🧬 ゲノム・染色体・遺伝子の違い
| 用語 | 定義 |
|---|---|
| ゲノム | 生物種ごとに1セットとして定義される、すべての核酸上の遺伝情報の総体 |
| 染色体 | DNAがヒストンに巻きついた構造(ヒト:46本・23対) |
| 遺伝子 | タンパク質をコードするDNAの特定の領域 |
| エキソン | mRNAに残るコード配列(翻訳される部分) |
| イントロン | スプライシングで除去される非コード配列 |
| テロメア | 染色体末端の反復配列(TTAGGG)。分裂ごとに短縮 |
| ヒストン | DNAを巻きつける塩基性タンパク質 |
✅ ゲノム ≠ 遺伝子:ゲノムはすべての遺伝情報の総体(コード・非コード含む)
✅ ヒトゲノム:約30億塩基対、タンパク質コード遺伝子は約2万個、非コード部分が約97%
⚠️ ヒストンはタンパク質(遺伝情報そのものではない)
🔄 セントラルドグマ
DNA →(複製)→ DNA
DNA →(転写)→ mRNA →(翻訳)→ タンパク質
※逆転写酵素:RNA → DNA も可能(レトロウイルス)
| 段階 | 場所 | 酵素 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 複製 | 核 | DNAポリメラーゼ | S期・半保存的複製。5'→3'方向のみ合成 |
| 転写 | 核 | RNAポリメラーゼ | 鋳型鎖を読んでmRNAを合成 |
| スプライシング | 核 | スプライソソーム | イントロン除去→成熟mRNA |
| 翻訳 | 細胞質(リボソーム) | ー | コドン(3塩基)→アミノ酸 |
⚠️ DNAポリメラーゼは5'→3'方向にしか合成できない(後ろ向き鎖はラギング鎖としてオカザキ断片を形成)
RNA の種類と特徴
| RNA種 | 大きさ | 主な特徴 |
|---|---|---|
| rRNA | 大きい | 原核(16S/23S/5S)と真核(18S/28S/5.8S/5S)で異なる。リボザイム活性あり |
| tRNA | 短い(約76塩基) | クローバー葉構造。アンチコドン+アミノ酸受容末端(CCA-3') |
| mRNA | 様々 | 5'末端にキャップ(m7G)・3'末端にポリA尾。ウラシル含有 |
✅ mRNAの5'末端=キャップ(m7G)、3'末端=ポリA尾
⚠️ RNAはウラシル含有(チミンはDNAのみ)
原核細胞 vs 真核細胞の比較
| 特徴 | 原核細胞 | 真核細胞 |
|---|---|---|
| 転写・翻訳の同時進行 | 可能 | 不可能(核膜で隔離) |
| mRNA | ポリシストロニック | モノシストロニック |
| リボソーム | 70S(30S+50S) | 80S(40S+60S) |
| 翻訳開始配列 | SD配列 | コザック配列 |
✅ 原核=70S、真核=80S(「7より8の方が大きい」→真核が大きい)
⚠️ ミトコンドリアのリボソームは70S(細菌に由来する共生説を反映)
🧪 DNA変異の種類
| 変異の種類 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| ミスセンス変異 | 塩基置換 → 異なるアミノ酸 | タンパク質機能変化 |
| ナンセンス変異 | 塩基置換 → 終止コドン発生 | タンパク質が短くなる(早期終止) |
| サイレント変異 | 塩基が変わってもアミノ酸は変わらない(縮重) | 表現型変化なし |
| フレームシフト変異 | 塩基の挿入・欠失 → 読み枠がずれる | 全く異なるタンパク質 |
| 脱アミノ変異 | C→Uへ変換→修復されずT固定(C→T変換) | 最も多い自然変異 |
開始コドン:AUG(メチオニン)
終止コドン:UAA・UAG・UGA(アミノ酸をコードしない)
⚠️ フレームシフト変異の影響が最も大きい(変異以降のアミノ酸がすべて変わる)
✅ サイレント変異は表現型変化なし(コドンの縮重により同じアミノ酸が指定される)
DNA二重らせんの特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 鎖の方向 | 2本鎖が逆平行 |
