🔁 反復投与と定常状態
急速静脈内反復投与(1コンパートメントモデル)
投与間隔τ=消失半減期t₁/₂のとき、各回投与直後のピーク血中濃度:
| 投与回数 | 計算式 | C₀の倍数 |
|---|---|---|
| 1回目直後 | C₀ | 1.00倍 |
| 2回目直後 | C₀ + C₀×(1/2) | 1.50倍 |
| 3回目直後 | C₀ + 1.5C₀×(1/2) | 1.75倍 ← 国試頻出 |
| 4回目直後 | C₀ + 1.75C₀×(1/2) | 1.875倍 |
| 定常状態(∞) | C₀ × 1/(1−e^{−λτ}) | 2.00倍(τ=t₁/₂のとき) |
✅ τ=t₁/₂のとき:3回目直後=1.75倍、定常状態ピーク=2.00倍
計算のコツ: 前回投与直後ピーク × e^{−keτ} = 投与前の血中濃度 → 次回投与で+C₀
τ=t₁/₂のとき:e^{−keτ} = 0.5(半分に減衰)
💉 定速静脈内投与と定常状態到達時間
定常状態への到達
| 到達割合 | 必要な時間 |
|---|---|
| 50% | 1 × t₁/₂ |
| 75% | 2 × t₁/₂ ← 頻出 |
| 87.5% | 3 × t₁/₂ |
| 93.75% | 4 × t₁/₂ |
| ≒100% | 約5 × t₁/₂ |
✅ 75%到達時間 = 2 × t₁/₂(計算:0.75 = 1−e^{−ke×t} → t = 2t₁/₂)
定常状態血中濃度
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| k₀ | 定速投与速度(mg/h等) |
| CL | 全身クリアランス |
定速投与速度の計算(MRT法)
📐 定常状態平均血中濃度と繰り返し経口投与
| パラメータ | Cssへの影響 |
|---|---|
| F(吸収率)が2倍 | Css 2倍 |
| CL(クリアランス)が2倍 | Css 半分 |
| τ(投与間隔)が2倍 | Css 半分 |
| D(投与量)が2倍 | Css 2倍 |
✅ 「吸収率Fが2倍→定常状態Cssが2倍」「CLが2倍→Cssは半分」← 2倍にはならない
🕐 MRT・MAT・MDT(平均滞留時間)
| 剤形 | AUMC/AUC = MRT | MAT |
|---|---|---|
| 液剤 | 最小 | 最短 → Cmax最大 |
| 散剤 | 中間 | 中間 |
| 錠剤 | 最大 | 最長 |
✅ MAT最小(液剤)→吸収最速→Cmax最大
⚗️ 非線形動態(Michaelis-Menten型)
非線形動態を示す薬物
| 薬物 | 飽和する機構 | 特徴 |
|---|---|---|
| フェニトイン | CYP2C9(飽和しやすい) | 少量増量で血中濃度急上昇→中毒 |
| エタノール | ADH(アルコール脱水素酵素) | ゼロ次動態 |
| サリチル酸(高用量) | グリシン抱合・グルクロン酸抱合 | 高用量のみ非線形 |
⚠️ カルバマゼピン・ジゴキシン・バンコマイシン・フェノバルビタールは線形動態
Michaelis-Menten型の消失式
定常状態では「投与速度 = 消失速度」:
各パラメーターの意味
| パラメーター | 単位(例) | 意味 |
|---|---|---|
| Vmax | mg/day | 最大消失速度。酵素が完全に飽和したときに達する理論上の最大速度 |
| Km | μg/mL(mg/L) | Michaelis定数。消失速度がVmax/2になるときの薬物濃度。Kmが小さいほど酵素の親和性が高い |
| Css | μg/mL(mg/L) | 定常状態血中濃度 |
| R₀ | mg/day | 定常状態での投与速度。定常状態では消失速度=投与速度となる |
⚠️ 非線形動態では投与量のわずかな増加で血中濃度が急激に上昇 → TDMが特に重要
非線形性の種類まとめ
| 原因 | CLへの影響 | 代表例 |
|---|---|---|
| 代謝酵素飽和 | CL低下(投与量依存) | フェニトイン・エタノール |
| タンパク結合飽和 | CL増大 | ワルファリン(高用量) |
| 尿細管分泌飽和 | CLr低下 | ペニシリン・MTX |
| 腸管代謝飽和 | BA↑(全身CL変化なし) | ベラパミル |
🫀 Well-stirredモデルと肝クリアランス
基本式と各パラメーター
| パラメーター | 単位(例) | 意味 |
