学習目標
分子軌道法とは
**分子軌道法(MO法)**では、電子は特定の原子に属さず、**分子全体に広がった軌道(分子軌道)**に入ります。
これは「電子が特定の原子のまわりを回る」と考える**原子軌道法(VB法)**とは異なるアプローチです。
⚠️ 最重要ポイント:電子は分子全体に広がる
分子軌道法では、電子は特定の原子に局在していない。これが原子軌道法と最大の違い。
結合性軌道と反結合性軌道
2つの原子軌道が重なると、2種類の分子軌道が生じます。
| 軌道の種類 | エネルギー | 核間電子密度 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 結合性軌道(σ, π) | 元の原子軌道より低い | 核間に増加 | 結合を強める |
| 反結合性軌道(σ, π)** | 元の原子軌道より高い | 核間で節(ゼロ) | 結合を弱める |
電子配置の3つの規則
電子が分子軌道に入る順序には、3つの規則があります。
① アウフバウ原理(構築原理)
エネルギーの低い軌道から順番に電子が入る。
高エネルギー軌道から入ることはありません。
② パウリの排他原理
1つの軌道には、逆向きスピンの電子が最大2個まで入れる。
- 同じスピン(↑↑)の2個は同一軌道に入れない
- 1つの軌道に3個以上入れない
③ フントの規則(最大多重度の規則)
エネルギーが等しい軌道(縮退軌道)には、できるだけ多くの軌道に1個ずつ入れてから、2個目を入れる。
結合次数の計算
| 結合次数 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 単結合(σ結合1本) | H₂, F₂ |
| 2 | 二重結合 | O₂, CO |
| 3 | 三重結合 | N₂ |
| 0 | 結合しない | He₂(存在しない) |
🏃 結合次数が大きい = 結合が強い = 結合距離が短い = 解離エネルギーが大きい
代表的な分子の電子配置
H₂(水素分子)
- 電子数:2個
- σ結合性軌道に2個(反結合性に0個)
- 結合次数 = (2 - 0) / 2 = 1 → 単結合
O₂(酸素分子)
- 電子数:16個
- 不対電子が2個存在 → 常磁性
- 結合次数 = 2(二重結合)
⚠️ O₂は不対電子をもつ!
O₂は電子式(ルイス構造)では二重結合に見えるが、分子軌道法では縮退した反結合性π*軌道に電子1個ずつが入り、不対電子が2個存在する。これが液体酸素が磁石に引き寄せられる(常磁性)理由。
N₂(窒素分子)
- 電子数:14個
- 結合次数 = 3(三重結合)
- N₂が非常に安定で反応しにくい理由がここにある
国試頻出まとめ
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 電子の広がり | 分子軌道法では電子は分子全体に広がる |
| 2 | パウリの排他原理 | 1軌道に逆スピンで最大2個、同スピン2個は不可 |
| 3 | アウフバウ原理 | 低エネルギー軌道から順に入る |
| 4 | 結合次数の式 | (結合性 − 反結合性)÷ 2 |
| 5 | O₂は常磁性 | 縮退π*軌道に不対電子2個をもつ |
