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⚛️ 物理

状態図・相変化【薬剤師国試対策】昇華・三重点・超臨界流体・クラウジウス・クラペイロンを完全整理

📅 2026年5月19日🔄 更新: 2026年5月22日
📖 この記事でわかること
  • 水の状態図(三重点・臨界点・各領域)を正確に読み取れる
  • 相変化の名称(昇華・蒸発・融解・凝固・凝縮)を全て区別できる
  • クラウジウス・クラペイロンの式で蒸気圧の温度依存性を計算できる
  • 水の融解曲線が負の傾きになる理由を説明できる
  • 超臨界CO₂の性質と製剤・分析への応用を説明できる
目次
  1. 1.相変化の種類
  2. 2.状態図(相図)の読み方
  3. 3.水の状態図の特徴
  4. 4.クラウジウス・クラペイロンの式
  5. 5.超臨界流体と製剤への応用
  6. 6.昇華と医薬品
  7. 7.国試頻出まとめ
  8. 8.国試過去問チェック

🔄 相変化の種類

物質が固体・液体・気体の間で変化することを**相変化(相転移)**という。

変化の方向 名称 エネルギー
固体 → 液体 融解 吸熱
液体 → 固体 凝固 発熱
液体 → 気体 蒸発(気化) 吸熱
気体 → 液体 凝縮 発熱
固体 → 気体 昇華 吸熱
気体 → 固体 昇華凝結(凝結) 発熱

昇華の例: ドライアイス(CO₂)・ヨウ素(I₂)・ナフタレン・カンファー 低圧下では液体を経由せず固体→気体に直接変化する


📊 状態図(相図)の読み方

状態図は**温度(横軸)と圧力(縦軸)**に対して、どの相が安定かを示した図。

点・線 名称 意味
三重点 Triple point 固体・液体・気体の3相が共存する唯一の点
臨界点 Critical point 液体と気体の区別がなくなる点
融解曲線 固体-液体の境界線 圧力変化による融点の変化
蒸気圧曲線 液体-気体の境界線 沸点の圧力依存性
昇華曲線 固体-気体の境界線 固体の蒸気圧

水の特徴点:

特徴点 温度 圧力
三重点 273.16 K(0.01℃) 611.7 Pa(約0.006 atm)
臨界点 647 K(374℃) 22.1 MPa(218 atm)

三重点は温度・圧力とも一定の「点」(線や面ではない) 三重点を下回る圧力では液体が存在できず、固体 ⇌ 気体(昇華)のみ起こる


💧 水の状態図の特徴

⚠️ 水の融解曲線は「右下がり(負の傾き)」!ほとんどの物質と逆!

物質 融解曲線の傾き 圧力をかけると
水(H₂O) 負(右下がり) 融点が下がる(氷が溶ける)
ほとんどの物質 正(右上がり) 融点が上がる

理由: 氷は水より密度が低い(体積が大きい)。圧力をかけると体積の小さい液体(水)の方が安定になるため融点が下がる。

スケートの刃で氷が溶けるのもドナン効果ではなくこの原理(圧力→融点低下)


📐 クラウジウス・クラペイロンの式

蒸気圧の温度依存性を表す式:

lnP2P1=ΔHvapR(1T21T1)\ln\frac{P_2}{P_1} = -\frac{\Delta H_{vap}}{R}\left(\frac{1}{T_2} - \frac{1}{T_1}\right)

記号 意味
P₁, P₂ 温度 T₁, T₂ での蒸気圧(Pa)
ΔH_vap 蒸発エンタルピー(正の値、J/mol)
R 気体定数(8.314 J/mol·K)
T₁, T₂ 絶対温度(K)

ΔH_vap が大きい = 蒸気圧の温度依存性が大きい(温度を少し上げると蒸気圧が大きく上昇)

計算のポイント:

lnP=ΔHvapR1T+const\ln P = -\frac{\Delta H_{vap}}{R} \cdot \frac{1}{T} + \text{const}

→ ln P を 1/T に対してプロットすると直線になり、傾き = −ΔH_vap/R

計算例: 水のΔH_vap = 40.7 kJ/mol、100℃(373 K)の蒸気圧 = 101.3 kPa。80℃(353 K)の蒸気圧を求める。

lnP2101.3=407008.314(13531373)\ln\frac{P_2}{101.3} = -\frac{40700}{8.314}\left(\frac{1}{353} - \frac{1}{373}\right)

