☢️ 電離放射線の種類と特性
| 放射線 | 実体 | 透過力 | 電離能 | 遮蔽材 |
|---|---|---|---|---|
| α線 | He原子核(4He²⁺) | 最も低い(紙1枚で遮蔽) | 最も高い | 紙・皮膚 |
| β線 | 電子(β⁻)または陽電子(β⁺) | 中程度 | 中程度 | アルミニウム |
| γ線 | 電磁波(高エネルギー光子) | 最も高い | 最も低い | 鉛・コンクリート |
| X線 | 電磁波(γ線より低エネルギー) | 高い | 低い | 鉛 |
| 中性子線 | 中性子 | 非常に高い | 高い(間接) | 水・コンクリート |
⚠️ α線は体外被曝に対しては弱いが、内部被曝(吸入・摂取)では電離能が高く最も危険 ²²²Rn(ラドン)→ 吸入による内部被曝が問題
☢️ 放射性同位体と標的臓器
| 放射性核種 | 標的臓器 | 特徴・用途 |
|---|---|---|
| ¹³¹I(ヨウ素131) | 甲状腺 | 原発事故後に問題;ヨウ化カリウム服用で防護;甲状腺がん・バセドウ病の治療にも使用 |
| ⁹⁰Sr(ストロンチウム) | 骨 | カルシウム類似体として蓄積 |
| ²³⁹Pu(プルトニウム) | 骨 | アクチノイド類似の蓄積 |
| ¹³⁷Cs(セシウム) | 筋肉(全身) | カリウムと化学的性質類似 → 全身に分布 |
| ²²²Rn(ラドン) | 肺 | 主に内部被曝(吸入による);地殻・土壌から発生する自然放射性核種 |
| ²²⁶Ra(ラジウム) | 骨 | 自然放射性核種 |
| ⁴⁰K(カリウム40) | 全身 | 食品から摂取される天然放射性核種で最も量が多い;β崩壊(α線ではない) |
| ⁶⁰Co(コバルト60) | - | γ線照射でジャガイモの発芽防止(食品照射);がん放射線治療 |
| ³²P(リン) | 骨・細胞全般 | - |
✅ 蓄積臓器の覚え方: ¹³¹I → 甲状腺(ヨウ素が甲状腺に集まる) ⁹⁰Sr・²³⁹Pu → 骨(カルシウム・骨親和性) ¹³⁷Cs → 筋肉全身(カリウム様) ²²²Rn → 肺(吸入による内部被曝)
📊 放射線感受性
ベルゴニー・トリボンドーの法則
細胞分裂が活発なほど・分化度が低いほど放射線感受性が高い
| 感受性 | 組織・細胞 |
|---|---|
| 高 | 造血組織(骨髄) ・ 生殖腺 ・ 腸管粘膜 ・ 皮膚 |
| 中 | 肝臓 ・ 腎臓 ・ 肺 |
| 低 | 神経組織 ・ 筋肉組織 ・ 骨 ・ 軟骨 |
✅ 造血組織(骨髄)が最も放射線感受性が高い(国試最頻出) 神経組織・筋肉組織が最も低い(分裂しない・高度に分化している)
晩発性障害: 低放射線量・長期被曝でも発症
- 白内障・白血病・固形がん等
- 放射線白血病は被曝後2〜5年で発症のピーク
⏱️ 実効(有効)半減期の計算
または
⚠️ 逆数の和の逆数(差ではない!) T_effは必ずT_biolとT_physのどちらよりも短くなる
例:⁹⁰Sr(物理学的半減期28.8年、生物学的半減期50年)の実効半減期
🌟 放射性核種の主な利用
| 核種 | 用途 |
|---|---|
| ⁶⁰Co(コバルト60) | γ線照射でジャガイモの発芽防止(日本で唯一承認された食品照射);がん治療(γナイフ等) |
| ¹³¹I(ヨウ素131) | 甲状腺がん・バセドウ病の治療(放射性ヨウ素療法) |
| ⁹⁹ᵐTc(テクネチウム) | SPECT(核医学診断);物理学的半減期6時間で短い |
| ¹⁸F(フッ素) | PET(陽電子放出断層撮影) |
🌈 非電離放射線による健康影響
| 放射線種 | 波長 | 主な健康影響 |
|---|---|---|
| UVC(200〜280 nm) | 短波長UV | 殺菌力最強;角膜炎(電気性眼炎);成層圏オゾン層が大部分を吸収 |
| UVB(280〜320 nm) | 中波長UV | 日焼け(紅斑)・皮膚がん・ビタミンD合成 |
| UVA(320〜400 nm) | 長波長UV | 皮膚老化・光老化(深部まで到達) |
