筋弛緩薬の分類
筋弛緩薬は作用部位によって大きく3つに分けられます。
| 分類 | 代表薬 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 末梢性(神経筋接合部)非脱分極型 | ロクロニウム・ベクロニウム | 全身麻酔時の筋弛緩 |
| 末梢性(神経筋接合部)脱分極型 | スキサメトニウム | 気管挿管・短時間処置 |
| 末梢性(筋小胞体) | ダントロレン | 悪性高熱症・痙縮 |
| 中枢性 | バクロフェン・チザニジン・エペリゾン | 脳卒中後痙縮・腰痛 |
末梢性筋弛緩薬(神経筋接合部)
非脱分極型(競合的nAChR遮断)
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を競合的に遮断 → 終板の脱分極を阻害 → 筋弛緩
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ロクロニウム | 速効性・中等度作用時間。全身麻酔の標準薬 |
| ベクロニウム | 中等度作用時間。心血管系への影響少ない |
| パンクロニウム | 長時間作用型。迷走神経遮断→頻脈 |
| アトラクリウム | 自発的に分解(Hofmann反応)。腎・肝機能低下でも使用可 |
拮抗薬(解除):ネオスチグミン(コリンエステラーゼ阻害で競合を解除)またはスガマデクス(ロクロニウム・ベクロニウムをカプセル化して直接除去)
脱分極型(持続的nAChR刺激)
nAChRを持続的に刺激(アゴニスト)→ 終板の持続的脱分極 → 筋が弛緩する(脱感作)
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| スキサメトニウム(サクシニルコリン) | 超速効・超短時間作用。気管挿管に使用。悪性高熱症リスクあり |
スキサメトニウムの注意点:
- 血清K⁺上昇(熱傷・広範外傷患者に禁忌)
- 悪性高熱症の誘因(フルハロタンと組み合わせで特に危険)
- スガマデクスは効果なし(スキサメトニウムはロクロニウムではないため)
スガマデクス(修飾シクロデキストリン)
ロクロニウム・ベクロニウムを分子内にカプセル化して血中から取り除く
→ 薬理学的拮抗ではなく物理的除去(全く新しい機序)
特徴:ネオスチグミンと違い抗コリン薬の前投与不要、確実で速い回復
末梢性筋弛緩薬(筋小胞体)
ダントロレン
骨格筋のリアノジン受容体(RyR1)に結合 → 筋小胞体からのCa²⁺遊離を抑制 → 筋収縮↓
| 適応 | 特徴 |
|---|---|
| 悪性高熱症 | 揮発性麻酔薬・スキサメトニウムにより誘発。緊急時は静注 |
| 痙縮(脊髄損傷・脳卒中後) | 経口投与 |
| 悪性症候群 | 抗精神病薬による高熱・筋硬直 |
悪性高熱症の治療:ダントロレン静注+体冷却+補液が第一選択
中枢性筋弛緩薬
脊髄や脳幹の多シナプス反射を抑制します。
| 薬物 | 作用機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| バクロフェン | GABA_B受容体刺激 → γ運動ニューロン抑制 | 痙縮(脊髄損傷・多発性硬化症)。髄腔内投与も可 |
| チザニジン | α₂受容体刺激 → 脊髄多シナプス反射抑制 | 痙縮・腰痛。眠気の副作用 |
| エペリゾン | Ca²⁺拮抗+中枢作用 | 腰痛症・頸肩腕症候群 |
| メトカルバモール | 脊髄抑制 | 筋スパズム |
第111回 国試過去問チェック
問153(第111回 一般問題)
筋弛緩薬に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ロクロニウムは、電位依存性Na⁺チャネルに結合して、終板の脱分極を抑制する。
- スキサメトニウムの筋弛緩作用は、スガマデクスの併用により減弱される。
- ダントロレンは、骨格筋のリアノジン受容体に作用して、筋小胞体からのCa²⁺遊離を抑制する。
- バクロフェンは、γ-アミノ酪酸GABA_A受容体を刺激して、γ運動ニューロンの活動を抑制する。
- チザニジンは、アドレナリンα₂受容体を刺激して、脊髄の多シナプス反射を抑制する。
正答:3・5
解説:
- 1:× ロクロニウムはnAChR(ニコチン受容体)を競合的に遮断(Na⁺チャネルではない)
- 2:× スガマデクスはロクロニウムに有効だがスキサメトニウムには無効
- 3:○ ダントロレン=リアノジン受容体→Ca²⁺遊離抑制
- 4:× バクロフェンはGABA_B受容体(GABA_Aではない)
- 5:○ チザニジン=α₂受容体刺激→脊髄多シナプス反射抑制
