🔬 質量分析の基本フロー
試料 → イオン化(イオン源)→ 質量分離(m/z)→ 検出
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| イオン化 | 試料を気相イオンに変換(最重要ステップ) |
| 質量分離 | m/z(質量電荷比)で分離(四重極・TOF など) |
| 検出 | 各 m/z のイオン強度を記録 |
✅ イオン化法の選択が最重要。試料の揮発性・分子量・極性に合わせて選ぶ。
⚡ イオン化法の分類
ソフトイオン化(分子を壊しにくい → 分子イオンピーク [M+H]⁺ を得やすい)
| 名称 | 略称 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| エレクトロスプレーイオン化 | ESI | 液体試料をスプレー・多価イオン生成 | LC/MSの第一選択・生体高分子 |
| 大気圧化学イオン化 | APCI | コロナ放電でイオン化・1価イオン中心 | LC/MSの補完(低〜中分子) |
| マトリックス支援レーザー脱離イオン化 | MALDI | レーザー照射・主に1価イオン | タンパク質・DNA(MALDI-TOF) |
| 高速原子衝撃 | FAB | 高速原子ビームで脱離 | 旧式・現在はESIに置き換え |
ハードイオン化(分子が開裂 → フラグメントピーク多数)
| 名称 | 略称 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 電子イオン化 | EI | 70 eV 電子線・フラグメント豊富 | GC/MSの標準法・揮発性低分子 |
| 化学イオン化 | CI | 試薬ガスとの反応・EI より穏やか | GC/MS・分子量確認 |
⚠️ LC/MS と GC/MS のイオン化法を混同しない!
| 装置 | 対象物質 | 代表的イオン化法 |
|---|---|---|
| LC/MS | 不揮発性・熱不安定・高分子 | ESI(第一選択)、APCI |
| GC/MS | 揮発性・熱安定の低分子 | EI(標準)、CI |
✅ MALDI は MALDI-TOF として単独使用。通常 LC/MS とは組み合わせない。
🧪 ガスクロマトグラフィー(GC)の検出器と誘導体化
主な検出器
| 検出器 | 略称 | 検出対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 電子捕獲検出器 | ECD | ハロゲン化合物・農薬・PCB | 電子親和性の高い化合物に高感度 |
| 水素炎イオン化検出器 | FID | C−H 結合を有する有機化合物 | 汎用性が高い |
| 熱伝導度検出器 | TCD | 普遍検出・無機ガスも検出 | 感度は低い |
⚠️ ECD は C−H 結合の化合物には感度が低い! C−H 結合の検出は FID。
ECD は農薬・PCB・ハロゲン化化合物の検出に使われる。
誘導体化
難揮発性物質・熱不安定物質をGCで分析するために、誘導体化(化学修飾)を行う。
| 誘導体化 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| トリメチルシリル(TMS)化 | 揮発性を増す・熱安定性を上げる | OH, NH, COOH 基を TMS 化 |
| メチル化 | 揮発性を増す | カルボン酸 → メチルエステル |
| アシル化 | アミノ酸などの誘導体化 | アセチル化 |
✅ TMS 化(トリメチルシリル化)は難揮発性物質の GC 分析を可能にする代表的誘導体化!