| A-T塩基対 | 2本の水素結合 |
| G-C塩基対 | 3本の水素結合(G-C含量↑→Tm↑) |
| ピリミジン塩基 | T・C(Thymine・Cytosine) |
| プリン塩基 | A・G(Adenine・Guanine) |
✅ G-Cペアの方がA-Tより水素結合が多い→G-C含量が高いほどDNAが安定(Tm高い)
⚠️ プリン(A・G)はピリミジン(T・C)と相補的に結合(プリン同士・ピリミジン同士は結合しない)
🎯 がん遺伝子・がん抑制遺伝子
| 種類 | 変異の方向 | 代表例 |
|---|---|---|
| がん遺伝子 | 活性化変異→細胞増殖を促進 | RAS・HER2・BCR-ABL |
| がん抑制遺伝子 | 機能喪失変異→増殖を抑制できなくなる | TP53(p53)・RB1・BRCA1/2 |
✅ TP53(p53)=「ゲノムの守護者」:DNA損傷→G1停止・DNA修復誘導→アポトーシス誘導
✅ ヒトのがんの約50%でTP53変異が見られる
⚠️ がん遺伝子は「1アレル変異で発症(優性)」、がん抑制遺伝子は「両アレル変異が必要(劣性)」
🌱 iPS細胞・ES細胞・幹細胞
| 項目 | iPS細胞 | ES細胞 |
|---|---|---|
| 作製法 | 成体体細胞に山中因子(Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc)を導入→初期化 | 初期胚の内部細胞塊から樹立 |
| 多能性 | 多能性(三胚葉に分化可能) | 多能性(全能性ではない) |
| 倫理的問題 | 少ない(受精卵不要) | 胚の破壊が必要→倫理問題あり |
| 腫瘍形成 | 奇形腫(テラトーマ)リスク | 同様 |
✅ iPS細胞・ES細胞はともに「多能性」(全能性ではない)
✅ 造血幹細胞は多能性(単能性ではない)
⚠️ 組織幹細胞は非対称分裂が特徴(自己複製+分化型細胞を同時に産生)
🐭 遺伝子改変マウス
| 種類 | 作製法 | 特徴 |
|---|---|---|
| トランスジェニック(Tg) | 外来遺伝子をゲノムに組み込む | 組織特異的プロモーターで特定組織のみで発現可能 |
| ノックアウト(KO) | 相同組換え・ゲノム編集で標的遺伝子を破壊 | 永続的・完全な遺伝子欠損 |
| クローンマウス | 核移植(体細胞クローン)で作製 | 体外受精とは異なる |
siRNAとの違い:
| siRNA | ノックアウト(KO) | |
|---|---|---|
| 作用対象 | mRNAを分解 | ゲノムDNA自体を破壊 |
| 持続性 | 一時的・不完全(ノックダウン) | 永続的・完全 |
ゲノム編集(CRISPR-Cas9):guide RNA(gRNA)がCas9を標的部位へ誘導→二本鎖切断→NHEJ(エラーあり→遺伝子破壊)またはHR(正確な挿入)
✅ Tgマウス=外来遺伝子の追加、KOマウス=遺伝子の破壊
⚠️ siRNAはノックダウン(一時的)≠ KO(永続的)
⚠️ クローンマウスの作製法は核移植(体外受精ではない)
💊 組換え体医薬品とコンパニオン診断
組換え体医薬品の生産プロセス
目的遺伝子(cDNA)→ 発現ベクターに挿入
→ 宿主細胞(大腸菌・CHO細胞・酵母等)に導入
→ 培養・発現誘導 → タンパク質を精製 → 組換え体医薬品
| 宿主 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|
| 大腸菌 | 安価・高速・グリコシル化なし | インスリン・インターフェロン |
| CHO細胞 | ヒト型グリコシル化可能 | 治療用抗体(トラスツズマブ等) |
✅ 抗体医薬品の製造にはCHO細胞(グリコシル化が必要なため)
⚠️ 大腸菌はグリコシル化ができない→糖タンパク質の製造には不適
コンパニオン診断と関連遺伝子
| 遺伝子変異 | がんの種類 | 検査の種類 | 関連薬 |
|---|---|---|---|
