📐 ファントホッフの式
温度 T における平衡定数 K は、以下の式で表されます:
ln K = −ΔH°/R × 1/T + ΔS°/R
グラフの読み方(ln K vs 1/T プロット)
| グラフ要素 | 対応する物理量 |
|---|---|
| 縦軸 | ln K |
| 横軸 | 1/T(単位:K⁻¹) |
| 傾き | −ΔH° / R |
| 切片(縦軸) | ΔS° / R |
⚠️ 傾きの符号で吸熱・発熱を判定する!
傾き < 0(右下がり)→ ΔH° > 0 → 吸熱反応
傾き > 0(右上がり)→ ΔH° < 0 → 発熱反応
| 反応の種類 | ΔH° | 傾き | 温度↑の効果 |
|---|---|---|---|
| 吸熱反応 | > 0 | 負(右下がり) | K↑(生成物有利に) |
| 発熱反応 | < 0 | 正(右上がり) | K↓(反応物有利に) |
✅ 「温度↑でK↑」なら吸熱反応。発熱反応では温度が上がるとKが下がる(ルシャトリエの原理と一致)
🔗 ΔG° との関係
ΔG° = −RT ln K = ΔH° − TΔS°
この式を変形するとファントホッフの式が導けます。
✅ ΔG° < 0 のとき反応は自発的に進行し、ln K > 0 つまり K > 1(生成物が多い)
⚗️ ファントホッフ vs アレニウス
| 項目 | ファントホッフ | アレニウス |
|---|---|---|
| 縦軸 | ln K(平衡定数) | ln k(速度定数) |
| 横軸 | 1/T | 1/T |
| 傾き | −ΔH°/R | −Ea/R |
| 切片 | ΔS°/R | ln A |
| 目的 | 熱力学量(ΔH°、ΔS°)の決定 | 活性化エネルギーEaの決定 |
⚠️ どちらも「ln vs 1/T の直線グラフ」で、傾きは常に負(右下がり)
✅ アレニウスプロットの傾きの絶対値が大きい反応ほど、温度変化による速度定数への影響が大きい
🎲 ボルツマン分布
粒子がエネルギー E のレベルにある確率 P(E):
P(E) ∝ exp(−E / kBT)
- kB:ボルツマン定数(= R/NA = 1.38×10⁻²³ J/K)
異なるエネルギー準位 E₁、E₂(E₂ > E₁)にある分子数の比 R = N₂/N₁:
R = exp(−ΔE / kBT) (ΔE = E₂ − E₁)
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| グラフ形状 | 指数関数的減少(ΔE = 0 で R = 1、ΔE↑で R → 0) |
| 温度↑ | 分布が広がる(高エネルギーの粒子の割合↑) |
| 活性化エネルギーとの関係 | Ea を超える粒子の割合 ∝ exp(−Ea/RT) |
✅ ΔE = 0 のとき N₂/N₁ = 1(上下のエネルギー準位に同数の分子)
✅ 速度定数 k ∝ exp(−Ea/RT) → これがアレニウスの式の物理的根拠
📋 国試頻出まとめ
| # | ポイント | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | ファントホッフの傾き | −ΔH°/R |
| 2 | 傾き < 0(右下がり) | 吸熱反応(ΔH° > 0) |
| 3 | 傾き > 0(右上がり) | 発熱反応(ΔH° < 0) |
| 4 | 切片 | ΔS°/R(エントロピー) |
| 5 | 温度↑でK↑ | 吸熱反応の特徴 |
| 6 | アレニウスの傾き | −Ea/R(活性化エネルギー) |
| 7 | アレニウスプロット | 右下がりの直線(傾きは常に負) |
| 8 | ボルツマン分布 | 指数関数的減少・ΔE=0でR=1 |
| 9 | 傾きの絶対値↑ | 温度変化が速度定数に与える影響↑ |
📝 国試過去問チェック
第108回薬剤師国家試験 問94(一般)
反応速度の温度依存性に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1. アレニウス式は、温度と平衡定数の関係を表している。
2. 0次反応にはアレニウス式は適用できない。
3. アレニウス式に従う反応の場合、アレニウスプロットでは右上がりの直線が得られる。
4. 2つの反応のアレニウスプロットの傾きが等しい場合、その2つの反応の活性化エネルギーは等しい。
5. アレニウスプロットの傾きの絶対値が大きい反応ほど、反応速度に与える温度の影響が大きい。
解答と解説を見る
正解:4, 5
4○ アレニウスプロットの傾きは −Ea/R。2つの反応の傾きが等しければ Ea も等しい。正しい。
5○ 傾きの絶対値が大きい = Ea/R が大きい = Ea が大きい → 温度変化に対して速度定数が大きく変化する。正しい。
1✗ アレニウス式は温度と速度定数 k の関係を表す(ln k = −Ea/R × 1/T + ln A)。平衡定数 K ではない。
2✗ アレニウス式は0次反応にも適用できる。反応次数に関係なく使用可能。
3✗ アレニウスプロット(ln k vs 1/T)では傾きは −Ea/R < 0 であり、右下がりの直線が得られる。「右上がり」が誤り。
