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薬物の吸収・トランスポーター【薬剤師国試対策】Fick法則・P-gp・LAT1・経口吸収経路を完全攻略

📅 2026年5月20日🔄 更新: 2026年5月20日
📖 この記事でわかること
  • Fickの法則を用いて膜透過速度に影響する因子(膜厚・拡散係数・分配係数・面積・濃度差)を正確に区別できる
  • P-gp・LAT1・PEPT1・OCT2・OAT3の局在・輸送方向・代表基質を一覧で把握できる
  • 経口吸収の主経路(小腸→門脈→肝臓)とリンパ経路(高脂溶性薬物・脂質)の違いを説明できる
  • 食事・胃内pH・胃内容排出速度が吸収速度的BA・量的BAに与える影響を具体的薬物で理解できる
  • tmaxを規定する吸収速度定数(ka)・消失速度定数(ke)の関係式を使って計算できる
目次
  1. 1.Fickの法則と膜透過速度
  2. 2.膜輸送の種類
  3. 3.トランスポーター一覧(国試最頻出)
  4. P-gpのポイント
  5. LAT1のポイント
  6. 4.経口吸収と初回通過効果
  7. 主な吸収経路
  8. リンパ系吸収(例外)
  9. バイオアベイラビリティ(F)の計算
  10. 5.ミカエリス・メンテン式と担体介在輸送
  11. 6.tmaxの計算式
  12. 7.食事・pH・胃内容排出速度の影響
  13. 食事による吸収への影響
  14. リボフラビン(ビタミンB₂)の特殊性
  15. 胃内容排出速度を変える薬物
  16. 8.血液脳関門(BBB)
  17. 9.キレート形成による吸収低下
  18. 10.国試頻出まとめ
  19. 11.国試過去問チェック

🧬 Fickの法則と膜透過速度

薬物が細胞膜を**受動拡散(単純拡散)**で透過するとき、Fickの第一法則に従います。

J=PA(C1C2)=DKAL(C1C2)J = P \cdot A \cdot (C_1 - C_2) = \frac{D \cdot K \cdot A}{L} \cdot (C_1 - C_2)

因子 記号 透過速度との関係
膜の有効表面積 A 比例
薬物の拡散係数 D 比例
膜/水分配係数 K 比例
濃度差 C₁−C₂ 比例
膜の厚さ L 反比例 ← 国試頻出

✅ 「膜が厚いほど透過しにくい」=反比例するのは膜の厚さ(L)のみ


🚪 膜輸送の種類

輸送形式 ATP消費 濃度勾配 特徴
単純拡散 なし あり(高→低) 脂溶性低分子
促進拡散 なし あり(高→低) トランスポーター介在
一次性能動輸送 直接消費 逆行可(低→高も可) Na⁺/K⁺-ATPase等
二次性能動輸送 間接利用(Na⁺勾配) 逆行可(低→高も可) SGLT・PEPT等
膜動輸送(エンドサイトーシス) 必要 勾配に依存しない 高分子・リポソーム・抗体医薬品

✅ 「細胞膜の形態変化を伴って高分子を取り込む」=膜動輸送(エンドサイトーシス)


🔬 トランスポーター一覧(国試最頻出)

トランスポーター 局在 方向 主な基質 臨床的意義
P-gp(ABCB1) 腸管刷子縁膜・BBB・腎 排出(細胞→管腔) ジゴキシン・タキサン系・シクロスポリン 消化管吸収↓・BBB移行↓
LAT1(SLC7A5) BBB(脳毛細血管内皮) 取り込み(血液→脳) L-ドパ・中性アミノ酸類似薬 脳内薬物送達
PEPT1(SLC15A1) 小腸刷子縁膜 取り込み(管腔→細胞) セファレキシン・バラシクロビル・カプトプリル 経口BAの向上
OCT2(SLC22A2) 腎近位尿細管基底側 尿細管分泌 メトホルミン・シスプラチン 腎排泄
OAT1・OAT3 腎近位尿細管基底側 尿細管分泌 MTX・フロセミド・プロスタグランジン 腎排泄・相互作用
GLUT1 全身・BBB 取り込み グルコース 糖輸送

P-gpのポイント

  • 小腸:刷子縁膜(管腔側)に発現 → 薬物を腸管腔へ排出する(吸収を妨げる)
  • BBB:内皮細胞に発現 → 薬物を血液側へ排出する(脳への移行を制限)
  • P-gp阻害薬:イトラコナゾール・ベラパミル → ジゴキシン血中濃度↑(中毒に注意)

