🗂️ 消化性潰瘍治療薬の分類
| 分類 | 代表薬 |
|---|---|
| 攻撃因子抑制薬 | PPI・P-CAB・H₂ブロッカー・抗コリン薬(M₁遮断) |
| 防御因子増強薬 | スクラルファート・ミソプロストール・レバミピド |
| H. pylori除菌薬 | PPI+2種の抗菌薬(3剤併用) |
⚔️ 攻撃因子抑制薬
プロトンポンプ阻害薬(PPI)
壁細胞の胃酸分泌の仕組み
↓
H⁺,K⁺-ATPase(プロトンポンプ)がH⁺を胃腔へ分泌
【PPIの作用】
PPI(プロドラッグ)が酸性条件下で活性化
↓
活性体がプロトンポンプのシステイン残基と
共有結合(不可逆的阻害)
↓
H⁺,K⁺-ATPaseが働けなくなる
↓
胃酸分泌を強力に抑制
不可逆的阻害 → 効果回復には新たなポンプ合成が必要 CYP2C19で代謝 → 遺伝子多型で効果に個人差
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| オメプラゾール | 最初のPPI。CYP2C19で代謝(遺伝子多型あり) |
| ランソプラゾール | 最も広く使用。H. pylori除菌にも使用 |
| エソメプラゾール | オメプラゾールのS体。CYP2C19代謝の影響受けにくい |
| ラベプラゾール | 非酵素的活性化 → CYP2C19の影響を受けにくい |
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)
【P-CABの作用(ボノプラザン)】
酸性条件での活性化が不要
↓
そのままH⁺,K⁺-ATPaseの
K⁺結合部位に競合的に結合(可逆的阻害)
↓
K⁺の結合を阻害 → H⁺,K⁺-ATPaseが働けない
↓
胃酸分泌を強力・即効的に抑制
PPIとの違い:
・活性化に酸不要 → 即効性↑
・可逆的阻害(共有結合しない)
・PPIより強力
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ボノプラザン | 最初の日本発P-CAB。PPIより強力・速効 |
| テゴプラザン | 同様にP-CAB |
PPIとP-CABの違い:PPIは不可逆的(共有結合)、P-CABはK⁺と競合する可逆的阻害。P-CABは酸性活性化不要で即効性が高い
H₂受容体拮抗薬(H₂ブロッカー)
ヒスタミン → 壁細胞のH₂受容体に結合
↓
Gs → アデニル酸シクラーゼ↑ → cAMP↑
↓
プロトンポンプ活性化 → 胃酸分泌↑
【H₂ブロッカーの作用】
H₂受容体を遮断
↓
cAMP↓ → プロトンポンプ活性化↓
↓
胃酸分泌↓(PPIより弱め)
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| シメチジン | 最初のH₂ブロッカー。CYP阻害→相互作用多い |
| ファモチジン | 最も強力なH₂ブロッカー。腎排泄 |
| ニザチジン | ファモチジンと同程度の効力 |
| ロキサチジン | プロドラッグ |
ピレンゼピン(抗コリン薬)
M₁受容体を選択的に遮断 → 胃酸分泌↓
M₂受容体ではなくM₁受容体を遮断する点に注意(国試頻出の引っかけ)
🛡️ 防御因子増強薬
| 薬物 | 作用機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| ミソプロストール | プロスタノイドEP受容体刺激 | 胃粘膜血流↑・粘液分泌↑。妊婦禁忌(子宮収縮) |
| レバミピド | プロスタグランジン産生↑ | 胃粘膜防御因子↑。胃炎にも使用 |
| スクラルファート | 潰瘍部位を被覆 | アルミニウム塩。制酸薬との同時服用で効果↓ |
| テプレノン | プロスタグランジン産生↑・粘液↑ | 胃炎に使用 |
ミソプロストールはEP受容体(プロスタグランジン受容体)を直接刺激。レバミピドはPG産生を促進(受容体への直接作用ではない)
🔄 消化管運動調節薬
トリメブチン
【トリメブチンの作用】
κ(カッパ)オピオイド受容体を刺激
↓
消化管の双方向調節
↓
過活動状態(痙攣・腹痛)→ 抑制
低活動状態(麻痺・蠕動低下)→ 促進
適応:過敏性腸症候群(IBS)・慢性胃炎・術後腸管麻痺 μ(ミュー)受容体ではなくκ(カッパ)受容体に作用する点がポイント