💥 フラグメンテーション
EI などハードイオン化では分子が開裂し、特徴的なフラグメントピークが得られる。
| フラグメント化機構 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| McLafferty(マクラファティー)転位 | γ位のHが転位してβ開裂 → 特定の m/z | ケトン・アルデヒド・エステルに特徴的 |
| ラジカル開裂 | 結合が均等開裂し安定ラジカルを生成 | C−C 結合の単純開裂 |
| α開裂 | ヘテロ原子の隣(α位)で開裂 | アミン・アルコール・ケトン |
✅ EI のフラグメントパターンはライブラリー検索(NIST など)で構造推定に利用できる。
💊 医薬品分析への応用
| 分析目的 | 使用法 |
|---|---|
| 微量薬物・代謝物の定量 | LC/MS-MS(タンデムMS)が標準 |
| タンパク質の同定・定量 | ESI-MS または MALDI-TOF |
| 農薬・残留物質スクリーニング | GC/MS(EI)+ ライブラリー照合 |
| 分子量測定 | MALDI-TOF(高分子量タンパク質) |
| 体内動態(TDM)研究 | LC/MS-MS による高感度定量 |
📋 国試頻出まとめ
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | LC/MS のイオン化 | ESI(第一選択)・APCI |
| 2 | GC/MS のイオン化 | EI(標準)・CI |
| 3 | ESI の特徴 | 多価イオン生成・生体高分子に最適・ソフトイオン化 |
| 4 | EI の特徴 | ハードイオン化・フラグメント豊富・揮発性低分子 |
| 5 | ECD の検出対象 | ハロゲン化合物・農薬(C-H結合ではない) |
| 6 | TMS 化 | 難揮発性物質の誘導体化でGC分析を可能にする |
| 7 | MALDI の特徴 | 1価イオン中心・MALDI-TOF として単独使用 |
| 8 | McLafferty 転位 | γ位のH転位によるβ開裂(質量スペクトルのフラグメント) |
| 9 | FAB | 旧式・現在はほぼ ESI に置き換え |
📝 国試過去問チェック
第107回薬剤師国家試験 問5(必須)
液体クロマトグラフィー/質量分析法において、用いられるイオン化法はどれか。1つ選べ。
1. エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
2. 化学イオン化(CI)法
3. 高速原子衝撃(FAB)法
4. 電子イオン化(EI)法
5. マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法
解答と解説を見る
正解:1
1○ ESI(エレクトロスプレーイオン化)は液体試料を直接スプレー化して大気圧下でイオンを生成するソフトイオン化法。LC/MS の標準的イオン化法。正しい。
2✗ CI(化学イオン化)は気体試薬イオンを使う気相イオン化法で、GC/MS に用いられる。LC とは組み合わせない。
3✗ FAB(高速原子衝撃)は旧式のソフトイオン化法で、現在は ESI にほぼ置き換えられている。LC/MS の標準法ではない。
4✗ EI(電子イオン化)は 70 eV の電子線を照射するハードイオン化法で、GC/MS の標準法。揮発性低分子向けで、LC とは組み合わせない。
5✗ MALDI はレーザー照射によるソフトイオン化法だが、通常 MALDI-TOF として単独使用される。LC/MS とは組み合わせない。
第109回薬剤師国家試験 問100(一般)
ガスクロマトグラフィーに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 電子捕獲検出器は、主にC−H結合を有する有機化合物の検出に用いられる。
2. 定量には内標準法が用いられるが、絶対検量線法は用いられない。
3. 難揮発性物質の誘導体化の1つにトリメチルシリル化がある。
4. カラム恒温槽の温度をある温度から一定速度で上昇させると、上昇させない場合と比較して分離時間が長くなる。
5. 電子イオン化及び化学イオン化はガスクロマトグラフィー/質量分析法のイオン化法に用いられる。
解答と解説を見る
正解:3、5
3○ トリメチルシリル(TMS)化はヒドロキシ基やアミノ基などを TMS 基で置換して揮発性を高め、難揮発性物質のGC分析を可能にする誘導体化法。正しい。
5○ EI(電子イオン化)と CI(化学イオン化)はいずれも GC/MS に用いられるイオン化法。EI はハードイオン化(フラグメント豊富)、CI はソフトイオン化(分子イオン確認向き)。正しい。
1✗ 電子捕獲検出器(ECD)はハロゲン化合物・農薬・PCB など電子親和性の高い化合物の検出に高感度。C−H 結合を有する一般的な有機化合物には感度が低い(C-H検出は FID)。
2✗ GC の定量には内標準法と絶対検量線法の両方が使用できる。「絶対検量線法は用いられない」は誤り。
4✗ カラム温度を一定速度で上昇させる昇温分析では、保持時間が短縮される(溶出が早まる)。「分離時間が長くなる」は誤り。