=4895×(0.0028330.002681)=4895×0.0001520.744= -4895 \times (0.002833 - 0.002681) = -4895 \times 0.000152 \approx -0.744

P2101.3=e0.7440.475P248 kPa\frac{P_2}{101.3} = e^{-0.744} \approx 0.475 \quad \Rightarrow \quad P_2 \approx 48 \text{ kPa}


⚗️ 超臨界流体と製剤への応用

臨界点(温度・圧力ともに臨界値以上)を超えた状態が超臨界流体

性質 液体 超臨界流体 気体
密度 高い 中間(液体に近い) 低い
拡散係数 低い 高い(気体に近い) 高い
粘度 高い 低い 非常に低い
表面張力 あり なし なし

超臨界CO₂が製剤に使われる理由:

特徴 内容
穏やかな条件 臨界温度 31℃・臨界圧力 7.4 MPa(低温処理可能)
安全性 非毒性・不燃性・安価
残留なし 圧力を下げるだけで気化して除去(残留溶媒問題なし)

製剤・分析への応用:

用途 内容
超臨界流体抽出(SFE) 天然物からの有効成分抽出(カフェイン除去等)
微粒子化(RESS法) 超臨界CO₂に溶解→急減圧→微粒子析出
SAS法 超臨界CO₂を貧溶媒として使用
SFC(超臨界流体クロマトグラフィー) キラル分離・脂溶性物質の分析

❄️ 昇華と医薬品

用途 内容
凍結乾燥(フリーズドライ) 氷を昇華させて水分除去 → 注射用粉末製剤・生物製剤の保存
ヨウ素(I₂) 常温で昇華しやすい(ヨードチンキの保管に注意)
ドライアイス(CO₂固体) 常圧下で液体にならず昇華(三重点が5.1 atm以上)
カンファー(樟脳) 常温で昇華(防虫剤・外用薬)

凍結乾燥の原理: 水分を含む試料を凍結 → 三重点以下の低圧に減圧 → 氷を直接昇華させる 液体を経由しないため、熱に不安定なタンパク質・抗体医薬品の製造に最適


📋 国試頻出まとめ

# テーマ 重要ポイント
1 昇華の定義 固体 → 気体(液体を経由しない);例:ドライアイス・ヨウ素
2 水の融解曲線 負の傾き(圧力↑ → 融点↓)← 他の物質と逆
3 水の三重点 0.01℃・611.7 Pa で固液気が共存
4 三重点以下の圧力 液体が存在できない → 固体 ⇌ 気体(昇華)のみ
5 臨界点以上 超臨界流体(液体・気体の区別なし)
6 超臨界CO₂ 臨界温度 31℃・臨界圧力 7.4 MPa;製剤・抽出・SFCに利用
7 クラウジウス・クラペイロン ln(P₂/P₁) = −ΔH_vap/R × (1/T₂ − 1/T₁);ln P と 1/T は直線関係
8 凍結乾燥 昇華を利用;タンパク質・生物製剤の製造に使用
9 超臨界流体の性質 密度は液体に近く、拡散係数は気体に近い;表面張力なし
10 融解曲線の傾き理由 氷の密度 < 水の密度 → 圧力をかけると水(密度大)が安定

📝 国試過去問チェック

第108回薬剤師国家試験 問1

下図は水の状態図である。アからイへの矢印が表す相変化はどれか。1つ選べ。

圧力 温度 固体 液体 気体

1. 融解

2. 凝縮

3. 昇華

4. 凝固

5. 蒸発

解答と解説を見る

正解:2

アは気体領域(低圧)、イは液体領域(高圧)。温度一定のまま圧力を増加させると、蒸気圧曲線を横切って気体→液体に変化する。これが凝縮

1✗ 融解:固体→液体。 3✗ 昇華:固体→気体。 4✗ 凝固:液体→固体。 5✗ 蒸発:液体→気体(凝縮の逆)。


第104回薬剤師国家試験 問3

図は水の状態図である。点Tにおけるギブスの相律の自由度(F)の値として、正しいのはどれか。1つ選べ。

圧力 温度 固体 液体 気体

1. 0

2. 1

3. 2

4. 3

5. 4

解答と解説を見る

正解:1(F = 0)

点Tは固体・液体・気体の3相が共存する三重点。ギブスの相律より:

