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⚛️ 物理

質量分析法とイオン化法

📅 2026年5月19日
📖 この記事でわかること
  • 質量分析の基本フロー(イオン化→質量分離→検出)を説明できる
  • ESI・APCI・EI・MALDI・FABの特徴と適用対象を区別できる
  • LC/MSとGC/MSで用いるイオン化法を正しく選択できる
  • GCの検出器(ECD・FID)と誘導体化の目的を説明できる
  • McLafferty転位・ラジカル開裂などフラグメント化の種類を区別できる
目次
  1. 1.質量分析の基本フロー
  2. 2.イオン化法の分類
  3. ソフトイオン化(分子を壊しにくい → 分子イオンピーク [M+H]⁺ を得やすい)
  4. ハードイオン化(分子が開裂 → フラグメントピーク多数)
  5. 3.ガスクロマトグラフィー(GC)の検出器と誘導体化
  6. 主な検出器
  7. 誘導体化
  8. 4.フラグメンテーション
  9. 5.医薬品分析への応用
  10. 6.国試頻出まとめ
  11. 7.国試過去問チェック

🔬 質量分析の基本フロー

試料 → イオン化(イオン源)→ 質量分離(m/z)→ 検出

ステップ 内容
イオン化 試料を気相イオンに変換(最重要ステップ)
質量分離 m/z(質量電荷比)で分離(四重極・TOF など)
検出 各 m/z のイオン強度を記録

イオン化法の選択が最重要。試料の揮発性・分子量・極性に合わせて選ぶ。


⚡ イオン化法の分類

ソフトイオン化(分子を壊しにくい → 分子イオンピーク [M+H]⁺ を得やすい)

名称 略称 特徴 主な用途
エレクトロスプレーイオン化 ESI 液体試料をスプレー・多価イオン生成 LC/MSの第一選択・生体高分子
大気圧化学イオン化 APCI コロナ放電でイオン化・1価イオン中心 LC/MSの補完(低〜中分子)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化 MALDI レーザー照射・主に1価イオン タンパク質・DNA(MALDI-TOF)
高速原子衝撃 FAB 高速原子ビームで脱離 旧式・現在はESIに置き換え

ハードイオン化(分子が開裂 → フラグメントピーク多数)

名称 略称 特徴 主な用途
電子イオン化 EI 70 eV 電子線・フラグメント豊富 GC/MSの標準法・揮発性低分子
化学イオン化 CI 試薬ガスとの反応・EI より穏やか GC/MS・分子量確認

⚠️ LC/MS と GC/MS のイオン化法を混同しない!

装置 対象物質 代表的イオン化法
LC/MS 不揮発性・熱不安定・高分子 ESI(第一選択)、APCI
GC/MS 揮発性・熱安定の低分子 EI(標準)、CI

MALDI は MALDI-TOF として単独使用。通常 LC/MS とは組み合わせない。


🧪 ガスクロマトグラフィー(GC)の検出器と誘導体化

主な検出器

検出器 略称 検出対象 特徴
電子捕獲検出器 ECD ハロゲン化合物・農薬・PCB 電子親和性の高い化合物に高感度
水素炎イオン化検出器 FID C−H 結合を有する有機化合物 汎用性が高い
熱伝導度検出器 TCD 普遍検出・無機ガスも検出 感度は低い

⚠️ ECD は C−H 結合の化合物には感度が低い! C−H 結合の検出は FID
ECD は農薬・PCB・ハロゲン化化合物の検出に使われる。

誘導体化

難揮発性物質・熱不安定物質をGCで分析するために、誘導体化(化学修飾)を行う。

誘導体化 目的
トリメチルシリル(TMS)化 揮発性を増す・熱安定性を上げる OH, NH, COOH 基を TMS 化
メチル化 揮発性を増す カルボン酸 → メチルエステル
アシル化 アミノ酸などの誘導体化 アセチル化

TMS 化(トリメチルシリル化)は難揮発性物質の GC 分析を可能にする代表的誘導体化!


