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薬物の分布・代謝・排泄【薬剤師国試対策】CYP450・血漿タンパク結合・腎クリアランス・イヌリンを完全攻略

📅 2026年5月21日
📖 この記事でわかること
  • 分布容積(Vd)の計算式と、タンパク結合率・組織結合率との関係を理解できる
  • アルブミン・α₁-酸性糖タンパク質それぞれに結合する薬物の種類と病態による変動を説明できる(Scatchardプロットの読み方を含む)
  • CYP450の各分子種(3A4・2D6・2C9・2C19)の特徴・遺伝子多型・薬物相互作用を整理できる
  • イヌリンクリアランス・クレアチニンクリアランスからGFR・尿細管分泌・再吸収クリアランスを計算できる
  • Well-stirredモデルの式を使い、高抽出率/低抽出率薬物の肝クリアランス支配因子を区別できる
目次
  1. 1.薬物の分布と分布容積(Vd)
  2. 分布容積の定義と計算式
  3. Vdに影響する因子
  4. 2.血漿タンパク結合
  5. 主要な血漿タンパク質
  6. タンパク結合率の測定法
  7. Scatchardプロット
  8. 3.薬物代謝酵素CYP450
  9. 細胞内局在(分画遠心法)
  10. 代謝相の区別
  11. CYP450主要分子種
  12. 代謝酵素の遺伝子多型
  13. 代謝相互作用の重要例
  14. プロドラッグ
  15. 4.腎クリアランスとイヌリン
  16. 腎排泄の3過程
  17. イヌリンの特殊性(GFR指標)
  18. 各物質の腎排泄過程
  19. クリアランスの計算
  20. OAT1・OAT3による尿細管分泌
  21. 5.肝クリアランスとWell-stirredモデル
  22. Well-stirredモデルの式
  23. 抽出率による支配因子の違い
  24. 定常状態の遊離型濃度への影響
  25. 6.国試頻出まとめ
  26. 7.国試過去問チェック

📦 薬物の分布と分布容積(Vd)

分布容積の定義と計算式

Vd=体内薬物量血漿中薬物濃度=DC0V_d = \frac{体内薬物量}{血漿中薬物濃度} = \frac{D}{C_0}

Vd=VP+fufu,t×VTV_d = V_P + \frac{f_u}{f_{u,t}} \times V_T

記号 意味
VP 血漿容積(約3 L)
VT 組織容積(約40 L)
fu 血漿中非結合率(遊離型の割合)
fu,t 組織中非結合率

Vdと分布の解釈:

Vd 意味
< 5 L 血管内にほぼ留まる(大分子・高タンパク結合)
5〜20 L 細胞外液に分布
> 40 L 組織・細胞内に広く分布
>> 体重 脂肪組織・特定臓器に蓄積(アミオダロン: 60 L/kg)

✅ 血漿タンパク結合率が高い→血漿に留まる→Vd小さい。逆に組織結合が強い→Vd大きい

Vdに影響する因子

要因 Vdへの影響
血漿アルブミン低下(肝硬変・ネフローゼ) 遊離型↑→組織分布↑→Vd増大
加齢 体脂肪率↑→脂溶性薬物Vd増大
肥満 体脂肪↑→脂溶性薬物Vd増大
小児 体水分量多い→水溶性薬物の体重当たりVd大
心不全 腎血流↓→腎排泄↓(Vdへの影響は間接的)

🩸 血漿タンパク結合

主要な血漿タンパク質

タンパク質 結合する薬物 炎症時の変化 代表薬物
アルブミン 酸性薬物・中性薬物 低下(負の急性期タンパク) ワルファリン・フロセミド・NSAIDs
α₁-酸性糖タンパク質(AGP/AAG) 塩基性薬物 増加(急性期タンパク) プロプラノロール・リドカイン・三環系抗うつ薬
リポタンパク 脂溶性薬物 アムホテリシンB・シクロスポリン

⚠️ プロプラノロールが結合するのはアルブミンではなくα₁-酸性糖タンパク質(塩基性薬物)

タンパク結合率の測定法

方法 原理 特徴
限外ろ過法 遠心でタンパク質を保持→フィルター通過液(遊離型)を測定 簡便・迅速
平衡透析法 半透膜で血漿と緩衝液を隔てて平衡 精度が高い

平衡透析法の計算:

  • [B]:血漿側 = タンパク結合型 + 遊離型
  • [C]:緩衝液側 = 遊離型のみ(半透膜通過)
  • タンパク結合濃度 = [B] − [C]

Scatchardプロット

r=nKdr[D]fr = n - K_d \cdot \frac{r}{[D]_f}

項目 競合阻害時
Y切片(r) n(結合部位数) 変化しない
傾き −1/Kd(右下がりの直線) 傾きが緩やかになる(Kd↑)
X切片 n(結合部位数) 左に移動(0に近づく)

✅ ScatchardプロットはX軸にr/[D]f、Y軸にrをとった右下がりの直線。Y切片=n(結合部位数)、傾き=−1/Kd


⚗️ 薬物代謝酵素CYP450

細胞内局在(分画遠心法)

遠心条件 画分 含まれる成分 代謝酵素
600×g 沈殿 核画分 細胞核・細胞膜断片
9,000×g 沈殿 ミトコンドリア画分 ミトコンドリア・リソソーム MAO
105,000×g 沈殿 ミクロソーム画分 小胞体(SER) CYP450・UGT
105,000×g 上清 サイトゾル サイトゾル NAT・SULT

✅ CYP450は**滑面小胞体(SER)**に局在 = ミクロソーム画分に含まれる

代謝相の区別

代謝相 反応 主な酵素
第Ⅰ相 酸化・還元・加水分解 CYP450・FMO・ADH・MAO・カルボキシルエステラーゼ
第Ⅱ相 抱合(グルクロン酸・硫酸・グリシン・アセチル・グルタチオン) UGT・SULT・NAT・GST

UGT(UDP-グルクロン酸転移酵素)=第Ⅱ相反応(抱合)。小胞体に局在

CYP450主要分子種

CYP 肝発現割合 主な基質 阻害薬(代表) 誘導薬(代表)
CYP3A4 約30〜40%(最多) ベンゾジアゼピン・シクロスポリン・HMG-CoA還元酵素阻害薬 クラリスロマイシン・イトラコナゾール リファンピシン
CYP2D6 約2〜5%(少ない) コデイン・β遮断薬・三環系抗うつ薬 パロキセチン・フルオキセチン
CYP2C9 約15〜20% ワルファリン・フェニトイン・NSAID リファンピシン
CYP1A2 約10〜15% テオフィリン・カフェイン フルボキサミン タバコ
CYP2C19 約5〜10% オメプラゾール・クロピドグレル オメプラゾール リファンピシン
CYP2E1 約5〜10% アセトアミノフェン・エタノール エタノール(慢性)

✅ 発現量最多はCYP3A4。腸管(CYP3A4)にも存在→初回通過効果に関与 ※ CYP2D6は肝臓での発現量は少ない(約2〜5%)が、臨床使用薬の約20〜25%の代謝に関与する重要な酵素(発現量と代謝への寄与は別)

代謝酵素の遺伝子多型

酵素 PM(低代謝)の日本人頻度 臨床的意義
CYP2D6 約1〜3%(少ない) PM:コデイン→モルヒネ変換↓→鎮痛不足。UM:モルヒネ過剰→呼吸抑制
CYP2C19 約15〜20%(多い) PM:オメプラゾールAUC↑・H. pylori除菌効果↑
ALDH2 低活性型アレル保有者は日本人の約4割(ヘテロ接合体:活性低下、ホモ接合体:ほぼ欠損) アセトアルデヒド蓄積→フラッシング・食道がんリスク
NAT2 slow 約40〜50% イソニアジド末梢神経障害リスク
TPMT 約0.3% アザチオプリン→6-MP蓄積→骨髄抑制(使用前に診断)

代謝相互作用の重要例

相互作用 被影響薬 併用薬 機序
シクロスポリン血中濃度低下 シクロスポリン リファンピシン CYP3A4の誘導
ノルトリプチリン血中濃度上昇 ノルトリプチリン パロキセチン CYP2D6の阻害
チザニジン血中濃度上昇(重篤低血圧) チザニジン フルボキサミン CYP1A2の阻害

