周術期の血栓症リスク
エストロゲン含有製剤は凝固因子の産生を増加させ、血栓症リスクを高めます。
エストロゲン(エチニルエストラジオール)
↓
肝臓での凝固因子(第II・VII・X因子等)産生増加
↓
血液凝固亢進
↓
深部静脈血栓症・肺塞栓症(VTE)リスク上昇
| 薬剤 | 周術期の問題 | 対応 |
|---|---|---|
| ドロスピレノン・エチニルエストラジオール(OC) | 血栓症(VTE)リスク上昇 | 術前4週間以上前から休薬推奨 |
| ダパグリフロジン(SGLT2阻害薬) | 正常血糖ケトアシドーシス(euDKA) | 術前3日前から中止 |
| メトホルミン | 乳酸アシドーシス(造影剤使用時) | 造影剤使用時に中止 |
| セマグルチド | 胃内容物貯留→誤嚥リスク | 術前1週間休薬 |
⚠️ 「周術期に血栓症リスクが最も高い薬剤」=エストロゲン含有製剤(経口避妊薬)
麻薬処方箋の必須記載事項
麻薬及び向精神薬取締法 第27条6項・施行規則第9条の3に定められた記載事項。
| 記載事項 | 必須か |
|---|---|
| 患者の氏名・年齢 | ✅ 必須 |
| 患者の住所 | ✅ 必須(入院患者は「病院の名称・所在地」で代替可) |
| 病名 | ❌ 処方箋の法定記載事項ではない(診療録への記載事項) |
| 麻薬の品名・分量・用法・用量 | ✅ 必須 |
| 発行年月日・使用期間 | ✅ 必須 |
| 麻薬施用者の氏名(記名押印または署名) | ✅ 必須 |
| 麻薬施用者の免許証番号 | ✅ 必須(第27条6項に明記) |
| 麻薬業務所の名称 | ✅ 必須 |
| 麻薬業務所の所在地 | ✅ 必須 |
💡 「病名は法定記載事項ではない(診療録への記載)」「免許証番号は必須」「入院患者の住所は病院の名称・所在地で代替可」が重要ポイント
PPIと併用禁忌薬
**プロトンポンプ阻害薬(PPI)**と組み合わせてはいけない薬剤を整理しましょう。
PPI投与 → 胃酸分泌抑制(胃内pH上昇)
↓
アタザナビルは酸性環境でのみ溶解・吸収
↓
吸収が著しく低下(最大90%以上)
↓
HIV治療に必要な血中濃度が維持できない
↓
耐性ウイルス出現リスク
| 薬剤 | PPIとの関係 | 理由 |
|---|---|---|
| アタザナビル(HIV治療薬) | ❌ 併用禁忌 | 胃酸低下→溶解・吸収激減→治療失敗 |
| クロピドグレル | ⚠️ 注意 | CYP2C19競合→抗血小板効果減弱 |
| メトトレキサート(高用量) | ⚠️ 注意 | 腎排泄低下→MTX血中濃度上昇→毒性増強 |
⚠️ HIV治療薬アタザナビルはPPIと「禁忌」。H2ブロッカーは時間をずらせば使用可
抗菌薬の投与設計と腎機能
腎排泄型抗菌薬は**クレアチニンクリアランス(CCr)**をもとに用量を調整します。
| 抗菌薬 | 主な排泄経路 | 投与設計のキー |
|---|---|---|
| レボフロキサシン | 腎排泄(約85%) | CCr(クレアチニンクリアランス) |
| バンコマイシン | 腎排泄 | CCr・TDM |
| アジスロマイシン | 胆汁・肝代謝 | 肝機能 |
| メトロニダゾール | 肝代謝 | 肝機能 |
| CCr(mL/min) | レボフロキサシン用量の目安 |
|---|---|
| ≥50 | 通常量(500mg/日) |
| 20〜49 | 初回500mg、以後250mg/24h |
| <20 | 初回500mg、以後250mg/48h |
| 血液透析 | 初回500mg、以後250mg/48h |
💡 レボフロキサシンのキーはCCr。CRPや白血球は感染の重症度指標→投与量調整には使わない
脱水アセスメント
訪問薬剤管理指導では、患者の脱水を早期に発見することが重要です。
| アセスメント項目 | 脱水評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 口渇の有無 | ✅ 適切 | 体液浸透圧上昇→口渇中枢刺激 |
| 脇の下の乾燥 | ✅ 適切 | 皮膚・粘膜乾燥は脱水のサイン |
| HbA1c値 | ❌ 不適切 | 過去2〜3ヶ月の血糖コントロール指標→急性脱水の評価には使えない |
| 爪圧迫時の色調変化(CRT) | ✅ 適切 | 末梢循環評価(脱水→CRT延長) |
| 脈拍 | ✅ 適切 | 循環血液量低下→頻脈 |
⚠️ HbA1cは「2〜3ヶ月前からの平均血糖」→急性の脱水評価には全く役立たない
TDM(治療薬物モニタリング)
トルバプタン(サムスカ)