|---|---|---|
| CLH | L/h | 肝クリアランス。肝臓が単位時間に薬物を除去できる血液量 |
| QH | L/h(約90 L/h) | 肝血流量。門脈+肝動脈の合計血流量 |
| fu | 無次元(0〜1) | 血漿中非結合率(遊離型の割合)。タンパク結合率が高いほど小さい |
| CLint | L/h | 固有クリアランス。血流・タンパク結合の影響を除いた、肝臓本来の代謝能力。CYP活性を反映 |
| EH | 無次元(0〜1) | 肝抽出率。肝臓を1回通過する際に消去される薬物の割合 |
Well-stirredモデルの前提:肝内は完全混合(均一)、肝細胞近傍の濃度 = 流出側濃度(Cout)
高抽出率薬(EH > 0.7)の特性
- CLH ≈ QH(肝血流量に依存)
- タンパク結合率の変動の影響を受けにくい
- CLintの変動の影響を受けにくい
- 経口Fは低い(初回通過効果大)
✅ 肝抽出率0.8のとき:CLH = EH × QH = 0.8 × 100 L/h = 80 L/h
低抽出率薬(EH < 0.3)の特性
- CLH ≈ fu × CLint(タンパク結合・固有CLに依存)
- 肝血流量の変動の影響を受けにくい
- タンパク結合率変化→CLH変化
- 定常状態遊離型濃度はCLint一定ならfu変動の影響を受けない
経口投与での初回通過効果計算
例(110回理論169:メトプロロール):
- CLtot=1.0 L/min、fe=0.10、QH=1.5 L/min
- CLR = 0.10 × 1.0 = 0.1 L/min
- CLH = 1.0 − 0.1 = 0.9 L/min
- EH = 0.9/1.5 = 0.6 = 60%(経口投与で60%が初回通過で消失)
- Fh = 1 − 0.6 = 0.4(経口投与の40%が全身循環に到達)
🧫 2コンパートメントモデル
| パラメータ | 内容 |
|---|---|
| α | 分布相の速度定数(速い消失) |
| β | 終末相の速度定数(遅い消失)← 対数プロット終末直線の傾きの絶対値 |
| t=0での濃度 | A + B |
| AUC | A/α + B/β |
| Vc(中央コンパートメントVd) | D/(A+B) |
✅ 「投与直後のC = A + B」「AUC = A/α + B/β」は公式として暗記
💊 TDM(治療薬物モニタリング)
TDMが必要な薬物の条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 治療域が狭い | 有効濃度と中毒濃度が近い |
| 個体差が大きい | 同量でも血中濃度にばらつき |
| 非線形動態を示す | 少量変化で濃度急変(フェニトイン) |
| 副作用と疾患症状が類似 | 過量・不足の判別困難(ジゴキシン中毒↔心不全) |
| 薬物相互作用を受けやすい | 併用薬で大きく変動 |
⚠️ TDM不要の条件:治療域が広い・個体差が小さい・相互作用が少ない(例:メトホルミン)
TDM対象薬一覧
| 分類 | 薬物 | 特徴 |
|---|---|---|
| 抗てんかん薬 | フェニトイン・カルバマゼピン・フェノバルビタール・バルプロ酸 | 治療域が狭い |
| 抗菌薬 | バンコマイシン・アミノグリコシド(ゲンタマイシン等) | 腎毒性・耳毒性 |
| 強心薬 | ジゴキシン | 治療域が非常に狭い(0.5〜2.0 μg/mL) |
| 免疫抑制薬 | シクロスポリン・タクロリムス | 個体差大・腎毒性 |
| 気管支拡張薬 | テオフィリン | 治療域が狭い |
| 精神安定薬 | リチウム | 腎排泄依存・治療域極めて狭い |
TDM対象外の薬物例:
- メトホルミン(有効域が広い・副作用の乳酸アシドーシスは血中濃度と相関しない)
全血採取が必要な薬物
| 薬物 | 試料 | 理由 |
|---|---|---|
| シクロスポリン | 全血(EDTA血) | 赤血球・白血球への移行が多い→血漿では過小評価 |
| タクロリムス | 全血 | 同様に血球移行が多い |
| ジゴキシン | 血清・血漿 | 血球移行少ない |
| フェニトイン | 血清・血漿 | アルブミン結合が主 |
✅ 「TDMで全血採取」=免疫抑制薬(シクロスポリン・タクロリムス)
📚 国試頻出まとめ
| # | ポイント | キーワード |
|---|---|---|
