排尿に関わる受容体の基礎
| 受容体 | 場所 | 刺激時の反応 |
|---|---|---|
| M₃受容体 | 膀胱平滑筋(排尿筋) | 収縮(排尿促進) |
| β₃受容体 | 膀胱平滑筋 | 弛緩(蓄尿促進) |
| α₁受容体 | 前立腺・内尿道括約筋 | 収縮(排尿困難) |
| PDE5 | 前立腺・膀胱・陰茎平滑筋 | 分解するとcGMP↓→収縮 |
前立腺肥大症の治療薬
α₁受容体遮断薬(排尿障害の即効薬)
作用機序:
前立腺・内尿道括約筋のα₁受容体遮断
↓
平滑筋弛緩 → 尿道抵抗↓
↓
排尿困難・頻尿・夜間頻尿が改善
| 薬物 | 選択性 | 特徴 |
|---|---|---|
| タムスロシン(ハルナール®) | α₁A選択的 | 前立腺選択性高い。起立性低血圧↓ |
| ナフトピジル(フリバス®) | α₁D・α₁A | 排尿筋収縮抑制も期待 |
| シロドシン(ユリーフ®) | α₁A高選択 | 射精障害の副作用あり |
| テラゾシン・プラゾシン | 非選択的α₁ | 降圧薬としても使用。起立性低血圧に注意 |
5α-還元酵素阻害薬(前立腺肥大を縮小)
作用機序:
5α-還元酵素阻害
↓
テストステロン → ジヒドロテストステロン(DHT)への変換↓
↓
DHT↓ → 前立腺組織の萎縮・肥大抑制
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| フィナステリド(プロスカー®) | 5α-還元酵素2型阻害。前立腺肥大症・男性型脱毛症 |
| デュタステリド(アボルブ®) | 5α-還元酵素1型+2型両方阻害。より強力 |
注意:5α-還元酵素阻害薬はPSA(前立腺特異抗原)値を約50%低下させる。前立腺がんのスクリーニング時に注意。
PDE5阻害薬(前立腺肥大にも有効)
タダラフィル(ザルティア®/シアリス®)
作用機序:
ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害
↓
cGMP分解↓ → cGMP蓄積
↓
前立腺・尿道・膀胱平滑筋の弛緩 → 排尿障害改善
陰茎海綿体の弛緩 → 勃起機能改善
タダラフィルの3つの適応:
| 適応 | 商品名 | 用量 | 機序の要点 |
|---|---|---|---|
| 勃起不全(ED) | シアリス® | 10〜20mg頓服 | 性的刺激→NO放出→cGMP↑→PDE5が分解阻害 |
| 前立腺肥大に伴う排尿障害 | ザルティア® | 2.5〜5mg毎日 | 前立腺・膀胱平滑筋のcGMP↑→弛緩 |
| 肺動脈性肺高血圧症(PAH) | アドシルカ® | 40mg毎日 | 肺血管平滑筋弛緩→肺動脈圧↓ |
PDE5阻害薬と硝酸薬は併用禁忌!:どちらもcGMP↑作用 → 過度の血圧低下のリスク。
過活動膀胱(OAB)の治療薬
過活動膀胱は「頻尿・切迫性尿失禁・夜間頻尿」が特徴。
抗コリン薬(M₃受容体遮断薬)
M₃受容体遮断 → 排尿筋収縮↓ → 膀胱容量↑ → 頻尿・尿失禁↓
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| オキシブチニン(ポラキス®) | 古い薬。M₃以外も遮断 → 口渇・便秘・認知機能障害が強い |
| ソリフェナシン(ベシケア®) | M₃選択的。副作用少ない |
| イミダフェナシン(ウリトス®) | M₁・M₃選択的 |
注意:抗コリン薬は閉塞隅角緑内障・尿閉に禁忌(眼圧上昇・尿閉悪化リスク)。
β₃受容体作動薬
β₃受容体刺激 → 膀胱平滑筋弛緩 → 膀胱容量↑ → 頻尿・尿失禁↓
| 薬物 | 特徴 |
|---|---|
| ミラベグロン(ベタニス®) | β₃選択的。抗コリン薬と異なり口渇・認知機能障害なし |
| ビベグロン(ベオーバ®) | β₃選択的。CYP3A4を阻害しない(薬物相互作用少ない) |
β₃作動薬 vs 抗コリン薬:高齢者や認知症患者では抗コリン薬の認知機能への影響が問題となるため、β₃作動薬が好まれる傾向。
第108回 国試過去問チェック
第108回薬剤師国家試験 問34(必須問題・薬理)
前立腺肥大に伴う排尿障害を改善するタダラフィルの作用機序はどれか。1つ選べ。
- ホスホジエステラーゼV阻害 2. アドレナリンα₁受容体遮断 3. アドレナリンβ₃受容体刺激 4. アセチルコリンM₃受容体刺激 5. コリンエステラーゼ阻害
正解:1
解説: タダラフィルはPDE5(ホスホジエステラーゼ5型)を阻害してcGMPを蓄積させ、前立腺・尿道の平滑筋を弛緩させる。α₁遮断薬はタムスロシン等。β₃作動薬はミラベグロン(過活動膀胱)。