バソプレシンV2受容体拮抗薬(水利尿薬)
V2受容体ブロック → 集合管での水再吸収を抑制
↓
電解質を排泄せず水だけを排泄(水利尿)
↓
急激なNa上昇のリスク
↓
【高ナトリウム血症・浸透圧性脱髄症候群】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な適応 | 心不全・肝硬変に伴う低ナトリウム血症性浮腫 |
| モニタリング | 血清ナトリウム値(急激な上昇に注意) |
| 目標Na上昇速度 | 24時間で12mEq/L以下 |
⚠️ トルバプタン開始後は「血清Na値」を頻回にモニタリング。初日は入院管理が必要
ジゴキシンのTDM
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬効 | 強心配糖体(陽性変力作用・陰性変時作用) |
| 有効血中濃度 | 0.5〜2.0 ng/mL |
| 中毒症状 | 悪心・嘔吐・視覚障害(黄視)・不整脈 |
| 採血タイミング | トラフ値(次回投与直前) |
| 主なTDM対象薬 | 有効血中濃度の目安 |
|---|---|
| ジゴキシン | 0.5〜2.0 ng/mL |
| バンコマイシン | AUC/MIC 400〜600 |
| フェニトイン | 10〜20 μg/mL |
| テオフィリン | 8〜20 μg/mL |
💡 ジゴキシンは治療域が狭いTDM対象薬の典型。採血タイミングはトラフ(次回投与直前)
向精神薬の取り扱い
| 薬剤区分 | 譲受・譲渡記録義務 | 根拠法 |
|---|---|---|
| 化粧品・医薬部外品 | ❌ なし | — |
| 第二類OTC医薬品 | ❌ なし | — |
| 第二種向精神薬 | ✅ あり(2年保存) | 麻薬及び向精神薬取締法 |
| 麻薬 | ✅ あり(2年保存) | 麻薬及び向精神薬取締法 |
💡 第一種・第二種向精神薬は譲受・譲渡の記録義務あり(2年保存)。第三種向精神薬は記録義務の対象外。一般OTC薬にも義務なし(第50条の23)
国試頻出まとめ
| # | テーマ | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | OC(経口避妊薬)と血栓 | エストロゲン→凝固亢進→VTE。周術期に最も血栓リスクが高い薬剤 |
| 2 | 麻薬処方箋 | 免許証番号・業務所名・住所は必須。入院患者の住所は病院の名称・所在地で代替可。病名は法定記載事項ではない |
| 3 | PPIとアタザナビル | 併用禁忌。胃酸低下→アタザナビルの吸収激減→HIV耐性出現 |
| 4 | レボフロキサシン | 腎排泄型→投与設計のキーはCCr。CRP・白血球は重症度指標(用量調整ではない) |
| 5 | HbA1c と脱水 | HbA1cは過去2〜3ヶ月の血糖指標→急性脱水の評価には不適切 |
| 6 | トルバプタン | 水利尿薬→血清Na値の急激な上昇に注意。初日は入院管理 |
| 7 | ジゴキシン TDM | トラフ値(次回投与直前)で採血。有効濃度0.5〜2.0 ng/mL |
| 8 | 向精神薬の記録 | 第一種・第二種に譲受・譲渡記録義務あり(2年保存)。第三種は対象外。一般OTCにも義務なし |
国試過去問チェック
第110回 問87(必須)
周術期の患者において血栓症のリスクが最も高い薬剤はどれか。1つ選べ。
- メトホルミン塩酸塩錠 2. サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠 3. ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠 4. ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠 5. セマグルチド注
✅ 正解・解説を見る
正解:4
1✗ メトホルミン→造影剤使用時の乳酸アシドーシスが問題
2✗ サクビトリルバルサルタン→特に禁忌なし
3✗ ダパグリフロジン(SGLT2阻害薬)→正常血糖ケトアシドーシス(euDKA)が問題
4○ ドロスピレノン・エチニルエストラジオール(OC)→エストロゲンが凝固因子産生増加→VTEリスク最大
5✗ セマグルチド→胃内容物貯留による誤嚥が問題
第109回 問90(必須)
麻薬及び向精神薬取締法に基づく麻薬処方箋の記載事項として、法令で定められているのはどれか。1つ選べ。
- 患者の住所 2. 処方箋の使用期間 3. 麻薬施用者の免許証の番号 4. 麻薬業務所の名称 5. 患者の職業