| 1 | τ=t₁/₂の反復静注:3回目直後=1.75倍、定常状態=2.00倍 | 累積計算 |
| 2 | 定速投与の75%到達時間 = 2×t₁/₂ | 0.75 = 1−(1/2)² |
| 3 | 定速投与速度 k₀ = Css × CL(目標濃度×クリアランス) | 定常状態の式 |
| 4 | 吸収率Fが2倍→定常状態平均Cssが2倍。CLが2倍→Cssは半分 | Css = F×D/(CL×τ) |
| 5 | MAT最小の液剤→吸収最速→Cmax最大 | MRT = AUMC/AUC |
| 6 | フェニトインはCYP2C9飽和による非線形動態。少量増量で急激な血中濃度上昇 | Michaelis-Menten型 |
| 7 | MM型計算:定常状態で「R₀ = Vmax×Css/(Km+Css)」を使う | Css = Km×R₀/(Vmax−R₀) |
| 8 | 高抽出率(EH>0.7):CLHは肝血流量依存。低抽出率(EH<0.3):fu×CLint依存 | Well-stirred model |
| 9 | TDMで全血採取:シクロスポリン・タクロリムス(血球移行が多い) | 免疫抑制薬 |
| 10 | TDM対象外:メトホルミン(治療域広い・副作用と血中濃度相関なし) | 乳酸アシドーシス |
📝 国試過去問チェック
第111回 問46(反復投与1.75倍)
消失半減期6時間の薬物を6時間間隔で反復急速静脈内投与するとき、初回投与直後の1.75倍の血中濃度になるのはいつか。1つ選べ。
- 2回目投与直後
- 3回目投与直前
- 3回目投与直後
- 4回目投与直前
- 4回目投与直後
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正答:3
τ = t₁/₂ = 6時間なので、各投与直後のピーク値:
| 回数 | 投与直後ピーク | C₀の倍数 |
|---|---|---|
| 1回目 | C₀ | 1.00倍 |
| 2回目 | C₀ + 0.5C₀ | 1.50倍 |
| 3回目 | C₀ + 1.5C₀×0.5 = 1.75C₀ | 1.75倍 ← 正解 |
| 4回目 | C₀ + 1.75C₀×0.5 | 1.875倍 |
計算のポイント:τ=t₁/₂なので各投与直前は前回ピークの1/2になっている。3回目投与前の残留濃度 = 1.5C₀ × 0.5 = 0.75C₀。3回目投与後 = C₀ + 0.75C₀ = 1.75C₀。
第111回 問47(フェニトイン非線形動態)
TDMの実施が望ましい薬物のうち、臨床用量で体内動態が非線形性を示す薬物はどれか。1つ選べ。
- カルバマゼピン
- ジゴキシン
- バンコマイシン
- フェニトイン
- フェノバルビタール
解答と解説を見る
正答:4
1✗ カルバマゼピン:CYP自己誘導あり(自己誘導による非線形)だが、用量比例(線形に近い)動態
2✗ ジゴキシン:線形動態、腎排泄型
3✗ バンコマイシン:線形動態、腎排泄型(TDM重要だが非線形動態ではない)
4○ フェニトイン:CYP2C9による代謝が臨床用量で飽和→Michaelis-Menten型(非線形動態)。少量の増量で血中濃度が急上昇→TDMが特に重要
5✗ フェノバルビタール:線形動態(臨床用量では飽和しない)
第111回 問176(フェニトイン非線形計算)
Michaelis-Menten型消失の薬物(Km=4 mg/L、Vmax=720 mg/day、F=100%)で定常状態平均血中濃度2 mg/Lにする投与量・回数の組合せはどれか。1つ選べ。
- 360 mg 1日1回
- 300 mg 1日2回
- 240 mg 1日3回
- 120 mg 1日3回
- 80 mg 1日3回
解答と解説を見る
正答:5
【計算】定常状態では「吸収速度 = 消失速度」
F=1(100%)なので1日投与量 = 240 mg/day
選択肢で240 mg/dayになるのは:80 mg × 1日3回 = 240 mg/day ← 正解
他の選択肢の1日投与量:
- 360 mg×1 = 360 mg/day
- 300 mg×2 = 600 mg/day
- 240 mg×3 = 720 mg/day
- 120 mg×3 = 360 mg/day
非線形動態では投与量が少し増えるだけで血中濃度が急上昇することに注意。1日240 mgで目標濃度2 mg/Lに達するが、1日360 mgなら濃度はずっと高くなる。