慢性便秘症治療薬
【ルビプロストンの作用機序】
腸管上皮のClC-2(塩化物チャネル2型)を活性化
↓
Cl⁻(塩化物イオン)が腸管内腔へ分泌↑
↓
浸透圧によって水分が腸管内腔へ移動↑
↓
便が軟化・腸管内容物の移動が促進
↓
排便促進
【リナクロチドの作用機序】
腸管上皮のGC-C受容体を刺激
↓
cGMP↑ → Cl⁻・HCO₃⁻分泌↑
↓
腸管内への水分分泌↑ → 排便促進
(便秘型IBSにも適応あり)
妊婦・妊娠の可能性のある女性には禁忌
| 薬物 | 機序 | 分類 |
|---|---|---|
| ルビプロストン | ClC-2(塩化物チャネル2型)活性化 → Cl⁻分泌↑ → 水分分泌↑ | 上皮機能変容薬 |
| リナクロチド | GC-C受容体刺激 → cGMP↑ → Cl⁻分泌↑ | 上皮機能変容薬 |
| センノシド | 大腸刺激 | 刺激性下剤 |
| 酸化マグネシウム | 浸透圧性 | 塩類下剤 |
| ラクツロース | 浸透圧性(腸内細菌分解) | 糖類下剤 |
国試頻出まとめ
| # | ポイント |
|---|---|
| 1 | PPI:酸性条件で活性化→H⁺,K⁺-ATPaseと共有結合(不可逆的阻害)→胃酸分泌↓。CYP2C19で代謝 |
| 2 | P-CAB(ボノプラザン):K⁺と競合する可逆的阻害。酸性活性化不要→即効性↑。PPIより強力 |
| 3 | H₂ブロッカー(ファモチジン等):H₂受容体遮断→cAMP↓→胃酸分泌↓。PPIより作用弱め |
| 4 | ピレンゼピン:M₁受容体選択的遮断→胃酸分泌↓(M₂受容体ではない!) |
| 5 | ミソプロストール:プロスタノイドEP受容体刺激→粘膜保護。妊婦禁忌(子宮収縮) |
| 6 | レバミピド:PG産生↑→防御因子↑(EP受容体を直接刺激するのはミソプロストール) |
| 7 | シメチジン:CYP阻害→薬物相互作用が多い(最初のH₂ブロッカー) |
| 8 | トリメブチン:κオピオイド受容体刺激→消化管運動の双方向調節(μ受容体ではない!) |
| 9 | ルビプロストン:ClC-2活性化→Cl⁻分泌↑→水分分泌↑→排便促進。妊婦禁忌 |
| 10 | リナクロチド:GC-C受容体刺激→cGMP↑→Cl⁻分泌↑。便秘型IBSにも適応 |
📝 国試過去問チェック
第107回 問37(必須問題)
Cl⁻チャネル2(ClC-2)を活性化する慢性便秘症治療薬はどれか。1つ選べ。
1. センノシド
2. カルメロース
3. ラクツロース
4. ビサコジル
5. ルビプロストン
解答と解説を見る
正解:5
5○ ルビプロストンはClC-2(腸管上皮の塩化物チャネル2型)を活性化 → Cl⁻分泌↑ → 腸管内への水分分泌↑ → 便軟化・排便促進。
1✗ センノシドは大腸刺激性下剤。
2✗ カルメロースは膨張性下剤。
3✗ ラクツロースは糖類下剤(浸透圧性)。
4✗ ビサコジルは刺激性下剤。
第111回 問164(一般問題)
消化性潰瘍治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. ボノプラザンは、K⁺と競合してH⁺,K⁺-ATPaseを可逆的に阻害することで、胃酸分泌を抑制する。
2. ピレンゼピンは、アセチルコリンM₂受容体を刺激してアセチルコリンの遊離を抑制することで、胃酸分泌を抑制する。
3. レバミピドは、プロスタノイドEP受容体に結合して活性化することで、胃粘膜血流を増大させる。
4. ニザチジンは、ヒスタミンH₂受容体を遮断することで、胃酸分泌を抑制する。
5. ミソプロストールは、ドパミンD₂受容体を遮断することで、胃粘液分泌を促進する。
解答と解説を見る
正解:1・4
1○ ボノプラザン=P-CAB。K⁺との競合的(可逆的)阻害でH⁺,K⁺-ATPaseを阻害。
4○ ニザチジン=H₂ブロッカー。H₂受容体遮断→胃酸分泌↓。
2✗ ピレンゼピンはM₁受容体を遮断(刺激ではない。M₂ではなくM₁)。
3✗ レバミピドはプロスタグランジン産生を促進(EP受容体を直接刺激するのはミソプロストール)。
5✗ ミソプロストールはプロスタノイドEP受容体刺激(ドパミン受容体ではない)。