プロドラッグ

プロドラッグ 活性体 変換機構 目的
カペシタビン 5-FU チミジンホスホリラーゼ(腫瘍内) 腫瘍選択性
カンデサルタンシレキセチル カンデサルタン 腸管での加水分解(CES) 経口吸収改善
バラシクロビル アシクロビル バリルエステラーゼ 消化管吸収↑
テガフール 5-FU CYP2A6 作用持続
レボドパ ドパミン AADC(末梢) BBB通過(LAT1利用)
テモカプリル テモカプリラート カルボキシルエステラーゼ(CES) エステル型プロドラッグ

🏥 腎クリアランスとイヌリン

腎排泄の3過程

糸球体ろ過(遊離型の低分子物質:タンパク結合型は通過しない)
  +
尿細管分泌(能動輸送:P-gp・OAT・OCT等)
  −
尿細管再吸収(脂溶性薬物:受動拡散)
  =
尿中排泄

イヌリンの特殊性(GFR指標)

特性 内容
腎排泄 糸球体ろ過のみ(分泌・再吸収・代謝なし)
クリアランス CLイヌリン = GFR
濃度関係 Cp ≒ C原尿 < C尿(水のみ再吸収で濃縮)

✅ イヌリンは「ろ過のみ」だからGFRの測定指標。水だけ再吸収されてイヌリンは濃縮→C尿が最高

各物質の腎排泄過程

物質 糸球体ろ過 尿細管分泌 尿細管再吸収
イヌリン × ×
クレアチニン 少量◯ ×
ゲンタマイシン わずか
PAH ◎(大量) ×
グルコース(正常) × ◎(ほぼ全量)

クリアランスの計算

CLR=尿中未変化体排泄量AUCCL_R = \frac{尿中未変化体排泄量}{AUC}

fu=CLRGFR(尿細管分泌・再吸収なしの場合)f_u = \frac{CL_R}{GFR} \quad(尿細管分泌・再吸収なしの場合)

ゲンタマイシンの計算例(111回理論173):

  • CLR = fe × CLtot で算出
  • CLgf = fp × GFR で糸球体ろ過分を計算
  • CLR > CLgf → 尿細管分泌あり
  • CLnr(腎外CL)= CLtot − CLR → 腎障害前後で変化しない

OAT1・OAT3による尿細管分泌

  • 近位尿細管の**基底側膜(血液側)**に発現
  • 血液→細胞内への取り込み(OAT1・OAT3)
  • 細胞→管腔への排出(MRP2等)
  • 基質:メトトレキサート・フロセミド・プロスタグランジン

🧬 肝クリアランスとWell-stirredモデル

Well-stirredモデルの式

CLH=QHfuCLintQH+fuCLintCL_H = \frac{Q_H \cdot f_u \cdot CL_{int}}{Q_H + f_u \cdot CL_{int}}

EH(肝抽出率)=CLHQHEH(肝抽出率)= \frac{CL_H}{Q_H}

抽出率による支配因子の違い

肝抽出率 薬物例 CL支配因子 近似式
高(> 0.7)flow-limited ニカルジピン・プロプラノロール・リドカイン 肝血流量(QH) CLH ≈ QH
低(< 0.3)capacity-limited フェニトイン・テオフィリン・ワルファリン タンパク結合(fu)・固有CL(CLint) CLH ≈ fu × CLint

✅ 低抽出率(CLint ≪ QH)のとき:CLH ≈ fu × CLint

定常状態の遊離型濃度への影響

条件 遊離型Cssへの影響
低抽出率薬でタンパク結合率変化(CLint一定) 変わらない(代償機構)
高抽出率薬でタンパク結合率変化 影響を受ける
低抽出率薬でCLint変化 影響を受ける