| 可視光線(380〜700 nm) | - | 通常は無害 |
| 赤外線(700 nm〜1 mm) | 長波長 | ガラス工白内障(水晶体タンパク変性)・熱中症 |
✅ 赤外線 → ガラス工白内障:高温炉(溶鉱炉・ガラス工場)で長期間赤外線に曝露 → 水晶体タンパクの熱変性 → 白内障(職業性疾患)
📋 国試頻出まとめ
| # | テーマ | 重要ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 放射性同位体の蓄積臓器 | ¹³¹I→甲状腺 / ⁹⁰Sr→骨 / ¹³⁷Cs→筋肉全身 / ²²²Rn→肺(内部被曝) |
| 2 | ⁴⁰K | 食品から摂取する天然放射性核種で最多;β崩壊(α線ではない) |
| 3 | ⁶⁰Co | ジャガイモの発芽防止(γ線照射)+がん治療 |
| 4 | ¹³¹I の治療利用 | 甲状腺がん・バセドウ病の治療(放射性ヨウ素療法) |
| 5 | 放射線感受性(高) | 造血組織(骨髄)・生殖腺・腸管粘膜・皮膚 |
| 6 | 放射線感受性(低) | 神経組織・筋肉組織(分裂しない・高度分化) |
| 7 | 実効半減期の計算 | 1/T_eff = 1/T_biol + 1/T_phys(逆数の和の逆数) |
| 8 | ²²²Rn・²²⁶Ra の分類 | 自然放射性核種(人工放射性核種ではない) |
| 9 | 赤外線 → ガラス工白内障 | 水晶体タンパクの熱変性(職業性疾患) |
| 10 | UVC | 殺菌力最強;角膜炎(電気性眼炎) |
| 11 | α線の内部被曝 | 透過力は低いが電離能が最も高い → 内部被曝で最も危険 |
| 12 | ⁹⁰Sr・²³⁹Pu の蓄積臓器 | 骨(筋肉ではない) |
📝 国試過去問チェック
第110回薬剤師国家試験 問22(衛生)
非電離放射線のうち、眼の水晶体タンパク質の変性によってガラス工白内障を引き起こすのはどれか。1つ選べ。
1. UVC 2. UVB 3. UVA 4. 赤外線 5. マイクロ波
解答と解説を見る
正解:4(赤外線)
赤外線(熱線)は水晶体タンパクを熱変性させ白内障を引き起こす。溶鉱炉・ガラス工場など高温環境での職業性疾患。 1✗ UVC→殺菌力最強だが角膜炎(電気性眼炎)。 2✗ UVB→日焼け・皮膚がん。 3✗ UVA→皮膚老化。 5✗ マイクロ波→深部加熱(高周波熱傷)。
第109回薬剤師国家試験 問23
生体組織のうち、放射線に対する感受性が最も高いのはどれか。1つ選べ。
1. 神経組織 2. 造血組織 3. 皮膚組織 4. 筋肉組織 5. 脂肪組織
解答と解説を見る
正解:2
2○ **造血組織(骨髄)**は放射線感受性が最も高い組織。増殖の速い細胞ほど感受性が高い(ベルゴニー・トリボンドーの法則)。 感受性高:造血組織・生殖腺・腸管上皮・皮膚 / 感受性低:神経組織・筋肉組織。 1✗ 神経組織は最も低感受性。 4・5✗ 筋肉・脂肪も低感受性。
第108回薬剤師国家試験 問136
放射性核種に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. じゃがいもの発芽防止には、⁶⁰CoからのΓ線が利用される 2. ¹³¹Iは、甲状腺がんの治療に利用される 3. ⁹⁰Sr及び²³⁹Puの集積する器官は主に筋肉である 4. 実効(有効)半減期は、生物学的半減期と物理学的半減期の差で表される 5. ²²²Rn及び²²⁶Raは、人工放射性核種である
解答と解説を見る
正解:1, 2
1○ ⁶⁰Coのγ線照射 → ジャガイモの発芽防止(食品照射)。日本では承認された唯一の食品照射用途。 2○ ¹³¹I(放射性ヨウ素)は甲状腺に集積する性質を利用して甲状腺がん・バセドウ病の治療に使用。 3✗ ⁹⁰Sr・²³⁹Puはカルシウム・アクチノイドとして骨に集積(筋肉ではない)。 4✗ 実効半減期は「1/T_eff = 1/T_biol + 1/T_phys」→逆数の和の逆数(差ではない)。 5✗ ²²²Rn・²²⁶Raは自然放射性核種(人工ではない)。