LAT1のポイント

  • BBBの脳毛細血管内皮細胞に高発現
  • 中性アミノ酸類似構造を持つ薬物(L-ドパ等)が利用
  • 単純拡散のみでは脳移行しにくい薬物をBBB通過させる

⚠️ P-gpはBBBでも発現するが排出方向(脳→血液)。LAT1と混同しないこと


💊 経口吸収と初回通過効果

主な吸収経路

経口投与 → 胃・小腸 → 門脈 → 肝臓(初回通過効果) → 全身循環

✅ 「小腸→門脈→肝臓→全身循環系」が経口薬物の主経路

リンパ系吸収(例外)

高脂溶性薬物・脂質 → カイロミクロン → 毛細リンパ管 → 胸管 → 左鎖骨下静脈 → 全身循環

特徴:

  • 肝臓を通らない → 初回通過効果を受けない
  • 流速が血液の約1/1000 → Cmaxが低く・Tmaxが遅い
  • 毛細リンパ管は密着結合が不完全 → 一部の高分子も通過できる
  • 経口のリンパ移行は主に高脂溶性薬物・脂質が中心。抗体医薬品など高分子のリンパ吸収は主に皮下・筋注後の経路(経口では膜動輸送も別途関与)

バイオアベイラビリティ(F)の計算

F=Fabs×Fgut×FhepF = F_{abs} \times F_{gut} \times F_{hep}

記号 意味
Fabs 消化管から吸収される割合
Fgut 腸管上皮細胞での代謝を免れる割合
Fhep 肝初回通過を免れる割合(= 1−EH)

🧪 ミカエリス・メンテン式と担体介在輸送

担体(トランスポーター)を介した輸送はミカエリス・メンテン式に従います。

v=VmaxCKm+Cv = \frac{V_{max} \cdot C}{K_m + C}

濃度条件 近似 動態の種類
C ≪ Km v ≈ (Vmax/Km)×C 一次速度(線形)
C ≫ Km v ≈ Vmax ゼロ次速度(飽和)

✅ Kmは輸送速度がVmax/2になる薬物濃度であり、親和性の指標


🕐 tmaxの計算式

経口投与(1コンパートメント)後のtmaxは:

tmax=ln(ka/ke)kaket_{max} = \frac{\ln(k_a/k_e)}{k_a - k_e}

パラメータ tmaxへの影響
ka↑(吸収速度定数増大) tmax短縮
ke↑(消失速度定数増大) tmax短縮
ke↓ tmax延長
投与量・Vd・吸収率 tmaxに影響しない

✅ tmaxを短縮させる要因は「吸収速度定数(ka)の上昇


🍽️ 食事・pH・胃内容排出速度の影響

食事による吸収への影響

パターン 薬物例 機序
速度的BA低下(量的BA不変) セファクロル・リボフラビン 食事で胃排出遅延→吸収速度↓・Cmax↓
量的BA増大 インドメタシン ファルネシル 脂溶性プロドラッグ・胆汁分泌促進で吸収↑
量的BA増大 イトラコナゾール(カプセル) 弱塩基性→食後の胃酸で溶解↑→食直後で吸収↑(添付文書:食直後投与。空腹時ではCmaxが食直後の約40%に低下)。逆に制酸薬・PPIで胃内pH↑→吸収↓

リボフラビン(ビタミンB₂)の特殊性

  • 小腸上部の**能動輸送(キャリア飽和性)**で吸収
  • 朝食後(食後):胃排出遅延→小腸に徐々に到達→キャリア飽和しにくい→吸収率↑
  • 空腹時:速やかに小腸到達→高濃度→キャリア飽和→吸収量頭打ち
  • メトクロプラミド前投与(胃排出促進)→空腹時と同様のパターン

胃内容排出速度を変える薬物

方向 薬物 機序
低下↓ プロパンテリン(抗コリン薬) M受容体遮断→胃蠕動↓
増大↑ メトクロプラミド・ドンペリドン D₂受容体遮断→胃排出促進
増大↑ モサプリド 5-HT₄受容体刺激

🧠 血液脳関門(BBB)

構成要素 役割
脳毛細血管内皮細胞 BBBの実体。タイトジャンクション(密着結合)
アストロサイト エンドフット突起でBBBの誘導・維持
ペリサイト 血管安定化・BBB機能調節
脈絡叢上皮細胞 BCSFB(血液脳脊髄液関門)の実体 ≠ BBB

BBBを通過できる薬物の条件:

  • 脂溶性が高い(単純拡散)
  • 分子量が小さい(< 500 Da目安)
  • 特定トランスポーターの基質(LAT1:L-ドパ、GLUT1:グルコース)

✅ BBBは脳毛細血管内皮細胞間のタイトジャンクションが密着→間隙経路は遮断


📌 キレート形成による吸収低下

薬物分類 代表薬 キレート形成する金属
ニューキノロン系 レボフロキサシン・シプロフロキサシン Al³⁺・Mg²⁺・Fe²⁺・Ca²⁺
テトラサイクリン系 ミノサイクリン Al³⁺・Mg²⁺・Ca²⁺