第110回薬剤師国家試験 問92(一般)
ファントホッフプロットは直線を示す。このことに関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 温度の逆数に対して平衡定数の対数をプロットしたものである。
2. 切片から標準反応エンタルピーが求まる。
3. 傾きから標準反応エントロピーが求まる。
4. 吸熱反応のとき、傾きは負である。
5. 傾きが正のとき、温度が上がるにつれて平衡定数は大きくなる。
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正解:1, 4
1○ ファントホッフプロットは「横軸:1/T、縦軸:ln K」のグラフ。正しい。
4○ 傾き = −ΔH°/R。吸熱反応は ΔH° > 0 なので傾き = −ΔH°/R < 0(負)。正しい。
2✗ 切片は ΔS°/R(エントロピー)。標準反応エンタルピー ΔH° は傾き(= −ΔH°/R)から求まる。
3✗ 傾きは −ΔH°/R(エンタルピー)。標準反応エントロピー ΔS° は切片(= ΔS°/R)から求まる。
5✗ 傾きが正 → −ΔH°/R > 0 → ΔH° < 0 → 発熱反応。発熱反応では温度↑でルシャトリエの原理により平衡が左に移動 → K は小さくなる。
第110回薬剤師国家試験 問93(一般)
ボルツマン分布は、異なるエネルギー準位 E₁、E₂(E₂ > E₁)にある分子の数をそれぞれ N₁、N₂ としたとき、熱平衡状態における両者の比(R = N₂/N₁)とエネルギー差(ΔE = E₂ − E₁)との間にある一定の関係を与える。この関係を表すグラフの概形として正しいのはどれか。1つ選べ。
(選択肢はR vs ΔEのグラフ5種)
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正解:3
ボルツマン分布の式:R = N₂/N₁ = exp(−ΔE / kBT)
- ΔE = 0 のとき:R = exp(0) = 1(上下準位に同数の分子)
- ΔE → ∞ のとき:R → 0(高エネルギー準位にはほぼ分子なし)
- グラフの形:R=1 から始まり、ΔE の増加とともに指数関数的に減少し、0に漸近する
選択肢3がこの「1から始まり0に漸近する指数関数的減少曲線」を示しており正しい。
第107回薬剤師国家試験 問2(必須)
平衡状態にある次の化学反応系に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
3/2 H₂(g) + 1/2 N₂(g) ⇌ NH₃(g) ΔHf° = −46.1 kJ/mol
(ΔHf°は標準生成エンタルピー、(g)は気体状態を表す)
1. 系の温度を下げると、平衡は右側へ移動する。
2. 系の圧力を下げると、平衡は右側へ移動する。
3. 系に水素ガスを加えると、平衡は左側へ移動する。
4. この反応は吸熱反応である。
5. この反応の平衡定数は系の温度に依存しない。
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正解:1
1○ ΔHf° = −46.1 kJ/mol < 0 なので発熱反応。温度を下げると、平衡はルシャトリエの原理により熱を発生する方向(右側=生成物方向)へ移動する。正しい。
2✗ 右辺は1 mol(NH₃)、左辺は2 mol(H₂ 3/2 + N₂ 1/2)。圧力を下げるとmol数が多い左側(反応物)へ平衡が移動する。「右側へ移動」は誤り。
3✗ H₂を加えると、H₂を消費する方向=**右側(生成物方向)**へ平衡が移動する。「左側へ移動」は誤り。
4✗ ΔHf° = −46.1 kJ/mol < 0 なので発熱反応。「吸熱反応」は誤り。
5✗ ファントホッフの式より、平衡定数 K は温度に依存する(発熱反応では温度↑でK↓)。「温度に依存しない」は誤り。
第108回薬剤師国家試験 問2(必須)
反応1と反応2が共役して起こる反応3の平衡定数 K の値を、反応1と反応2それぞれの平衡定数 K₁、K₂ で表したのはどれか。1つ選べ。
A + B ⇌ C (平衡定数 K₁)
C + D ⇌ E + F (平衡定数 K₂)
A + B + D ⇌ E + F (平衡定数 K)
1. K = K₁ + K₂
2. K = K₂ − K₁
3. K = K₁ × K₂
4. K = K₁ / K₂
5. K = K₂ / K₁
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正解:3
3○ 反応3は反応1と反応2を足し合わせた反応。反応を足し合わせるとき、平衡定数は**積(掛け算)**になる。K = K₁ × K₂。正しい。
(参考)ΔG° = −RT ln K の関係から:反応を足すと ΔG°は加算 → ln K も加算 → K は積になる。
1✗ 反応を足し合わせても平衡定数は足し算にならない。
2✗ 平衡定数は引き算にならない。
4✗ 平衡定数は割り算にならない(反応を「引き算」するときは割り算になる)。
5✗ 同上。