📚 国試頻出まとめ

# ポイント キーワード
1 限外ろ過法は血漿タンパク結合率の測定に用いる 遠心→フィルター通過液=遊離型
2 CYP450は**滑面小胞体(ミクロソーム画分)**に局在 UGTも同様
3 CYP3A4は肝CYPで発現量最多(約30〜40%)かつ腸管にも存在 初回通過効果に関与
4 アルブミン→酸性薬物。α₁-AGP→塩基性薬物(プロプラノロール等) 炎症時α₁-AGPは増加
5 イヌリン:糸球体ろ過のみ→GFR指標。Cp≒C原尿<C尿(水再吸収で濃縮) 再吸収・分泌なし
6 クレアチニン:ろ過+尿細管分泌あり。CCr > GFR イヌリンCL=GFR
7 CYP2D6でコデイン→モルヒネ変換。PMは鎮痛不足、UMは呼吸抑制 遺伝子多型
8 高抽出率薬(EH>0.7)のCLHは肝血流量が支配。タンパク結合・CLintの変動の影響を受けにくい flow-limited
9 低抽出率薬(EH<0.3)のCLHはfu×CLintが支配。定常状態遊離型はCLint一定ならfu変動で変わらない capacity-limited
10 OAT1・OAT3は近位尿細管基底側膜で血液→細胞方向に取り込む。プロベネシドで阻害→MTX蓄積 尿細管分泌

📝 国試過去問チェック

第111回 問43(限外ろ過法)

限外ろ過法を用いて算出される薬物パラメータはどれか。1つ選べ。

  1. 油/水分配係数
  2. 酸塩基解離定数
  3. 血球移行率
  4. 血漿タンパク結合率
  5. 全身クリアランス
解答と解説を見る

正答:4

1✗ 油/水分配係数:n-オクタノール/水系を用いた分配実験で測定

2✗ pKa:pH変化による紫外吸収変化・電位差測定

3✗ 血球移行率:全血/血漿の薬物濃度比から算出

4○ 限外ろ過法:遠心によりタンパク質を保持し、フィルター通過液(遊離型)の濃度を測定→結合率(%)を算出する

5✗ クリアランス:AUCや尿中排泄量から算出


第111回 問44・45(CYP局在・イヌリン濃度)

薬物代謝酵素シトクロムP450が局在する主な細胞内小器官はどれか。1つ選べ。

  1. エンドソーム
  2. ゴルジ体
  3. リソソーム
  4. 小胞体
解答と解説を見る

正答:5

1✗ エンドソーム:エンドサイトーシスで取り込んだ物質の処理

2✗ ゴルジ体:タンパク質の修飾・輸送

3✗ リソソーム:加水分解酵素(酸性環境でタンパク質分解)

4✗ 核:DNAの複製・転写

5○ CYP450は肝細胞・腸管粘膜上皮の**滑面小胞体(小胞体:ER)**に局在。UGT(グルクロン酸転移酵素)も小胞体に局在する。分画遠心法では105,000×g沈殿(ミクロソーム画分)として回収される。


第111回 問173(ゲンタマイシン腎クリアランス計算)

ゲンタマイシン(体重60 kg患者)の薬物動態パラメータ(CLtot=75 mL/min、GFR=62.5 mL/min、fe=0.92、fp=0.90)。急性腎障害後(CLtot=40 mL/min、GFR=27.8 mL/min、fe=0.85)のクリアランスに関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

  1. 腎障害前の糸球体ろ過クリアランスは62.5 mL/minである
  2. 腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンの腎排泄には尿細管分泌が関与する
  3. 腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンは尿細管から再吸収されやすい
  4. ゲンタマイシンの腎クリアランスは腎障害によって変化しない
  5. ゲンタマイシンの腎外クリアランスは腎障害の前後でほぼ一定である
解答と解説を見る

正答:2, 5

【計算】

腎障害前:CLR = fe×CLtot = 0.92×75 = 69.0 mL/min、CLgf = fp×GFR = 0.90×62.5 = 56.25 mL/min

CLR(69)>CLgf(56.25)→ 尿細管分泌あり

CLnr(腎外)= CLtot − CLR = 75 − 69 = 6.0 mL/min

腎障害後:CLR = 0.85×40 = 34.0 mL/min、CLgf = 0.90×27.8 = 25.0 mL/min

CLR(34)>CLgf(25)→ 尿細管分泌あり

CLnr = 40 − 34 = 6.0 mL/min

1✗ 糸球体ろ過CL = fp×GFR = 0.90×62.5 = 56.25 mL/min(62.5ではない。fp=0.90)

2○ 腎障害前後ともCLR>CLgf→尿細管分泌が関与

3✗ CLR>CLgf(分泌あり)→再吸収は少ない(アミノグリコシドは親水性で再吸収されにくい)

4✗ CLR:69→34 mL/min(腎障害で変化する)

5○ CLnr = 6.0 mL/min(前後変化なし)

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