→ 制酸薬・鉄剤・乳製品との併用で吸収↓。服用間隔を2〜4時間以上あける。


📋 国試頻出まとめ

# ポイント キーワード
1 Fickの法則で反比例するのは「膜の厚さ(L)」のみ 面積・拡散係数・濃度差・分配係数は比例
2 膜動輸送(エンドサイトーシス)は膜形態変化を伴う高分子取り込み 抗体医薬品・リポソーム
3 P-gpは腸管・BBBで排出方向に働く ジゴキシン・タキサン系・免疫抑制薬
4 LAT1はBBBで脳への取り込み方向 L-ドパ・中性アミノ酸類似構造
5 PEPT1は小腸刷子縁膜でペプチド様構造を取り込む セファレキシン・バラシクロビル
6 経口薬の主経路:小腸→門脈→肝臓→全身循環 初回通過効果あり
7 リンパ系吸収:初回通過効果なし・吸収遅い 高脂溶性薬物・皮下投与の抗体医薬品
8 tmaxを短縮するのはka(吸収速度定数)の上昇 投与量・Vd・吸収率は無関係
9 リボフラビン:朝食後の方が吸収率↑(胃排出遅延→キャリア飽和しにくい) 能動輸送・飽和性
10 BBBの実体は脳毛細血管内皮細胞のタイトジャンクション アストロサイトは誘導・維持役

📝 国試過去問チェック

第109回 問41(Fickの法則・反比例)

Fickの法則に従う細胞膜透過において、薬物の透過速度と反比例するのはどれか。1つ選べ。

  1. 膜の有効表面積
  2. 薬物の膜中の拡散係数
  3. 膜の厚さ(L)
  4. 薬物の膜への分配係数
  5. 膜中薬物濃度の差(C₁−C₂)
解答と解説を見る

正答:3

Fickの第一法則:J = D × K × A × (C₁−C₂) / L

因子 透過速度との関係
有効表面積(A) 比例
拡散係数(D) 比例
膜の厚さ(L) 反比例 ← 正解
分配係数(K) 比例
濃度差(C₁−C₂) 比例

膜が厚いほど薬物が拡散する距離が長くなるため、透過速度は低下する。式の分母にLが位置することから反比例の関係となる。


第111回 問41(LAT1・BBBトランスポーター)

示された構造式の薬物(中性アミノ酸類似構造)の脳内への移行に主として関与するトランスポーターはどれか。1つ選べ。

  1. P-糖タンパク質
  2. 有機カチオントランスポーター OCT2
  3. 有機アニオントランスポーター OAT3
  4. 中性アミノ酸トランスポーター LAT1
  5. グルコーストランスポーター GLUT1
解答と解説を見る

正答:4

1✗ P-gp:BBBの内皮細胞に発現するが、薬物を排出する方向(脳→血液)に働く。

2✗ OCT2:腎近位尿細管に局在。脳への移行には関与しない。

3✗ OAT3:腎近位尿細管に局在。

4○ LAT1(SLC7A5):BBBの脳毛細血管内皮細胞に高発現。L-ドパ・メラニン前駆体など中性アミノ酸類似構造を持つ薬物を脳内へ取り込む。

5✗ GLUT1:グルコースを輸送。中性アミノ酸類似構造は基質とならない。


第111回 問170・171(リボフラビン・BBB移行)

空腹時または朝食後にリボフラビンを経口投与したときの投与量と累積尿中排泄量の関係グラフ(A・B曲線)に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. Aが朝食後、Bが空腹時に投与したときの曲線である
  2. Aが空腹時、Bが朝食後に投与したときの曲線である
  3. BがAより低値となるのは、リボフラビンの胃内容排出速度の低下が原因である
  4. BがAより低値となるのは、小腸上皮細胞から腸管腔への排出トランスポーターの飽和が原因である
  5. メトクロプラミドを前投与したときの曲線は、食事の有無によらずAよりBに近い
解答と解説を見る

正答:1・5

1○ リボフラビン(ビタミンB₂)は能動輸送(キャリア飽和性)で小腸上部から吸収される。朝食後(A)は胃内容排出が遅れ、小腸に徐々に到達するためキャリアが飽和しにくく吸収率↑(尿中排泄多い)。空腹時(B)は速やかに小腸へ到達し高濃度でキャリアが飽和するため尿中排泄が頭打ちになる。

2✗ 1の逆のため誤り。

3✗ 空腹時(B)の吸収が少ない原因は胃排出速度の「増大(速すぎること)」であり、「低下」ではない。

4✗ 排出トランスポーターの飽和ではなく、取り込みトランスポーター(キャリア)の飽和が原因。

5○ メトクロプラミド(胃排出促進薬):食後でも胃排出を速める→小腸に素早く到達→キャリア飽和→空腹時(B)のパターンに近づく。

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