💥 フラグメンテーション

EI などハードイオン化では分子が開裂し、特徴的なフラグメントピークが得られる。

フラグメント化機構 特徴
McLafferty(マクラファティー)転位 γ位のHが転位してβ開裂 → 特定の m/z ケトン・アルデヒド・エステルに特徴的
ラジカル開裂 結合が均等開裂し安定ラジカルを生成 C−C 結合の単純開裂
α開裂 ヘテロ原子の隣(α位)で開裂 アミン・アルコール・ケトン

EI のフラグメントパターンはライブラリー検索(NIST など)で構造推定に利用できる。


💊 医薬品分析への応用

分析目的 使用法
微量薬物・代謝物の定量 LC/MS-MS(タンデムMS)が標準
タンパク質の同定・定量 ESI-MS または MALDI-TOF
農薬・残留物質スクリーニング GC/MS(EI)+ ライブラリー照合
分子量測定 MALDI-TOF(高分子量タンパク質)
体内動態(TDM)研究 LC/MS-MS による高感度定量

📋 国試頻出まとめ

# ポイント 内容
1 LC/MS のイオン化 ESI(第一選択)・APCI
2 GC/MS のイオン化 EI(標準)・CI
3 ESI の特徴 多価イオン生成・生体高分子に最適・ソフトイオン化
4 EI の特徴 ハードイオン化・フラグメント豊富・揮発性低分子
5 ECD の検出対象 ハロゲン化合物・農薬(C-H結合ではない)
6 TMS 化 難揮発性物質の誘導体化でGC分析を可能にする
7 MALDI の特徴 1価イオン中心・MALDI-TOF として単独使用
8 McLafferty 転位 γ位のH転位によるβ開裂(質量スペクトルのフラグメント)
9 FAB 旧式・現在はほぼ ESI に置き換え

📝 国試過去問チェック

第107回薬剤師国家試験 問5(必須)

液体クロマトグラフィー/質量分析法において、用いられるイオン化法はどれか。1つ選べ。

1. エレクトロスプレーイオン化(ESI)法

2. 化学イオン化(CI)法

3. 高速原子衝撃(FAB)法

4. 電子イオン化(EI)法

5. マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法

解答と解説を見る

正解:1

1○ ESI(エレクトロスプレーイオン化)は液体試料を直接スプレー化して大気圧下でイオンを生成するソフトイオン化法。LC/MS の標準的イオン化法。正しい。

2✗ CI(化学イオン化)は気体試薬イオンを使う気相イオン化法で、GC/MS に用いられる。LC とは組み合わせない。

3✗ FAB(高速原子衝撃)は旧式のソフトイオン化法で、現在は ESI にほぼ置き換えられている。LC/MS の標準法ではない。

4✗ EI(電子イオン化)は 70 eV の電子線を照射するハードイオン化法で、GC/MS の標準法。揮発性低分子向けで、LC とは組み合わせない。

5✗ MALDI はレーザー照射によるソフトイオン化法だが、通常 MALDI-TOF として単独使用される。LC/MS とは組み合わせない。


第109回薬剤師国家試験 問100(一般)

ガスクロマトグラフィーに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 電子捕獲検出器は、主にC−H結合を有する有機化合物の検出に用いられる。

2. 定量には内標準法が用いられるが、絶対検量線法は用いられない。

3. 難揮発性物質の誘導体化の1つにトリメチルシリル化がある。

4. カラム恒温槽の温度をある温度から一定速度で上昇させると、上昇させない場合と比較して分離時間が長くなる。

5. 電子イオン化及び化学イオン化はガスクロマトグラフィー/質量分析法のイオン化法に用いられる。

解答と解説を見る

正解:3、5

3○ トリメチルシリル(TMS)化はヒドロキシ基やアミノ基などを TMS 基で置換して揮発性を高め、難揮発性物質のGC分析を可能にする誘導体化法。正しい。

5○ EI(電子イオン化)と CI(化学イオン化)はいずれも GC/MS に用いられるイオン化法。EI はハードイオン化(フラグメント豊富)、CI はソフトイオン化(分子イオン確認向き)。正しい。

1✗ 電子捕獲検出器(ECD)はハロゲン化合物・農薬・PCB など電子親和性の高い化合物の検出に高感度。C−H 結合を有する一般的な有機化合物には感度が低い(C-H検出は FID)。

2✗ GC の定量には内標準法と絶対検量線法の両方が使用できる。「絶対検量線法は用いられない」は誤り。

4✗ カラム温度を一定速度で上昇させる昇温分析では、保持時間が短縮される(溶出が早まる)。「分離時間が長くなる」は誤り。


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