🧪 溶解度積(Ksp)とは
難溶性塩 MₘXₙ が水中で溶解平衡にあるとき:
MₘXₙ(s) ⇌ mMⁿ⁺(aq) + nXᵐ⁻(aq)
Ksp = [Mⁿ⁺]ᵐ × [Xᵐ⁻]ⁿ
固体は活量 = 1 なのでKspに含まない。
✅ KspはKspは温度のみで変わる定数。濃度・圧力では変わらない。
📐 溶解度SとKspの関係
溶解度S = 1Lに溶ける塩のモル数(mol/L)
AB型(例:AgCl → Ag⁺ + Cl⁻)
[Ag⁺] = S、[Cl⁻] = S → Ksp = S²
AB₂型(例:PbCl₂ → Pb²⁺ + 2Cl⁻)
[Pb²⁺] = S、[Cl⁻] = 2S → Ksp = S × (2S)² = 4S³
AB₃型(例:Fe(OH)₃ → Fe³⁺ + 3OH⁻)
[Fe³⁺] = S、[OH⁻] = 3S → Ksp = S × (3S)³ = 27S⁴
⚠️ Fe(OH)₃のKsp = 27S⁴は国試最頻出!
係数3を3乗してS³、さらにSを掛けてS⁴。必ず自分で導けるようにする。
型別まとめ
| 型 | 例 | Ksp |
|---|---|---|
| AB | AgCl、BaSO₄ | S² |
| AB₂ | PbCl₂、CaF₂ | 4S³ |
| A₂B | Ag₂CrO₄ | 4S³(AB₂と同型) |
| AB₃ | Fe(OH)₃ | 27S⁴ |
| A₃B | Ag₃PO₄ | 27S⁴(AB₃と同型) |
🔄 共通イオン効果
共通イオンが存在すると平衡が固体側に移動し、溶解度が低下する。
✅ AgCl の例(0.1 mol/L NaCl 溶液中):
[Ag⁺] = S、[Cl⁻] ≒ 0.1(S << 0.1)
Ksp = S × 0.1 → S = Ksp / 0.1
純水中(S = √Ksp)より溶解度が大幅に低下する
⚠️ BaSO₄をNa₂SO₄水溶液に溶かす場合も同じ考え方
SO₄²⁻の共通イオン効果でBa²⁺の濃度(溶解度)が大きく下がる
⚖️ 沈殿生成の判定
イオン積 Q と Ksp を比較する:
| 比較 | 状態 |
|---|---|
| Q < Ksp | 未飽和(沈殿なし) |
| Q = Ksp | 飽和(溶解平衡) |
| Q > Ksp | 過飽和 → 沈殿生成 |
✅ 混合後のイオン積を計算し、Kspと比べるだけで沈殿の有無を判定できる
💊 医薬品との関連
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 注射剤の配合変化 | イオン積がKspを超えると沈殿 → 混合禁忌の原因 |
| 尿路結石 | CaC₂O₄(シュウ酸Ca)・CaHPO₄がKspを超えて析出 |
| 制酸薬 | 水酸化マグネシウム・水酸化アルミニウムは難溶性塩として胃内で作用 |
📋 国試頻出まとめ
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | AB型 | Ksp = S² |
| 2 | AB₂・A₂B型 | Ksp = 4S³ |
| 3 | AB₃型(Fe(OH)₃) | Ksp = 27S⁴(最頻出) |
| 4 | 共通イオン効果 | 同名イオン添加 → 溶解度↓ |
| 5 | 沈殿判定 | Q > Ksp で沈殿生成 |
| 6 | Kspは温度のみ依存 | 濃度・圧力では変わらない |
| 7 | BaSO₄の共通イオン計算 | [Ba²⁺] = Ksp / [SO₄²⁻](SO₄²⁻を共通イオンと見なす) |
| 8 | 沈殿開始pH | KspとKwからOH⁻濃度 → pOH → pH を計算 |
