリドが阻害
ジヒドロテストステロン(DHT)↓
↓
前立腺の増殖↓ → 前立腺肥大症改善
頭皮への影響↓ → 男性型脱毛症改善
【フルタミドの作用】
アンドロゲン受容体を拮抗(抗アンドロゲン薬)
↓
DHTがアンドロゲン受容体に結合できない
↓
前立腺がん細胞の増殖↓
| 薬物 | 作用機序 | 適応 |
|---|---|---|
| フィナステリド | 5α還元酵素(Ⅱ型)阻害 → テストステロン→DHT変換↓ | 男性型脱毛症・前立腺肥大症 |
| デュタステリド | 5α還元酵素(Ⅰ型+Ⅱ型)阻害 | 前立腺肥大症 |
| フルタミド | アンドロゲン受容体拮抗(抗アンドロゲン) | 前立腺がん |
女性ホルモン関連薬
【クロミフェンの作用機序】
視床下部のエストロゲン受容体を競合的に拮抗
↓
エストロゲンによるネガティブフィードバックを遮断
↓
GnRH分泌↑ → FSH/LH↑
↓
卵巣を刺激 → 排卵誘発
(無排卵性不妊の治療)
【レトロゾールの作用機序】
アロマターゼ(CYP19A1)を阻害
↓
アンドロゲン → エストロゲンへの変換↓
↓
エストロゲン合成↓
(乳がん・不妊治療)
| 薬物 | 作用機序 | 適応 |
|---|---|---|
| クロミフェン | エストロゲン受容体の競合的拮抗(視床下部)→ GnRH↑→FSH/LH↑→排卵誘発 | 無排卵性不妊 |
| レトロゾール | アロマターゼ阻害 → エストロゲン合成↓ | 乳がん・不妊治療 |
| タモキシフェン | 乳腺でエストロゲン受容体を拮抗 | 乳がん(ホルモン受容体陽性) |
🧠 下垂体ホルモン関連薬
プロラクチン分泌抑制薬
ドパミン(DA)は下垂体前葉からのプロラクチン分泌を
「抑制」する生理的調節因子
【カベルゴリン・ブロモクリプチンの作用】
下垂体前葉のドパミンD₂受容体を「刺激」
↓
ドパミンと同じ作用 → プロラクチン分泌抑制↓
↓
高プロラクチン血症・プロラクチノーマを治療
(遮断するとプロラクチンが増える)← 国試頻出の引っかけ
D₂受容体を「遮断」ではなく「刺激」する!
| 薬物 | 作用機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| カベルゴリン | 下垂体前葉のドパミンD₂受容体を刺激 → プロラクチン分泌↓ | 高プロラクチン血症・プロラクチノーマ |
| ブロモクリプチン | D₂受容体刺激。パーキンソン病にも使用 | 高プロラクチン血症 |
成長ホルモン関連薬
| 薬物 | 作用機序 | 適応 |
|---|---|---|
| ソマトロピン | 成長ホルモン受容体刺激 | GH分泌不全性低身長 |
| オクトレオチド | ソマトスタチン受容体刺激(持続型) → GH・インスリン・グルカゴン分泌↓ | 先端巨大症・ホルモン産生腫瘍 |
| ペグビソマント | GH受容体拮抗(アンタゴニスト) | 先端巨大症 |
GnRH関連薬(前立腺がん・子宮内膜症)
【GnRHアゴニスト(リュープロレリン・ゴセレリン)の機序】
GnRH受容体を持続的に刺激
↓
GnRH受容体がダウンレギュレーション(感受性↓)
↓
下垂体からのLH・FSH分泌↓
↓
精巣でのテストステロン産生↓
↓
前立腺がん増殖↓
(一過性にLH・テストステロンが上昇 → 症状悪化の可能性)
【GnRH受容体拮抗薬(デガレリクス)の機序】
GnRH受容体を直接遮断(競合的拮抗)
↓
LH・FSH分泌↓(即時)
↓
テストステロン↓
↓
前立腺がん増殖↓
投与初期(1〜2週間)はフレアアップ
フレアアップなし(直接遮断のため)
→ 骨転移患者など、フレアアップが危険な場合に有利
| 薬物 | 種類 | 機序 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| リュープロレリン | GnRHアゴニスト(持続投与) | GnRH受容体ダウンレギュレーション→FSH/LH↓→テストステロン↓ | 前立腺がん・子宮内膜症。初期フレアアップあり |
| ゴセレリン | GnRHアゴニスト | 同上 | 皮下埋込み。前立腺がん・乳がん |
| デガレリクス | GnRH受容体拮抗薬 | GnRH受容体を直接遮断→LH・FSH↓→テストステロン↓ | 前立腺がん。フレアアップなし |
🦋 橋本病と甲状腺機能低下症
橋本病は自己免疫性甲状腺炎(抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体)→ 甲状腺が慢性炎症 → 甲状腺機能低下症。女性に多い(男女比1:10)。
| 項目 | バセドウ病(機能亢進) | 橋本病(機能低下) |
|---|---|---|
| TSH | ↓(TSH受容体抗体が刺激) | ↑(ネガティブフィードバック解除) |
| FT₄ | ↑ | ↓ |
| 体重 | 減少 | 増加(代謝低下) |
| 脈拍 | 頻脈 | 徐脈 |
| コレステロール | 低下 | 上昇(LDL受容体↓) |
| 特徴的症状 | 眼球突出・甲状腺腫大 | 浮腫・倦怠感・粘液水腫 |
治療:甲状腺機能低下症 → レボチロキシン(T₄製剤)を補充
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | テトラコサクチド:ACTH受容体(MC2R)刺激→コルチゾール↑。クッシング症候群の診断に使用 |