| BRCA1/2 | 乳がん・卵巣がん | 生殖細胞系列(先天的) | オラパリブ(PARP阻害薬) |
| EGFR | 非小細胞肺がん | 体細胞性(腫瘍組織) | ゲフィチニブ |
| ALK融合遺伝子 | 非小細胞肺がん | 体細胞性 | アレクチニブ |
| BRAF V600E | 悪性黒色腫 | 体細胞性 | ベムラフェニブ |
| HER2増幅 | 乳がん・胃がん | 体細胞性 | トラスツズマブ |
✅ BRCA1/2は生殖細胞系列変異→全細胞に存在→遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)
⚠️ その他(EGFR・ALK・BRAF・HER2)は体細胞性変異(がん組織のみ)
📋 国試頻出まとめ
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | ゲノムの定義 | すべての核酸上の遺伝情報の総体(エキソン・イントロン含む) |
| 2 | mRNAの末端 | 5'末端=キャップ(m7G)、3'末端=ポリA尾 |
| 3 | リボソームの大きさ | 原核=70S、真核=80S |
| 4 | フレームシフト変異 | 塩基の挿入・欠失→読み枠がずれ→以降すべてのアミノ酸が変わる |
| 5 | iPS・ESの多能性 | どちらも多能性(全能性ではない) |
| 6 | 山中因子 | Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc(iPS細胞作製) |
| 7 | siRNA vs KO | siRNA=一時的ノックダウン、KO=永続的遺伝子破壊 |
| 8 | クローンマウス | 核移植で作製(体外受精ではない) |
| 9 | BRCA1/2 | 生殖細胞系列変異(他はすべて体細胞性変異) |
| 10 | CHO細胞 | グリコシル化可能→抗体医薬品の製造に使用 |
📝 国試過去問チェック
第111回薬剤師国家試験 問15(必須)
生物種ごとに1セットとして定義される、すべての核酸上の遺伝情報はどれか。1つ選べ。
- エキソン 2. イントロン 3. ヒストン 4. ゲノム 5. テロメア
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正解:4. ゲノム
4○ ゲノムとは、生物種が持つすべての遺伝情報(コード領域・非コード領域を含む全DNA)の総体。生物種ごとに1セットと定義される。
1✗ エキソン=mRNAに残るコード配列の一部。ゲノム全体ではない。
2✗ イントロン=スプライシングで除去される非コード配列。遺伝情報の一部に過ぎない。
3✗ ヒストン=DNAを巻きつける塩基性タンパク質。遺伝情報ではなくタンパク質。
5✗ テロメア=染色体末端の反復配列(TTAGGG)。遺伝情報の総体ではない。
第111回薬剤師国家試験 問118(一般)
RNAに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- rRNAの塩基配列は、原核生物と真核生物で同じである。
- rRNA中に存在するリボザイムは、ペプチド転移反応を触媒する。
- tRNAの塩基長は、他のRNAより短い。
- mRNAのキャップ構造は3'末端に存在する。
- RNAはチミンを含む。
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正解:2、3
2○ rRNAはリボザイム(酵素活性を持つRNA)として機能し、リボソーム中でペプチド結合形成(ペプチド転移反応)を触媒する。正しい。
3○ tRNAは約76塩基程度と短く、mRNAやrRNAより小さい。正しい。
1✗ rRNAの塩基配列は原核(16S・23S・5S)と真核(18S・28S・5.8S・5S)で異なる。原核と真核では種類も大きさも違う。
4✗ キャップ構造(m7G)は5'末端に存在する。3'末端にあるのはポリA尾。
5✗ RNAはウラシル(U)を含む。チミン(T)はDNAに含まれる塩基。
第111回薬剤師国家試験 問119(一般)