📝 国試過去問チェック
第107回薬剤師国家試験 問4(必須)
0.10 mol/L 硫酸ナトリウム水溶液中における硫酸バリウムの溶解度に最も近いのはどれか。1つ選べ。ただし、温度は25℃とし、同温度における硫酸バリウムの溶解度積を 1.0×10⁻¹⁰ (mol/L)² とし、硫酸バリウムの溶解による溶液の体積変化は無視できるものとする。
1. 1.0×10⁻¹⁹ mol/L
2. 1.0×10⁻¹¹ mol/L
3. 1.0×10⁻⁹ mol/L
4. 1.0×10⁻⁵ mol/L
5. 1.0×10⁻⁴ mol/L
解答と解説を見る
正解:3
BaSO₄ ⇌ Ba²⁺ + SO₄²⁻
0.10 mol/L Na₂SO₄水溶液中では [SO₄²⁻] ≒ 0.10 mol/L(共通イオン)。
溶解度を S mol/L とすると [Ba²⁺] = S、[SO₄²⁻] ≒ 0.10(S << 0.10)
Ksp = [Ba²⁺][SO₄²⁻] = S × 0.10 = 1.0×10⁻¹⁰
S = 1.0×10⁻¹⁰ / 0.10 = 1.0×10⁻⁹ mol/L
3○ 1.0×10⁻⁹ mol/L。正しい。
(参考)純水中の溶解度:S = √Ksp = √(1.0×10⁻¹⁰) = 1.0×10⁻⁵ mol/L → 共通イオン効果で約10⁴倍低下。
第109回薬剤師国家試験 問94(一般)
ある2価の金属イオン M²⁺ の 0.01 mol/L 水溶液のpHを上げていくと難溶性塩 M(OH)₂ が沈殿する。この沈殿が生成し始めるpHに最も近い値はどれか。1つ選べ。
ただし、M(OH)₂ の溶解度積 Ksp = 2.0×10⁻²⁰ (mol/L)³、水のイオン積 Kw = [H⁺][OH⁻] = 1.0×10⁻¹⁴ (mol/L)²、log2 = 0.30 とし、副反応は起こらないものとする。
1. 3
2. 5
3. 7
4. 9
5. 11
解答と解説を見る
正解:2
M(OH)₂ ⇌ M²⁺ + 2OH⁻ Ksp = [M²⁺][OH⁻]² = 2.0×10⁻²⁰
[M²⁺] = 0.01 = 10⁻² mol/L を代入:
10⁻² × [OH⁻]² = 2.0×10⁻²⁰
[OH⁻]² = 2.0×10⁻¹⁸
[OH⁻] = √(2.0×10⁻¹⁸) = √2 × 10⁻⁹ mol/L
pOH = −log(√2 × 10⁻⁹) = 9 − log√2 = 9 − (1/2)log2 = 9 − 0.15 = 8.85
pH = 14 − 8.85 = 5.15 ≈ 5
2○ pH ≈ 5。正しい。
第110回薬剤師国家試験 問3(必須)
難溶性塩である水酸化鉄(Ⅲ)(Fe(OH)₃)の純水中での溶解度をS mol/L とすると、その溶解度積(Ksp)を正しく表しているのはどれか。1つ選べ。
1. 3S³ (mol/L)³
2. 4S³ (mol/L)³
3. 9S³ (mol/L)³
4. 9S⁴ (mol/L)⁴
5. 27S⁴ (mol/L)⁴
解答と解説を見る
正解:5
Fe(OH)₃ ⇌ Fe³⁺ + 3OH⁻
溶解度 S mol/L とすると:[Fe³⁺] = S、[OH⁻] = 3S
Ksp = [Fe³⁺][OH⁻]³ = S × (3S)³ = S × 27S³ = 27S⁴ (mol/L)⁴
5○ 27S⁴ (mol/L)⁴。正しい。
1✗ 係数の3乗を忘れている(3S³のまま)。
2✗ AB₂型(4S³)と混同している。
3✗ 係数の処理が誤り。
4✗ 指数は正しいが係数が誤り(9S⁴ではなく27S⁴)。
