🦴 骨代謝の基本
骨は**破骨細胞(骨吸収)と骨芽細胞(骨形成)**のバランスで維持される。骨粗しょう症では骨吸収>骨形成の状態。
- 骨吸収を抑える薬:ビスホスホネート・SERM・デノスマブ・カルシトニン
- 骨形成を促す薬:テリパラチド・ロモソズマブ
骨吸収抑制薬
ビスホスホネート製剤
メバロン酸経路
アセチルCoA → HMG-CoA → メバロン酸
↓
ファルネシルピロリン酸(FPP)
← ファルネシルピロリン酸合成酵素
↑ ビスホスホネートがこの酵素を阻害
FPPが産生されない
↓
破骨細胞内のタンパク質プレニル化↓
↓
破骨細胞の機能↓・アポトーシス誘導
↓
骨吸収↓
| 薬物 | 投与方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| アレンドロン酸 | 経口(週1回) | 骨粗しょう症の第一選択 |
| リセドロン酸 | 経口(週1回・月1回) | アレンドロン酸と同等の効果 |
| ゾレドロン酸 | 静注(年1回) | 最強のビスホスホネート |
| ミノドロン酸 | 経口(月1回) | 国産ビスホスホネート |
服用上の注意:起床時に多量の水で服用し、30分は横にならない(食道潰瘍防止)
副作用:顎骨壊死(抜歯前に休薬を検討)・非定型大腿骨骨折
SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
【SERMの組織選択的作用】
【骨組織】
エストロゲン受容体(ER)を選択的に活性化(アゴニスト)
↓
破骨細胞の活性↓
↓
骨吸収↓ → 骨密度維持
【乳腺・子宮】
エストロゲン受容体を拮抗(アンタゴニスト)
↓
乳がん・子宮体がんリスク↑なし
(エストロゲン補充療法とは異なる)
副作用:静脈血栓塞栓症(DVT)に注意
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ラロキシフェン | 閉経後骨粗しょう症。静脈血栓塞栓症に注意 |
| バゼドキシフェン | ラロキシフェンの後継薬 |
デノスマブ(抗RANKL抗体)
通常の破骨細胞分化経路
骨芽細胞がRANKL(破骨細胞分化因子)を発現
↓
RANKLが破骨細胞前駆細胞のRANKに結合
↓
破骨細胞に分化・活性化
↓
骨吸収↑
【デノスマブの作用】
RANKLに結合(抗体)
↓
RANKLとRANKの結合を阻害
↓
破骨細胞への分化・活性化↓
↓
骨吸収↓
皮下注(6ヶ月1回) 腎機能低下でも使用可 低Ca血症に注意
カルシトニン
甲状腺のC細胞から分泌されるホルモン。破骨細胞のカルシトニン受容体を刺激 → 骨吸収↓ + 尿中Ca²⁺排泄↑
カルシトリオール(活性型ビタミンD₃)はカルシトニン受容体ではなくビタミンD受容体に作用する
骨形成促進薬
テリパラチド(PTH誘導体)
副甲状腺ホルモン(PTH)の活性断片
【間欠投与(骨形成↑)】
骨芽細胞のPTH1R(副甲状腺ホルモン1型受容体)に結合
↓
骨芽細胞の活性化・増殖促進
↓
骨形成↑↑(唯一の強力な骨形成促進薬)
皮下注(毎日または週1回の製剤あり) 投与期間24ヶ月まで 持続投与では骨吸収↑(逆効果)→ 必ず間欠投与
ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)
通常の骨代謝
スクレロスチン(骨細胞が産生)
↓
Wntシグナル伝達を抑制
↓
骨芽細胞の活性が抑えられる → 骨形成↓
【ロモソズマブの作用】
スクレロスチンに結合(抗体)
↓
スクレロスチンによるWntシグナル抑制を解除
↓
古典的Wntシグナル伝達が活性化
↓
骨形成↑ + 骨吸収↓(二重効果)
皮下注(月1回×12ヶ月) 心血管イベント歴のある患者には慎重に
☀️ 活性型ビタミンD₃製剤
腸管からのCa²⁺吸収促進 → 骨石灰化を助ける(骨形成補助)
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| カルシトリオール | ビタミンD受容体に結合(カルシトニン受容体ではない!)。高Ca血症に注意 |
| アルファカルシドール | 肝で活性化される |
🌿 ビタミンK₂製剤|メナテトレノン
【メナテトレノン(ビタミンK₂)の作用機序】
骨芽細胞がオステオカルシン(骨基質タンパク質)を産生
↓
オステオカルシンのグルタミン酸残基を
γ-カルボキシル化(γ-carboxylation)
← ビタミンK₂(メナテトレノン)が補酵素として必要
↓
活性型オステオカルシンが生成
↓
ハイドロキシアパタイト(骨の主成分)と結合
↓
骨基質が強化 → 骨形成促進・骨密度↑
(ビタミンK₂がワルファリンの抗凝固作用に拮抗)
ワルファリン服用中は禁忌 脂溶性のため食後服用(食後吸収↑)
📊 骨粗しょう症治療薬の作用機序一覧