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正解:4
1 患者の住所→第27条6項上は法定記載事項(入院患者は病院の名称・所在地で代替可)。この選択肢の「住所は記載事項ではない」とは言えず、解釈に注意。
2✗ 処方箋の使用期間→第27条6項で必須記載事項(国試の正答は4だが、使用期間も法定記載事項であることに注意)
3 麻薬施用者の免許証の番号→第27条6項で必須記載事項(「番号は不要」は誤り)。国試の公式正答は4だが、3も法令上は正しい選択肢であることに注意。
4○ 麻薬業務所の名称→法定記載事項(国試の公式正答)
5✗ 患者の職業→記載義務なし
第108回 問84(必須)
添付文書上、プロトンポンプ阻害薬との併用が禁忌とされている医薬品はどれか。1つ選べ。
- ファモチジン錠 2. ランソプラゾール錠 3. アタザナビル硫酸塩カプセル 4. クロピドグレル硫酸塩錠 5. メトトレキサート錠
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正解:3
3○ アタザナビル(HIV治療薬)→PPI(胃酸低下)で溶解・吸収が著しく低下→治療失敗・耐性ウイルス出現リスク→「併用禁忌」
4✗ クロピドグレル→PPIとの併用注意(禁忌ではない)
第108回 問90(必須)
レボフロキサシンの投与量を設計するために最も重要な情報はどれか。1つ選べ。
- クレアチニンクリアランス 2. CRP値 3. 白血球数 4. 体重 5. 体表面積
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正解:1
1○ クレアチニンクリアランス(CCr)→レボフロキサシンは腎排泄(約85%)→CCrに基づき用量調整が必須
2✗ CRP・3✗ 白血球数→感染の重症度指標であり、投与量調整の根拠にはならない
第107回 問87(必須)
訪問薬剤管理指導において、患者の脱水状態を評価する際に適切でない項目はどれか。1つ選べ。
- 口渇の有無 2. 脇の下の乾燥 3. HbA1c値 4. 爪圧迫時の色調変化 5. 脈拍
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正解:3
1✗ 口渇→体液浸透圧上昇→口渇中枢刺激→脱水の適切な指標
2✗ 脇の下の乾燥→皮膚・粘膜乾燥は脱水のサイン
3○ HbA1c→過去2〜3ヶ月の平均血糖コントロール指標→急性脱水の評価には不適切
4✗ 爪圧迫(CRT)→末梢循環評価→脱水で延長
5✗ 脈拍→循環血液量低下→頻脈→脱水の指標
第106回 問85(必須)
心不全患者にトルバプタンを投与する際に、特に注意してモニタリングすべき検査値はどれか。1つ選べ。
- 血清ナトリウム値 2. 血清カリウム値 3. 血清クレアチニン値 4. 血清尿酸値 5. 血清カルシウム値
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正解:1
1○ 血清ナトリウム値→トルバプタン(水利尿薬)は電解質を排泄せず水だけを排泄→血清Naが急激に上昇→高Na血症・浸透圧性脱髄症候群のリスク
目標:24時間でNa上昇12mEq/L以下
第106回 問87(必須)
ジゴキシン服用患者において、治療薬物モニタリング(TDM)を行う際に最も適切な採血タイミングとして得られる情報はどれか。1つ選べ。
- 尿中薬物濃度 2. 唾液中薬物濃度 3. 薬物血中濃度 4. 赤血球中薬物濃度 5. 組織中薬物濃度
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正解:3
3○ 薬物血中濃度(トラフ値)→ジゴキシンTDMは次回投与直前に採血。有効濃度0.5〜2.0 ng/mL
ジゴキシンは治療域が狭く(TI低い)、中毒症状(黄視・不整脈)に注意
第105回 問86(必須)
薬局間で医薬品を譲渡する際に、法令上、譲受および譲渡の記録が義務付けられているのはどれか。1つ選べ。
- 化粧品 2. 医薬部外品 3. 第二類医薬品 4. 指定第二類医薬品 5. 第二種向精神薬
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正解:5
1✗〜4✗ 化粧品・医薬部外品・第二類・指定第二類→譲受・譲渡の記録義務なし
5○ 第二種向精神薬→麻薬及び向精神薬取締法により譲受・譲渡の記録義務あり(2年保存)