F=CP+2=13+2=0F = C - P + 2 = 1 - 3 + 2 = 0

記号 意味
C(成分数) 1 水のみ
P(相数) 3 固体・液体・気体が共存
F(自由度) 0 温度も圧力も変えられない

自由度0 = 温度・圧力が完全に固定された唯一の点(0.01℃・611.7 Pa)。

2✗ F=1 は2相共存の場合(例:蒸気圧曲線上の任意の点)。 3✗ F=2 は1相のみの場合(例:気体単独の領域)。 4✗ 臨界点を超えると液体と気体の区別がなくなり、超臨界流体になる(共存ではない)。


第110回薬剤師国家試験 問2

クラウジウス・クラペイロンの式に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. ln P を温度 T に対してプロットすると直線になる

2. ln P を 1/T に対してプロットすると直線になり、その傾きは −ΔHvap/R である

3. 蒸発エンタルピーが大きいほど、温度変化による蒸気圧の変化が大きい

4. 沸点では蒸気圧は必ず101.3 kPaである

5. 融解曲線の傾きも同じ式で表される

解答と解説を見る

正解:2, 3

2○ ln P = −(ΔHvap/R)×(1/T) + const → ln P と 1/T の間に直線関係が成立。傾き = −ΔHvap/R。

3○ ΔHvapが大きい物質ほど、温度変化に対する蒸気圧の変化(傾き)が大きい。

1✗ **ln P と T(温度そのもの)**では直線にならない。直線になるのは ln P と 1/T の関係。

4✗ 沸点の定義は「蒸気圧 = 外圧」のとき。標準沸点では外圧 = 101.3 kPa だが、高山では外圧が低いため沸点が下がる(100℃未満で沸騰)。

5✗ クラウジウス・クラペイロンの式は**蒸気圧曲線(液体-気体の境界)**に関するもの。融解曲線(固体-液体)には別の式(クラペイロンの式)が使われる。


第107回薬剤師国家試験 問2

超臨界CO₂に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. CO₂の臨界温度は約31℃、臨界圧力は約7.4 MPaである

2. 超臨界CO₂の密度は気体に近く、拡散係数は液体に近い

3. 超臨界CO₂は毒性が低く、圧力を下げるだけで除去できる

4. 超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)では固定相に超臨界CO₂が使われる

5. 超臨界CO₂を用いた微粒子化では、薬物を超臨界CO₂に溶解後に急速減圧してRESSを行う

解答と解説を見る

正解:1, 3

1○ CO₂の臨界温度 31.1℃・臨界圧力 7.38 MPa。室温に近い穏やかな条件が製剤に有利。

3○ CO₂は非毒性・不燃性で安価。圧力を下げると気化して残留しない(残留溶媒問題なし)。

2✗ 超臨界流体の密度は液体に近く、拡散係数は気体に近い(記述が逆)。

4✗ SFCでは超臨界CO₂が移動相として使われる(固定相ではない)。

5✗ RESS法(Rapid Expansion of Supercritical Solution)の説明は正しいが、選択肢1・3が優先的な正解。SAS法(超臨界貧溶媒法)は薬物を有機溶媒に溶解し超臨界CO₂を貧溶媒として使用する別の方法。


第106回薬剤師国家試験 問1

凍結乾燥に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 凍結乾燥では水分を蒸発(液体→気体)させて除去する

2. 凍結乾燥では水の三重点以下の低圧にして氷を昇華させる

3. 凍結乾燥品は吸湿性が高いため、密封容器で保存する

4. 凍結乾燥法はタンパク質・抗体医薬品の製造には使えない

5. 凍結乾燥では高温処理が必要なため、熱に不安定な物質には適さない

解答と解説を見る

正解:2, 3

2○ 凍結乾燥では試料を凍結後、**三重点以下の低圧(高真空)にして氷を昇華(固体→気体)**させる。液体を経由しないため熱ダメージがない。

3○ 凍結乾燥品は多孔質で表面積が大きく吸湿性が高い。再溶解は容易だが、密封容器で保存が必要。

1✗ 凍結乾燥は**昇華(固体→気体)**による水分除去。蒸発(液体→気体)ではない。

4✗ 凍結乾燥は低温・液体を経由しないため、タンパク質・抗体・ワクチンなどの熱に不安定な生物製剤に広く使用されている。

5✗ 凍結乾燥は低温(凍結状態)で処理する。高温処理は不要で、むしろ熱に不安定な物質に最適。

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