| 2 | メチラポン:**11β-ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)**阻害→コルチゾール↓(3β-HSD阻害ではない!) |
| 3 | フィナステリド:5α還元酵素Ⅱ型阻害→DHT↓。男性型脱毛症・前立腺肥大症 |
| 4 | デュタステリド:5α還元酵素Ⅰ型+Ⅱ型阻害→DHT↓。前立腺肥大症 |
| 5 | クロミフェン:視床下部エストロゲン受容体を拮抗→GnRH↑→FSH/LH↑→排卵誘発 |
| 6 | カベルゴリン:下垂体D₂受容体を「刺激」→プロラクチン↓(「遮断」と混同しないこと!) |
| 7 | GnRHアゴニスト(リュープロレリン):持続刺激→受容体ダウンレギュレーション→FSH/LH↓。初期フレアアップあり |
| 8 | デガレリクス(GnRH拮抗薬):GnRH受容体を直接遮断→即時にLH/FSH↓。フレアアップなし |
| 9 | 橋本病(甲状腺機能低下):TSH↑・FT₄↓・体重増加・徐脈・高コレステロール血症。治療:レボチロキシン |
| 10 | オクトレオチド:ソマトスタチン受容体刺激→GH・インスリン・グルカゴン分泌↓。先端巨大症に使用 |
📝 国試過去問チェック
第107回 問38(必須問題)
メチラポンによるコルチゾール産生抑制の機序はどれか。1つ選べ。
1. 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌抑制
2. ソマトスタチンの分泌亢進
3. 副腎皮質細胞壊死
4. 3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素の阻害
5. 11β-水酸化酵素の阻害
解答と解説を見る
正解:5
5○ メチラポンは11β-水酸化酵素(CYP11B1)を阻害してコルチゾール合成を抑制する。
1✗ ACTH抑制は糖質コルチコイドのネガティブフィードバックの結果であり、メチラポンの直接作用ではない。
4✗ 3β-HSD阻害はアミノグルテチミドの機序(メチラポンではない)。
第107回 問188(一般問題)
橋本病と診断された42歳女性の状態として考えられるのはどれか。2つ選べ。
1. 体重が著しく減少している
2. 頻脈が認められる
3. 高コレステロール血症が認められる
4. 血清TSH値が高い
5. 副甲状腺ホルモンの分泌が亢進している
解答と解説を見る
正解:3・4
3○ 甲状腺機能低下 → 代謝低下 → LDL受容体↓ → 高コレステロール血症。
4○ 甲状腺ホルモン(T₄)低下 → ネガティブフィードバック解除 → TSH高値。
1✗ 甲状腺機能低下では体重増加(代謝低下のため)。
2✗ 甲状腺機能低下では徐脈(頻脈はバセドウ病)。
5✗ 副甲状腺(カルシウム調節)は甲状腺とは別器官で橋本病では影響を受けない。
第108回 問39(必須問題)
デガレリクスの抗前立腺がん作用の機序はどれか。1つ選べ。
1. アンドロゲン受容体遮断
2. エストロゲン受容体刺激
3. GnRH受容体遮断
4. アロマターゼ阻害
5. 5α-還元酵素阻害
解答と解説を見る
正解:3
3○ デガレリクスはGnRH受容体を競合的に遮断(アンタゴニスト)→ 下垂体からのLH・FSH分泌↓ → 精巣でのテストステロン産生↓ → 前立腺がん細胞の増殖↓。
1✗ アンドロゲン受容体遮断はビカルタミド・エンザルタミド。
4✗ アロマターゼ阻害はレトロゾール(乳がん・不妊治療)。
5✗ 5α-還元酵素阻害はフィナステリド・デュタステリド(前立腺肥大症)。
第111回 問166(一般問題)
ホルモン関連薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. テトラコサクチドは、副腎皮質束状層のACTH受容体を刺激して、糖質コルチコイドの生成・分泌を促す。
2. オシロドロスタットは、ソマトスタチン受容体を刺激して、成長ホルモンや消化管ホルモンの分泌を持続的に抑制する。
3. カベルゴリンは、下垂体前葉のドパミンD₂受容体を遮断して、プロラクチン分泌を抑制する。
4. フィナステリドは、5α-還元酵素を阻害して、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を抑制する。
5. メチラポンは、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素を阻害して、アルドステロン生成を抑制する。
解答と解説を見る
正解:1・4
1○ テトラコサクチド=ACTH製剤。ACTH受容体刺激 → コルチゾール産生↑。
4○ フィナステリド=5α還元酵素阻害 → DHT産生↓。
2✗ オシロドロスタットは11β-ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)阻害薬(ソマトスタチン受容体刺激はオクトレオチド)。
3✗ カベルゴリンはD₂受容体を**「刺激」する(「遮断」ではない)。ドパミンがプロラクチン分泌を抑制するため、刺激することで分泌↓。
5✗ メチラポンは11β-ヒドロキシラーゼ**を阻害(3β-HSDではない)。