| 薬物 | 作用分類 | キーワード |
|---|---|---|
| アレンドロン酸 | 骨吸収抑制 | ファルネシルピロリン酸合成酵素阻害 |
| ラロキシフェン | 骨吸収抑制 | 骨エストロゲン受容体活性化(SERM) |
| デノスマブ | 骨吸収抑制 | RANKL結合・抗体 |
| カルシトリオール | 骨形成補助 | ビタミンD受容体 |
| メナテトレノン | 骨形成補助 | オステオカルシンのγ-カルボキシ化 |
| テリパラチド | 骨形成促進 | PTH1R刺激・間欠投与 |
| ロモソズマブ | 骨形成促進+骨吸収抑制 | スクレロスチン阻害・Wntシグナル↑ |
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | ビスホスホネート:メバロン酸経路のファルネシルピロリン酸合成酵素阻害→破骨細胞のアポトーシス→骨吸収↓ |
| 2 | ビスホスホネートの服用法:起床時・多量の水・30分は横にならない(食道潰瘍防止)。副作用:顎骨壊死 |
| 3 | SERM(ラロキシフェン):骨でERアゴニスト→骨吸収↓。乳腺・子宮ではER拮抗→乳がんリスクなし |
| 4 | デノスマブ:抗RANKL抗体。RANKLとRANKの結合を阻害→破骨細胞分化↓。腎機能低下でも使用可 |
| 5 | テリパラチド:PTH誘導体。間欠投与で骨芽細胞PTH1R刺激→骨形成↑(持続投与では骨吸収↑) |
| 6 | ロモソズマブ:抗スクレロスチン抗体。Wntシグナル抑制を解除→**骨形成↑+骨吸収↓**の二重効果 |
| 7 | メナテトレノン(ビタミンK₂):オステオカルシンのγ-カルボキシ化促進→骨形成↑。ワルファリン禁忌 |
| 8 | カルシトリオール(活性型VD₃):ビタミンD受容体に結合(カルシトニン受容体ではない!)→腸管Ca²⁺吸収↑ |
| 9 | カルシトニン:甲状腺C細胞由来。カルシトニン受容体刺激→破骨細胞抑制→骨吸収↓ |
| 10 | 骨形成促進薬(テリパラチド・ロモソズマブ)は骨吸収抑制薬より骨密度上昇効果が強い。重症例に使用 |
📝 国試過去問チェック
第109回 問30(必須問題)
オステオカルシンのグルタミン酸残基のγ-カルボキシ化を促進するのはどれか。1つ選べ。
1. メナテトレノン
2. エルカトニン
3. カルシトリオール
4. テリパラチド
5. イプリフラボン
解答と解説を見る
正解:1
1○ メナテトレノン(ビタミンK₂):骨芽細胞が産生するオステオカルシンのグルタミン酸残基のγ-カルボキシ化を補酵素として促進→活性型オステオカルシンがハイドロキシアパタイトと結合→骨基質強化→骨形成促進。
2✗ エルカトニンはカルシトニン誘導体→破骨細胞のカルシトニン受容体刺激→骨吸収↓(γ-カルボキシ化とは無関係)。
3✗ カルシトリオールはビタミンD₃製剤→ビタミンD受容体に作用→腸管Ca²⁺吸収↑(γ-カルボキシ化とは無関係)。
4✗ テリパラチドはPTH誘導体→骨芽細胞のPTH1R刺激→骨形成↑(γ-カルボキシ化とは無関係)。
5✗ イプリフラボンはフラボノイド系骨粗しょう症薬→骨吸収抑制(γ-カルボキシ化とは無関係)。
第111回 問159(一般問題)
骨粗しょう症治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. アレンドロン酸は、メバロン酸経路のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することで、破骨細胞による骨吸収を抑制する。
2. カルシトリオールは、カルシトニン受容体を刺激することで、腸管からのCa²⁺吸収を促進する。
3. テリパラチドは、破骨細胞のビタミンD受容体に結合することで、破骨細胞のアポトーシスを促進する。
4. ラロキシフェンは、骨組織のエストロゲン受容体の活性化を介して、骨吸収を抑制する。
5. ロモソズマブは、スクレロスチンに結合し、古典的Wntシグナル伝達を抑制して、骨形成を促進する。
解答と解説を見る
正解:1・4
1○ アレンドロン酸=ビスホスホネート。ファルネシルピロリン酸合成酵素阻害→破骨細胞抑制。
4○ ラロキシフェン=SERM。骨のエストロゲン受容体を活性化→骨吸収↓。
2✗ カルシトリオールはビタミンD受容体に結合(カルシトニン受容体ではない)。
3✗ テリパラチドは**PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)に結合し、骨芽細胞に作用(破骨細胞・ビタミンD受容体ではない)。
5✗ ロモソズマブはスクレロスチンに結合し、WntシグナルのWnt抑制を解除(活性化)**して骨形成を促進する(「Wntシグナルを抑制」は誤り)。