第107回薬剤師国家試験 問138
天然及び人工放射性核種に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 食品から摂取される天然放射性核種で最も量が多いのは⁴⁰Kである
2. ⁴⁰KはΑ線を放出して崩壊する
3. 体内に取り込まれた¹³⁷Csは、筋肉(全身)に集積する
4. ⁹⁰Srの物理学的半減期28.8年・生物学的半減期50年のとき、実効半減期は31.2年となる
5. ²²⁶Raなどから放出されるα線は、β⁻線・γ線と比較して体内被曝による生体損傷が小さい
解答と解説を見る
正解:1, 3
1○ ⁴⁰K(カリウム40):食品中の天然放射性核種で摂取量最多。体重70kgのヒトで約4,000Bq。 3○ ¹³⁷Cs(セシウム137):カリウムと化学的性質類似 → 筋肉全身に分布・集積。 2✗ ⁴⁰Kはβ崩壊(β⁻線放出)とEC(電子捕獲)で崩壊。α線ではない。 4✗ 実効半減期 = (28.8×50)/(28.8+50) = 1440/78.8 ≈ 18.3年(31.2年ではない)。 5✗ α線はLETが高く電離密度が大きい → 体内被曝による生体損傷は最も大きい。
第108回薬剤師国家試験 問91
放射線と物質の相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 放射線は粒子放射線と電磁波放射線とに分類される
2. α線は物質を通過するときに物質中の原子と相互作用し、飛跡がジグザグ状になる
3. β⁻線の透過放射線量は、吸収体の厚さに対して直線的に減少する
4. 電離作用の強さは、α線 < β⁻線 < γ線の順である
5. γ線は物質と相互作用するとき、光電効果、コンプトン効果又は電子対生成によりエネルギーを失う
解答と解説を見る
正解:1, 5
1○ 放射線は粒子放射線(α線・β線・中性子線)と電磁波放射線(γ線・X線)に大別される。
5○ γ線(光子)が物質と相互作用する主要な機構は①光電効果②コンプトン効果③電子対生成の3種類。
2✗ α線は質量が大きく飛跡はほぼ直線。ジグザグ状になるのはβ線(質量が小さく原子と衝突して散乱される)。
3✗ β線の透過放射線量は厚さに対して指数関数的に減少する(直線的ではない)。
4✗ 電離作用の強さはα線 > β線 > γ線の順(大きい方が高電離)。記述が逆。
第111回薬剤師国家試験 問135
電離放射線及び放射性同位体に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. ³²P及び⁹⁰Srは、甲状腺に集積しやすい
2. 大気中に存在する²²²Rnによる生体影響は、ほとんど外部被曝によるものである
3. 神経組織、筋肉組織及び皮膚のうち、電離放射線による感受性が最も高いのは、神経組織である
4. 晩発性障害は、低放射線量や長期間被曝した場合や顕著な急性障害が見られなかった場合でも発症することがある
5. 食品中の放射性物質については、放射性セシウムの基準値が設定されている
解答と解説を見る
正解:4, 5
4○ 晩発性障害(白内障・白血病・固形がんなど)は低線量・長期被曝でも発症し、急性障害なしでも起こりうる。潜伏期間が数年〜数十年に及ぶのが特徴。
5○ 食品衛生法に基づき放射性セシウム(¹³⁴Cs + ¹³⁷Cs合計)の基準値が設定されている(一般食品:100 Bq/kg、乳児用食品・牛乳:50 Bq/kg)。
1✗ ³²Pはリン → **骨・核酸(細胞全般)**に集積。⁹⁰Srはカルシウム類似体 → 骨に集積。甲状腺に集積するのは¹³¹I(ヨウ素)。
2✗ ²²²Rn(ラドン)は吸入されて肺に集積し、崩壊する際にα線を放出 → 生体影響は内部被曝が主。外部被曝ではない。
3✗ 3組織のうち放射線感受性が最も高いのは皮膚(増殖性の基底細胞をもつ)。神経組織・筋肉組織は分化度が高く感受性が最も低い。