遺伝子改変マウスに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- クローンマウスは、体外受精によって作製される。
- トランスジェニックマウスでは、特定の組織でのみ目的遺伝子を発現させることができる。
- トランスジェニックマウスでは、外来遺伝子はミトコンドリアのゲノムに挿入される。
- siRNAを用いると、目的遺伝子が永続的にノックアウトされる。
- CRISPR-Cas9を用いたゲノム編集技術によりノックアウトマウスを作製できる。
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正解:2、5
2○ トランスジェニックマウスでは、組織特異的プロモーターを使用することで特定の組織のみで目的遺伝子を発現させることができる。正しい。
5○ CRISPR-Cas9はguide RNAで標的部位へCas9を誘導し、二本鎖切断を起こすことで遺伝子を破壊(ノックアウト)できる。正しい。
1✗ クローンマウスは核移植(体細胞クローニング)によって作製される。体外受精は精子と卵子を受精させる方法であり、クローン作製とは異なる。
3✗ 外来遺伝子は核ゲノムに組み込まれる。ミトコンドリアのゲノムではない。
4✗ siRNAはmRNAを分解する→一時的・不完全なノックダウン。永続的・完全なノックアウトにはゲノム編集が必要。
第110回薬剤師国家試験 問113(一般)
幹細胞に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 造血幹細胞は単能性を持つ。
- 組織幹細胞は対称分裂のみをする。
- ヒトiPS細胞は、成体の体細胞に複数の遺伝子を導入することで作製できる。
- ヒトES細胞は、初期胚の内部細胞塊から樹立される。
- ES細胞は全能性を持つ。
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正解:3、4
3○ iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、成体体細胞に山中因子(Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Myc)を導入することで初期化し作製する。正しい。
4○ ES細胞(胚性幹細胞)は受精卵が発育した初期胚(胚盤胞)の内部細胞塊を取り出して培養・樹立する。正しい。
1✗ 造血幹細胞は多能性を持ち、赤血球・白血球・血小板などすべての血球に分化できる。単能性(1種類のみ)ではない。
2✗ 組織幹細胞は非対称分裂が特徴。1回の分裂で「幹細胞1個(自己複製)+分化型細胞1個」を産生する。対称分裂のみではない。
5✗ ES細胞は多能性(三胚葉に分化可能)を持つが、全能性(胚外組織にも分化可能)ではない。全能性を持つのは受精卵のみ。
第109回薬剤師国家試験 問70(必須)
生殖細胞系列遺伝子変異の検査項目として正しいのはどれか。1つ選べ。
- EGFR遺伝子変異 2. ALK融合遺伝子 3. BRCA1/2遺伝子変異 4. BRAF V600E変異 5. HER2遺伝子増幅
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正解:3. BRCA1/2遺伝子変異
3○ BRCA1/2遺伝子変異は遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の原因。生殖細胞系列変異(先天的にすべての細胞に存在)であり、血液検査で検出できる。オラパリブ(PARP阻害薬)のコンパニオン診断として使用。
1✗ EGFR遺伝子変異は非小細胞肺がんの体細胞性変異(腫瘍組織のみ)。ゲフィチニブのコンパニオン診断。
2✗ ALK融合遺伝子は非小細胞肺がんの体細胞性変異。アレクチニブのコンパニオン診断。
4✗ BRAF V600E変異は悪性黒色腫の体細胞性変異。ベムラフェニブのコンパニオン診断。
5✗ HER2遺伝子増幅は乳がん・胃がんの体細胞性変異。トラスツズマブのコンパニオン診断。
